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第三章 森の薬師編
56 怪しい影
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マナ達がお茶を飲みながら、ゆったりとした時間を過ごしている時に、ニイナは時々、席を立って窓の外を見ていた。その何度目かに、ニイナは大木の陰に人の姿を見た。遠いので顔までは分からなかったが、その者はニイナに見られていると分ると姿を消した。
――マナがここに来てから変な視線を感じると思ったが、やっぱりか。
談笑している少女たちに向かってニイナが言った。
「さて、そろそろ買出しに行くか」
「わたしお留守番してますね」
「いやいや、みんなで一緒に行こう。その方が楽しいだろ」
ニイナは出来るだけマナを自分の目の届くところに置く事にした。
♢♢♢
ニイナの家から町の商店街までは歩いて四半刻程度だった。
「今日の夕飯は何にするかー」
気だるそうに言うニイナに、シャルが手を上げる。
「肉っ、肉が良いです!」
「おにく~」
シャルの頭の上にいるメラメラも手を上げた。
「肉かぁ。じゃあすごいのいっちゃうか、王室御用達の高級肉店」
「やったぁ! お姉さん太っ腹!」
「わ~い」
マナの見ている前で話が進んでいく。マナは特に口出しもせずに、流れに身を任せていた。
シャルとニイナが並んでどんどん進みだし、マナは少し遅れてついていった。
「シャル、寮には帰らなくても大丈夫なの?」
「平気、平気、今日は休みだし、誰にもばれやしないって。王室御用達は食べて帰らないとね!」
二人で話していると、歩調の速いニイナと距離が開いてしまった。シャルは頭のメラメラが落ちないように押さえると、ニイナを小走りで追う。マナもその後を追おうとすると、商店街の人の波にのまれて、なかなか追いつけなかった。マナの視界の先でニイナとシャルが立派な構えのお店に入っていった。
その様子を見ている者たちがいた。
「今だ、行くぞ」
マナが一人になったのを見計らって、柄の悪い男二人が物陰から出てきて接近する。そして一人がマナに手を伸ばした時、強い力で後ろに引っ張られて上に持ち上げられた。大の男二人が衣服に首を絞めつけられて足をばたつかせる。
「マナ、何やってんだい」
「ごめんなさい、今行きます」
ニイナに呼ばれたマナは、後ろにいた男たちには気が付かずに店の中に入っていった。
「は、はなせっ!」
「誰だ!?」
焦る男たちは宙吊りのまま連れていかれて、路地裏に放り投げられた。尻もちを付いて見上げる彼らの目に腕組みする騎士が映った、レクサスであった。
「お前たち、あのお嬢さんに何をするつもりだったんだ? 答えによっては容赦はせん」
レクサスがすらりと剣を引き抜くと、男たちは慄いて言った。
「待ってくれ、俺たちは頼まれただけなんだ」
「何を頼まれたんだ?」
「あの子を連れていったら金をくれるって言うんでよ」
「雇い主に伝えろ、あのお嬢さんに手を出したら王国を敵に回すことになるとな」
レクサスは睨みを効かせて男たちを追い出した。
「アストラル・テグマの連中にも困ったもんだな」
それから彼は通りに出てマナの入っていった店を警戒しながら言った。
「陛下もあの子の事をずいぶん気に入っているんだな。戦争するよりもお嬢さんを護れって言うんだからなぁ」
レクサスは、他数人の騎士と交替しながら密かにマナの事を護衛しているのだった。
♢♢♢
翌日の朝、マナはニイナと一緒に薬作りに勤しんでいた。
「まず、ノコバ草をすり鉢で潰すんだが、その前に確認だ。毒のあるセンバ草が入ってたら一大事だからな、一つ一つ丁寧に確認しろ。ここにセンバ草をおいておくから、しっかり見比べてな」
「はい」
マナは自分で取った薬草を、一つ一つかなり時間をかけて確認する。
「ノコバ草をすり潰したら、そいつを煮出す。それを布で濾して不純物を取り除き、抽出したノコバ草のエキスを更に煮詰める」
そして、ビーカーのエキスを煮詰める事一刻。
「よし、このエキスとワセリンと融和材を入れてよく混ぜ合わせたら完成だ。一人で造る場合は、ワセリンと融和材も調合する必要があるが、今回はこれでいい」
マナが容器の中のものをすり棒で混ぜ合わせると、鮮やかな緑色の軟膏が出来上がった。
「これが傷薬だ」
「わあ、綺麗ですね」
「よし、今日の実技はこれまで。後は三日後の薬科試験に向けてテスト勉強だ、わたしが教えてやる」
