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第15話 母と婚約者
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俺がキャンプ生活に馴染みまくっている頃。
母のローラ=ハッブルは父で現国王のピエール=ハッブルの看病をしつつ溜め息を吐いていた。
ピエールが落馬事故を起こし、こうして寝たきりになってしまっただけでも大変だったというのに、今度は息子たちの間で政変が起こってしまった。そんな状況では、心労が溜まって当然だった。
「この国はどうなってしまうのでしょう」
「国后様」
と、そこに遠慮がちにやって来たのは、レオの許嫁としてよく城に出入りしているクリスティーヌ=ルノワールだ。レオとは結婚目前、何事もなければ来年には結婚式を開いていたはずのクリスティーヌは、黒を基調としたドレスを纏っていた。
「まあ、あなた。よく来てくれましたね」
ローラは沈痛な面持ちをするクリスティーヌを招き入れるだけでなく、そっと抱き締める。クリスティーヌがなぜ黒色を着ているのか、正確に把握したためだ。
「国王様のことも気になりますけど、私っ」
優しく抱き締められて、クリスティーヌは思わず泣きそうになる。
一か月と少し前、急に目の前から未来の婿が消えたのだ。それも廃嫡、追放という不名誉な形でである。でも、それを嘆き悲しんでいるのは自分だけでないと涙を堪えた。
「泣いていいのですよ。それに、レオのこと、忘れてもいいのよ。死んだものと思って頂戴な」
ローラはそんなクリスティーヌの頭をよしよしと撫でてあげる。
「嫌です。私は、レオと結婚すると、ずっと心に決めて参りました。例え今、王太子ではないとしても、彼のことを忘れるなんて出来ません。でも、それを口にすることが出来なくて、せめてもの反抗でこうやって、未亡人としての服を着るしかないんです」
「でも・・・・・・ああ、そうね。急ぐ必要はないわ」
ローラはまだ気持ちを切り替えられるわけがないと、すぐに引き下がるとソファに招いた。二人揃って腰掛けるが、部屋には病人がいる。自然と表情は沈痛なものになってしまう。
「レオはどうして追放されたのですか。何も悪い事なんてしていないのに」
「ええ。していないでしょうね。あの子は特別な加護を受けた子。何もしていないわ」
「では」
「でも、私たちが口出し出来ることではないわ。いえ、しては駄目。どんな危険があるか解りませんからね」
「まあ」
思っている以上に大変なことになっているんだと、クリスティーヌは大きく目を見開く。
「この国は今、大変な状況になってしまったのですよ。レオが生きていれば、少しは希望があるかもしれません。でも、シャルルはしつこく追いかけ回すつもりのようです。追放という体裁でしたが、殺したいのは明らか。この間も討伐隊が派遣されたといいます」
「そんな」
クリスティーヌはシャルルのことも知っている。そして、二人が仲良しだったことも知っているのだ。それなのに、実は殺したいほど憎んでいたなんて、ショックでしかない。
「先ほどは忘れてなんて言ってしまったけど、撤回するわ。あの子が無事であることを祈ってあげて」
驚きを隠せないクリスティーヌに、ローラは優しく背中を擦ってあげる。
そうだ、クリスティーヌは唯一自分の、レオの味方になってくれる。そう思うと、つい、レオを忘れてという建前を撤回してしまった。
「それはもちろんです。まだ生きている。それだけで、私はどれだけ嬉しいか」
クリスティーヌはもとより忘れるつもりなんてなく、大きく頷いた。
「ありがとう。でも、王宮にはあまり近づかないようにね。シャルルが何を企んでいるか解りません」
「は、はい」
それでも、この約束がどれだけ危険かを知るローラは、王宮からこっそりと出なさい。そしてしばらく近づかないようにと強く言い含めるのだった。
母のローラ=ハッブルは父で現国王のピエール=ハッブルの看病をしつつ溜め息を吐いていた。
ピエールが落馬事故を起こし、こうして寝たきりになってしまっただけでも大変だったというのに、今度は息子たちの間で政変が起こってしまった。そんな状況では、心労が溜まって当然だった。
「この国はどうなってしまうのでしょう」
「国后様」
と、そこに遠慮がちにやって来たのは、レオの許嫁としてよく城に出入りしているクリスティーヌ=ルノワールだ。レオとは結婚目前、何事もなければ来年には結婚式を開いていたはずのクリスティーヌは、黒を基調としたドレスを纏っていた。
「まあ、あなた。よく来てくれましたね」
ローラは沈痛な面持ちをするクリスティーヌを招き入れるだけでなく、そっと抱き締める。クリスティーヌがなぜ黒色を着ているのか、正確に把握したためだ。
「国王様のことも気になりますけど、私っ」
優しく抱き締められて、クリスティーヌは思わず泣きそうになる。
一か月と少し前、急に目の前から未来の婿が消えたのだ。それも廃嫡、追放という不名誉な形でである。でも、それを嘆き悲しんでいるのは自分だけでないと涙を堪えた。
「泣いていいのですよ。それに、レオのこと、忘れてもいいのよ。死んだものと思って頂戴な」
ローラはそんなクリスティーヌの頭をよしよしと撫でてあげる。
「嫌です。私は、レオと結婚すると、ずっと心に決めて参りました。例え今、王太子ではないとしても、彼のことを忘れるなんて出来ません。でも、それを口にすることが出来なくて、せめてもの反抗でこうやって、未亡人としての服を着るしかないんです」
「でも・・・・・・ああ、そうね。急ぐ必要はないわ」
ローラはまだ気持ちを切り替えられるわけがないと、すぐに引き下がるとソファに招いた。二人揃って腰掛けるが、部屋には病人がいる。自然と表情は沈痛なものになってしまう。
「レオはどうして追放されたのですか。何も悪い事なんてしていないのに」
「ええ。していないでしょうね。あの子は特別な加護を受けた子。何もしていないわ」
「では」
「でも、私たちが口出し出来ることではないわ。いえ、しては駄目。どんな危険があるか解りませんからね」
「まあ」
思っている以上に大変なことになっているんだと、クリスティーヌは大きく目を見開く。
「この国は今、大変な状況になってしまったのですよ。レオが生きていれば、少しは希望があるかもしれません。でも、シャルルはしつこく追いかけ回すつもりのようです。追放という体裁でしたが、殺したいのは明らか。この間も討伐隊が派遣されたといいます」
「そんな」
クリスティーヌはシャルルのことも知っている。そして、二人が仲良しだったことも知っているのだ。それなのに、実は殺したいほど憎んでいたなんて、ショックでしかない。
「先ほどは忘れてなんて言ってしまったけど、撤回するわ。あの子が無事であることを祈ってあげて」
驚きを隠せないクリスティーヌに、ローラは優しく背中を擦ってあげる。
そうだ、クリスティーヌは唯一自分の、レオの味方になってくれる。そう思うと、つい、レオを忘れてという建前を撤回してしまった。
「それはもちろんです。まだ生きている。それだけで、私はどれだけ嬉しいか」
クリスティーヌはもとより忘れるつもりなんてなく、大きく頷いた。
「ありがとう。でも、王宮にはあまり近づかないようにね。シャルルが何を企んでいるか解りません」
「は、はい」
それでも、この約束がどれだけ危険かを知るローラは、王宮からこっそりと出なさい。そしてしばらく近づかないようにと強く言い含めるのだった。
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