ウィグロードソラン 〜祝福の乙女と孤高の王女篇〜

でうすあんて

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 第一章(仮) Sanctus,sanctus

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 「…!」

何か声がする…。誰?
私は声に意識を集中する。誰かが話し掛けているみたい。私は意識を声から自分自身に向ける。
(体が、動かない…?)
現状を確認しないと…私は少しずつ目を開いていく。
黄金色の光が眩しい。しばらくして、明るさに目が慣れてきた。同時に五感が戻ってくる感覚、私は地面に倒れていた。

 「おい!嬢ちゃん、大丈夫か?!」
太くしっかりした、男性の声に私はゆっくりと体を起こした。
「嬢ちゃん、気がついたか!こんな所でどうしたんだ?」
 私がゆっくり起き上がる間も、男性は声を掛けつづけていた。
(まあ、地面に倒れている時点で驚かれるのが当然と言えば当然だし、…ここ、どこ?)
「…あ、わ…私、」
私は声をかけている人へと視点を移す。何というか、日焼けした頑強そうな体に手入れのされていないヒゲ面の男性が見下ろしている。
 「おお、気がついて良かった!話せるか?」
男がその姿に反して心配そうに尋ねている。
「はい、あの…私、倒れて?」
私は恐る恐る男に話し掛けてみた。悪い人物ではなさそうな印象でも、まだ安心は出来ない。

 それから少しの間、会話を繰り返して現状を理解し始める事が出来た。ざっくりまとめると、こんな感じ

 ○ここは帝国領、ロクサネの森
 ○男性は猟師をしている。名前は【カベル】
 ○鹿を追いかけていて、偶然私を見つけた

 「それで、嬢ちゃん…あー、名前何だったっけか?」カベルはバツ悪そうに質問してきた。
「アンナです。いろいろとありがとうございました」
私が微笑んで答えると、カベルは太い腕を振りながら「なんの、なんの」と何故かうれしそうだった。
 だが、次の瞬間には目付きは変わっていた…。

 「アンナ、この辺りじゃ知らない顔だな。…お前、どこから来た?」
(!)
私はカベルの刺す様な視線に驚いた。ついさっきまであんなに親切だったのに…
「カベルさん…どうかされましたか?私、何かお気に障るような事…」
だが、全て言い終わる前にカベルが再び尋ねる
「…どこから来て、何の為にいた?ここに来たのなら知らなくはないはずだが?」
カベルの表情から、もう親しみは見えない。その代わりに強い猜疑心、明らかに疑いの眼差しだ。
私は気持ちを落ち着かせるため、小さく一呼吸して答えた。

 「ロカ…、ロカニ村です。こちらへは薬草を採りに来たのですが魔物達が突然表れて…気を失ってしまったようです。ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
私は立ち止まり、カベルに説明と謝罪をした。頭を下げて一礼し顔を上げると…そこにはにこやかなカベルが
いた…。
「?、カベル…さん?」
驚いたような私の顔を見て、カベルはついに吹き出した!

「わっはは、すまんすまん。訳がわからん、という感じだな。…改めて挨拶しよう。ランスタッド帝国辺境伯フィリップ公【守護】守護ガードナーのベルトーだ」
( ! 辺境伯!【守護】!ガードナーと言えば戦士系の上位職…防御に関しては全職業でもトップのはず。
そんな人物が主の警護もしないで臨む任務って…)
「亡命者かスパイ…」
ふと、考えが口に出た。
穏やかな表情のベルトーだが、一瞬その眼差しに鋭さが現れた。
(ほう…)
口に出したかったベルトーだったが、さすがに猛者。
軽々しく考えを示さず思考を始めた。
(アンナ…薬草を扱う者なら多少の知識はあるか。だが、これだけの情報からスパイを疑うとは…何者だ?
一般人などありえん、中央貴族の駒か…それにしては隙が多いか…」
私が身を固くしたのに気づいてベルトーは穏やかな声で話し始めた。
「あー、嬢ちゃんに辺境伯とか【守護】とか、やっぱ怖がられるわな…。大丈夫だ、アンナ。君に危害を加える気はない」
「はい、お気づかいありがとうございます!」
ベルトーの考察に気づく事もなく、アンナは帰路へと向かった。
「…次に会う時は、俺が萎縮する側かもな」
もともと華奢な姿が景色に溶け込むまで見送ったベルトーは誰にでもなくつぶやいていた。


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