ニイナは薬科試験に関わった事があるそうで、ポイントを押さえて分かりやすく教えてくれた。そのおかげもあって、マナはあっさりとブロンズⅡの称号を得る事ができた。
――マナがここに来てから変な視線を感じると思ったが、やっぱりか。
談笑している少女たちに向かってニイナが言った。
「さて、そろそろ買出しに行くか」
「わたしお留守番してますね」
「いやいや、みんなで一緒に行こう。その方が楽しいだろ」
ニイナは出来るだけマナを自分の目の届くところに置く事にした。
♢♢♢
ニイナの家から町の商店街までは歩いて四半刻程度だった。
「今日の夕飯は何にするかー」
気だるそうに言うニイナに、シャルが手を上げる。
「肉っ、肉が良いです!」
「おにく~」
シャルの頭の上にいるメラメラも手を上げた。
「肉かぁ。じゃあすごいのいっちゃうか、王室御用達の高級肉店」
「やったぁ! お姉さん太っ腹!」
「わ~い」
マナの見ている前で話が進んでいく。マナは特に口出しもせずに、流れに身を任せていた。
シャルとニイナが並んでどんどん進みだし、マナは少し遅れてついていった。
「シャル、寮には帰らなくても大丈夫なの?」
「平気、平気、今日は休みだし、誰にもばれやしないって。王室御用達は食べて帰らないとね!」
二人で話していると、歩調の速いニイナと距離が開いてしまった。シャルは頭のメラメラが落ちないように押さえると、ニイナを小走りで追う。マナもその後を追おうとすると、商店街の人の波にのまれて、なかなか追いつけなかった。マナの視界の先でニイナとシャルが立派な構えのお店に入っていった。
その様子を見ている者たちがいた。
「今だ、行くぞ」
マナが一人になったのを見計らって、柄の悪い男二人が物陰から出てきて接近する。そして一人がマナに手を伸ばした時、強い力で後ろに引っ張られて上に持ち上げられた。大の男二人が衣服に首を絞めつけられて足をばたつかせる。
「マナ、何やってんだい」
「ごめんなさい、今行きます」
ニイナに呼ばれたマナは、後ろにいた男たちには気が付かずに店の中に入っていった。
「は、はなせっ!」
「誰だ!?」
焦る男たちは宙吊りのまま連れていかれて、路地裏に放り投げられた。尻もちを付いて見上げる彼らの目に腕組みする騎士が映った、レクサスであった。
「お前たち、あのお嬢さんに何をするつもりだったんだ? 答えによっては容赦はせん」
レクサスがすらりと剣を引き抜くと、男たちは慄いて言った。
「待ってくれ、俺たちは頼まれただけなんだ」
「何を頼まれたんだ?」
「あの子を連れていったら金をくれるって言うんでよ」
「雇い主に伝えろ、あのお嬢さんに手を出したら王国を敵に回すことになるとな」
レクサスは睨みを効かせて男たちを追い出した。
「アストラル・テグマの連中にも困ったもんだな」
それから彼は通りに出てマナの入っていった店を警戒しながら言った。
「陛下もあの子の事をずいぶん気に入っているんだな。戦争するよりもお嬢さんを護れって言うんだからなぁ」
レクサスは、他数人の騎士と交替しながら密かにマナの事を護衛しているのだった。
♢♢♢
翌日の朝、マナはニイナと一緒に薬作りに勤しんでいた。
「まず、ノコバ草をすり鉢で潰すんだが、その前に確認だ。毒のあるセンバ草が入ってたら一大事だからな、一つ一つ丁寧に確認しろ。ここにセンバ草をおいておくから、しっかり見比べてな」
「はい」
マナは自分で取った薬草を、一つ一つかなり時間をかけて確認する。
「ノコバ草をすり潰したら、そいつを煮出す。それを布で濾して不純物を取り除き、抽出したノコバ草のエキスを更に煮詰める」
そして、ビーカーのエキスを煮詰める事一刻。
「よし、このエキスとワセリンと融和材を入れてよく混ぜ合わせたら完成だ。一人で造る場合は、ワセリンと融和材も調合する必要があるが、今回はこれでいい」
マナが容器の中のものをすり棒で混ぜ合わせると、鮮やかな緑色の軟膏が出来上がった。
「これが傷薬だ」
「わあ、綺麗ですね」
「よし、今日の実技はこれまで。後は三日後の薬科試験に向けてテスト勉強だ、わたしが教えてやる」
ニイナは薬科試験に関わった事があるそうで、ポイントを押さえて分かりやすく教えてくれた。そのおかげもあって、マナはあっさりとブロンズⅡの称号を得る事ができた。
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