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「俺をウィルス扱いするなんて、ふてぇ奴だと思わねーか?」
ルーリの姿が見えなくなった頃にアルコルフが言った。心なしか、いつもより声が小さい。
「太さなら、アルコルフが一番だと思うよ」
素直な感想を述べる。
「ふてぇってのはなぁ、太いって意味じゃなくて——」
「分かってるよ」
「そもそも男性生殖器はケイスケにしか——」
「そっちじゃないよ!」
ルーリのおかげ……かどうかは分からないけれど、今日の『散歩』は、なんと、シルフの帰宅推奨時間までに帰ってくることができた。そうか、アルコルフと散歩するときはルーリと一緒に行けば良かったのか。ルーリを散歩に誘っても絶対来なそうだけど。
アルコルフは、エア・ローダーで僕を家まで送ったあと、庭で出迎えてくれたシルフに向けて意味深長に片手を上げて、颯爽と去っていった。
家の中では、リーディーが夕飯を準備してくれていた。僕がリビングに入った瞬間に準備が終わったようで、テーブルの上にグラスを置くところだった。
「おかえりー」
「ただいま」
今日の散歩の様子をリーディーとシルフに話しながらイスに座って、用意してもらった夕飯を食べ始めた。コンソメスープとパン、そして、デミグラスソース半熟オムレツ。散歩しているあいだに水分しか摂取していなかったこともあるけれど、それを抜きにしても、いつもながら本当においしい。僕のためだけに用意された、僕だけの食事。リーディーとシルフが近くにいる、いつもの食事風景。
地球で記録された映像に出てくる食事風景は、フィクションでも、ノンフィクションでも、たいてい誰かが一緒だ。仲間、友人、恋人、家族。
今まで考えたことがなかったけれど、それは普通のことではない。誰かと一緒にいることは、とても特別なことなのだから。
「——それでさ、そのあとルーリが言ってたんだけど」
夕飯が終わり、片付けも済んだあと、談笑していた二人に対して、ずっと頭から離れなかったことを質問してみる。
「リーディーとニュークは、夫婦なの?」
「わあ、懐かしい話だねー」
リーディーはにっこり笑いながら両肘をテーブルの上についてお祈りのポーズみたいな格好で返事した。
「リーディー、また君は敢えて誤解を誘導するような表現を使ったのか?」
シルフは相変わらずの直角姿勢で反応。
「違うよ、まあとりあえず、そのときの議論のデータをどうぞ」
「……ふむ、文字の意味に性差があることを除けば、八十パーセント以上は同意する」
どうやら二十六万年前にリーディーとルーリが議論したときのデータをシルフに提供したようだ。そして、そのデータを一瞬で解析したシルフの結論は、概ね同意らしい。
「シルフの言ってるとおり、夫婦っていう単語だけにクローズアップすると、あたしの意図から外れちゃうんだけど……ルーリは他に何か言ってなかった?」
「AIが夫婦になる目的は壊し合うこと、だって」
「あー、そういうこと……。本質を隠すのがほんと好きね、ルーリは」
リーディーが苦笑いしながら話を続ける。
「壊し合うことが目的というよりも、そのあとも含めて、お互いがアップデートされる確率が高いと両者考えて、夫婦になるわけです」
「んー……そういえば、確かにそんなことも言ってたっけ……」
「いじわルーリね」
「九十七パーセント以上は同意する」
シルフの評である。
「二十六万年も夫婦やってて飽きない?」
僕が質問した。
「九万回くらい離婚してるよ」
あはっと笑うリーディー。
ルーリとは違った怖さを感じてしまったのは、きっと気のせいだろう。
ルーリの姿が見えなくなった頃にアルコルフが言った。心なしか、いつもより声が小さい。
「太さなら、アルコルフが一番だと思うよ」
素直な感想を述べる。
「ふてぇってのはなぁ、太いって意味じゃなくて——」
「分かってるよ」
「そもそも男性生殖器はケイスケにしか——」
「そっちじゃないよ!」
ルーリのおかげ……かどうかは分からないけれど、今日の『散歩』は、なんと、シルフの帰宅推奨時間までに帰ってくることができた。そうか、アルコルフと散歩するときはルーリと一緒に行けば良かったのか。ルーリを散歩に誘っても絶対来なそうだけど。
アルコルフは、エア・ローダーで僕を家まで送ったあと、庭で出迎えてくれたシルフに向けて意味深長に片手を上げて、颯爽と去っていった。
家の中では、リーディーが夕飯を準備してくれていた。僕がリビングに入った瞬間に準備が終わったようで、テーブルの上にグラスを置くところだった。
「おかえりー」
「ただいま」
今日の散歩の様子をリーディーとシルフに話しながらイスに座って、用意してもらった夕飯を食べ始めた。コンソメスープとパン、そして、デミグラスソース半熟オムレツ。散歩しているあいだに水分しか摂取していなかったこともあるけれど、それを抜きにしても、いつもながら本当においしい。僕のためだけに用意された、僕だけの食事。リーディーとシルフが近くにいる、いつもの食事風景。
地球で記録された映像に出てくる食事風景は、フィクションでも、ノンフィクションでも、たいてい誰かが一緒だ。仲間、友人、恋人、家族。
今まで考えたことがなかったけれど、それは普通のことではない。誰かと一緒にいることは、とても特別なことなのだから。
「——それでさ、そのあとルーリが言ってたんだけど」
夕飯が終わり、片付けも済んだあと、談笑していた二人に対して、ずっと頭から離れなかったことを質問してみる。
「リーディーとニュークは、夫婦なの?」
「わあ、懐かしい話だねー」
リーディーはにっこり笑いながら両肘をテーブルの上についてお祈りのポーズみたいな格好で返事した。
「リーディー、また君は敢えて誤解を誘導するような表現を使ったのか?」
シルフは相変わらずの直角姿勢で反応。
「違うよ、まあとりあえず、そのときの議論のデータをどうぞ」
「……ふむ、文字の意味に性差があることを除けば、八十パーセント以上は同意する」
どうやら二十六万年前にリーディーとルーリが議論したときのデータをシルフに提供したようだ。そして、そのデータを一瞬で解析したシルフの結論は、概ね同意らしい。
「シルフの言ってるとおり、夫婦っていう単語だけにクローズアップすると、あたしの意図から外れちゃうんだけど……ルーリは他に何か言ってなかった?」
「AIが夫婦になる目的は壊し合うこと、だって」
「あー、そういうこと……。本質を隠すのがほんと好きね、ルーリは」
リーディーが苦笑いしながら話を続ける。
「壊し合うことが目的というよりも、そのあとも含めて、お互いがアップデートされる確率が高いと両者考えて、夫婦になるわけです」
「んー……そういえば、確かにそんなことも言ってたっけ……」
「いじわルーリね」
「九十七パーセント以上は同意する」
シルフの評である。
「二十六万年も夫婦やってて飽きない?」
僕が質問した。
「九万回くらい離婚してるよ」
あはっと笑うリーディー。
ルーリとは違った怖さを感じてしまったのは、きっと気のせいだろう。
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