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第14話 ハッブル王国の周辺は
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さて、夜中にとんでもない話題が交されていたなんて知る由もない俺は、キャンプ生活を満喫すべく、朝からきびきびと働いていた。
寝袋を木に掛けて干し、テントの中に溜まったゴミを掃き出す。次に汚れた服を持って近くの川へ。そしてじゃぶじゃぶと洗い始める。
追放されて村にやって来た身の俺は、もとより服を持っていなかった。だから今洗っているのはピーターのお下がりだ。他のやつはアンドレが調達したもの。数も少ないから、丁寧に使わなければならない。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
そうしているとマリナも洗濯物を持ってやって来た。基本、山でも修道女姿の彼女の洗濯物は、やっぱり修道女服だ。何着か替えを持っているらしい。
「なあ。その格好って動きにくくないのか?」
洗濯の手を止めることなく、俺はふと疑問に思って訊ねた。すると、マリナはにやっと笑うと、スカートをたくし上げてみせる。
「うわっ。って、スリット?」
「ええ」
大胆な行動にもマリナの生足にも驚いた俺だが、スカートはいくつもスリットが入っていて、足の動きを邪魔しない構造になっていた。さらに、下には目立たないように短めのズボンとがっちりした革靴を履いている。
「普通にしているとただのスカートに見えるでしょ。これがポイントなのよ」
「ははあ」
なるほど、動きやすさはすでに追求済みだったか。やはり放浪生活の年期が違う。
って、放浪していても修道女ってのはどうなのだろう。巡礼という体裁を取るためだろうか。
「あっ、ここで魚を釣ろうと思ったのに」
と、そこにピーターが釣り竿を持って現われた。しかし、洗濯なんてしていたら魚は逃げた後じゃんと悔しそうだ。
「ああ、朝飯か」
「いや。それはシュリたちが昨日の鍋の残りを活用して作ってくれてるよ。多めに釣って干物にでもしようかなって思っただけ」
「なるほど。じゃあ、洗濯が終わったら手伝うよ」
「当然」
ピーターもしっかりキャンプ生活に慣れているなと、俺は苦笑しつつも頷いていた。
保存食を用意するのも、山の中を彷徨う生活には必要なことだ。ここにはあと三日は居住する予定なので、その間に干物を作るのは納得だった。
「次はどこに移動するのかな」
「ううん。追っ手が来る様子もないから、適当に移動って感じかしら。もともとここはミッドランド連邦国との境で標高の高い山へと続いているから、そう簡単に人も入ってこないし」
「へえ。そうか。ここってミッドランド連邦国の近くなのか」
ぽいっと辺境の地に捨てられた俺としては、そんな場所まで移動しているんだなと妙な気分になる。
南側で国を接しているミッドランド連邦国にしてもドロイヤ王国にしても、どちらも険しい山が壁のように立ち塞がっている。ちなみにハッブル王国の北側は海だ。つまり俺が捨てられた村も南側にあったということになる。
このハッブル王国は他に東側をオーランド公国、北東側をリビト帝国と接しているという、多くの国と地続きの場所にある。
だからこそ政治は常に慎重に外交を行うことと一緒になっていて、繊細な作業なのだ。今のところどこの国とも交戦状態にはないが、ドロイヤ王国とは昔から仲が悪く、リビト帝国も日々こちらに侵攻できないかと狙っている。逆にオーロランド公国は娘が現国王に嫁いだため、安全安心の相手国だ。俺にとっては半分オーロランド公国の血が流れているわけで、親しみもある。
「母上はどう思われているのかな」
「おや、急に里心が付いちゃった?」
俺の呟きをマリナがからかってくる。それに俺はむすっとすると
「今の方が断然楽しいから、それはない」
と、きっぱり断言していた。
寝袋を木に掛けて干し、テントの中に溜まったゴミを掃き出す。次に汚れた服を持って近くの川へ。そしてじゃぶじゃぶと洗い始める。
追放されて村にやって来た身の俺は、もとより服を持っていなかった。だから今洗っているのはピーターのお下がりだ。他のやつはアンドレが調達したもの。数も少ないから、丁寧に使わなければならない。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
そうしているとマリナも洗濯物を持ってやって来た。基本、山でも修道女姿の彼女の洗濯物は、やっぱり修道女服だ。何着か替えを持っているらしい。
「なあ。その格好って動きにくくないのか?」
洗濯の手を止めることなく、俺はふと疑問に思って訊ねた。すると、マリナはにやっと笑うと、スカートをたくし上げてみせる。
「うわっ。って、スリット?」
「ええ」
大胆な行動にもマリナの生足にも驚いた俺だが、スカートはいくつもスリットが入っていて、足の動きを邪魔しない構造になっていた。さらに、下には目立たないように短めのズボンとがっちりした革靴を履いている。
「普通にしているとただのスカートに見えるでしょ。これがポイントなのよ」
「ははあ」
なるほど、動きやすさはすでに追求済みだったか。やはり放浪生活の年期が違う。
って、放浪していても修道女ってのはどうなのだろう。巡礼という体裁を取るためだろうか。
「あっ、ここで魚を釣ろうと思ったのに」
と、そこにピーターが釣り竿を持って現われた。しかし、洗濯なんてしていたら魚は逃げた後じゃんと悔しそうだ。
「ああ、朝飯か」
「いや。それはシュリたちが昨日の鍋の残りを活用して作ってくれてるよ。多めに釣って干物にでもしようかなって思っただけ」
「なるほど。じゃあ、洗濯が終わったら手伝うよ」
「当然」
ピーターもしっかりキャンプ生活に慣れているなと、俺は苦笑しつつも頷いていた。
保存食を用意するのも、山の中を彷徨う生活には必要なことだ。ここにはあと三日は居住する予定なので、その間に干物を作るのは納得だった。
「次はどこに移動するのかな」
「ううん。追っ手が来る様子もないから、適当に移動って感じかしら。もともとここはミッドランド連邦国との境で標高の高い山へと続いているから、そう簡単に人も入ってこないし」
「へえ。そうか。ここってミッドランド連邦国の近くなのか」
ぽいっと辺境の地に捨てられた俺としては、そんな場所まで移動しているんだなと妙な気分になる。
南側で国を接しているミッドランド連邦国にしてもドロイヤ王国にしても、どちらも険しい山が壁のように立ち塞がっている。ちなみにハッブル王国の北側は海だ。つまり俺が捨てられた村も南側にあったということになる。
このハッブル王国は他に東側をオーランド公国、北東側をリビト帝国と接しているという、多くの国と地続きの場所にある。
だからこそ政治は常に慎重に外交を行うことと一緒になっていて、繊細な作業なのだ。今のところどこの国とも交戦状態にはないが、ドロイヤ王国とは昔から仲が悪く、リビト帝国も日々こちらに侵攻できないかと狙っている。逆にオーロランド公国は娘が現国王に嫁いだため、安全安心の相手国だ。俺にとっては半分オーロランド公国の血が流れているわけで、親しみもある。
「母上はどう思われているのかな」
「おや、急に里心が付いちゃった?」
俺の呟きをマリナがからかってくる。それに俺はむすっとすると
「今の方が断然楽しいから、それはない」
と、きっぱり断言していた。
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