朝目覚めたら横に悪魔がいたんだが・・・告白されても困る!

渋川宙

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第9話 運命だもん

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 キスする場所は唇でなくてもよかった。その事実に気づいたのは、ルシファーが選んだ品のよい服を身に纏い、食堂で朝食を食べている時だった。
「奏汰にキスしろと言ったらいきなり唇が重なったんだ。やはり運命だな」
 ルシファーが上機嫌でそう言うのを聞き、奏汰はごふっとオレンジジュースを吹いてしまう。危うくゲットした服を汚すところだった。しかもこの服、奏汰には絶対に買う事が出来ない高級ブランド品である。パジャマは透け透けだったが、普段着のセンスは抜群によかった。
「おめでとうございます、ルシファー様。この分ですと、ご婚礼の儀も近いですな」
「ああ。今まで伴侶なんていらないと思っていたけど、やはり運命の相手というのはいいな」
「はい」
 しかし、そんな慌てる奏汰を無視して、ルシファーとベヘモスはそんな会話を展開していた。誰か助けてくれ。
「だって、キスしろって」
 奏汰がもごもごと言い訳すると、ルシファーはにやり。
「なるほど、キスと言われたら唇という知識しかなかったのか。つまり、俺様はお前の初めての男ということだな」
「なっ」
「実は誰とも付き合ったことがないんだろ?」
 にやっと笑われ、奏汰は顔が真っ赤になる。それは怒りと恥ずかしさが同居していた。つまり、ルシファーの指摘は全面的に間違いではない。
「付き合ったことはある。でも、いざって時になると、お友達でいたいって言われて」
 三ヶ月前の痛手を思い出し、奏汰はううっと唸ってしまう。
 大学生になり、彼女が出来たと思ったのに、いい人で終わってしまった。手を繋いでデートまでしたのに、その先はNGを出されてしまった過去が蘇る。
「ほほう。つまり、唇を重ねるキスは俺様がお初。ついでに、処女も頂けるわけだ」
「しょ、処女って言うな!」
「じゃあ、童貞」
「言い直されてると余計に腹立つ!!」
 女の子扱いされるのも腹立つが、男として未だ未使用であることを指摘されるのも恥ずかしい。
 奏汰は本格的に頭を抱えてしまう。
「可愛いなあ」
「はい。奏汰様は素敵な御方です」
 が、聞こえてくるのはデレデレするルシファーとベヘモスのお追従だけ。
 ああ、悲しい。そして苦しい。
「諦めろよ。お前は人間とは釣り合わない。ついでに女とは無理なんだ」
「なにその嫌な断言」
「そもそも顔の作りが総てを物語っていると思うがな。気づかないのか」
「いやいや。俺みたいなタイプの顔、いっぱいいるからね。お前の偏見と狭い視野のせいだ」
 ルシファーと結ばれる運命だったなんて嫌だ。奏汰は悶え、そして疲れてしまう。美味しい朝ご飯も、何だか味がしなくなった。
「大学に行ってくる」
「まあ、待てよ。俺様も行く」
「は?」
 何を言い出すんだ。奏汰はぎょっとした。まさか大学までついて来るつもりなのか。
「警戒するな。だが、俺様はお前を逃がさない。悪魔は一度決めたらそれをねじ曲げることはないからな」
「曲げてくれ、280度くらいにねじ曲げてくれ」
 奏汰はぐったりとし、ベヘモスにホットコーヒーを注文するのだった。
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