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第三章 森の薬師編
65 公爵令嬢との再会
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「あら、あなたは」
「マナお嬢様じゃないですか!?」
「シンシア~」
シンシアが躍り出てくると、マナの上にいるメラメラが手を振った。
「メラメラちゃん、久しぶり!」
マナは公爵令嬢と目が合って緊張してしまう。
「ア……アルメリア様」
「こんな所で出会うなんて、奇妙な巡り会わせですこと」
「誰だ? 知り合いか?」
アルメリアはニイナに向かって、スラムにはまったく似つかわしくない華麗なカーテシーを見せた。
「アルメリアと申します」
「これはどうも、ニイナです。……うん? アルメリアって、公爵令嬢の?」
「察しがいいですね」
「マジか……何で公爵様がこんな場所にいるんだ?」
「内密の視察です。この事は公にはしたくないので、口外はなさらぬようお願いします」
それからアルメリアは、マナに微笑を向ける。マナはそんな優しい表情のアルメリアを見た事が無かったので、胸に響く様な思いが募った。
「今のあなたは幸せそうに見えますね。学園を辞めて良かったのではないですか?」
「はい、今はとても楽しいです。ニイナさんも家族みたいに接してくれます」
「わたしはとても後悔しています。あなたを力づくでも学園から遠ざけるべきでした。そうすれば、あんな理不尽な仕打ちを受けずに済んだでしょうに」
「アルメリア様……」
マナは涙を浮かべて言った。
「学園にいた時は、アルメリア様の事が怖かったんです。でも、学園から離れてから、アルメリア様がお優しい方だって分かりました。わたしの事を、ずっと心配してくれたんですよね」
「あなたが学園にいたら不幸になると思っていましたから、あえて厳しい態度を取りました。結局は、あなたに嫌な思いをさせたばかりでしたわ」
「そんな事ありません。今はとても感謝しています」
アルメリアが笑顔で返すと、余りに美しく心現れるような姿に、マナは艶然とした。
「そうだわ、マナさんも手伝って下さらない?」
「え? いいですけど」
マナは内容も聞かずに答えてしまう。アルメリアの中に潜むものが、反射的に相手に是と言わせしめてしまう。
それからマナは、アルメリアと一緒に噴水広場のパン屋に入る。そこにはパンが山と積まれたバスケットがいくつも置いてあった。
「お嬢様、お待ちしていました!」
女将が愛想よく言いながら、切り分けたバゲットをバスケットに積み上げていた。
「わざわざ籠に入れてくれたのですね」
「これくらいは当然です。お店のパンを全て買って頂いたのですから」
そして、護衛の騎士も含めて全員でバスケットを抱えて外に出る。
「出陣ですわ!」
アルメリアは妙に気合が入っている。その訳はすぐに知れた。
「お腹が空いてるスラムの人達に、パンを配って下さいね!」
シンシアが元気に走り回ってパンを配り始めると、こっちから行くまでもなく人が集まってきて大変な事になった。マナはパンを求めて押し寄せてくる人々にたじたじだったが、アルメリアは慣れた手つきでパンを配っていた。パンが無くなる頃には、フロスブルグの町に夕日が射し込んでいた。
「はぁ、どうにかなりそうだったよ……」
マナが疲れ果てて痛んだ石の階段に座っていると、頭の上からパンくずが落ちてくる。ご機嫌のメラメラがバゲットをかじっていた。
「いいね、メラメラは、いつでも幸せそうでさ」
「ご苦労様でした。助かりましたわ」
アルメリアが近づいてくると、マナは頭の上のパンくずを払って立ち上がった。
「アルメリア様、いつもこんな事してるんですか?」
「たまにですわ」
アルメリアは夕刻に沈む裏町を見つめて言った。
「マナさんは、この町を見てどう思いますか?」
「言っちゃ悪いと思うんですけど、酷いところですよね、臭いもきついし」
「本来であれば、町の隅々まで復興は終わっているはずなのです。国からそれだけの支援金が出ています。しかし、現状はこの通りです。貴族のご機嫌取りだけして、後は目に見えるところだけを綺麗に見せている」
「あれ? 支援金は?」
「この町の領主が、復興の為の支援金を横領しているのですわ。わたくしは、このような不正を全て正そうと考えています。誰もできないのなら、このわたしがやります。それがお世話になっている王妃様への恩返しになると思っています」
マナとアルメリアでは、立っている世界が違い過ぎた。マナはアルメリアが星空でもあるような遠い目で見つめていた。
♢♢♢
帰りの乗合馬車にて、マナは夕焼けを浴びながら、長い息を吐いて体の中に溜まっていた重苦しい気持ちを出した。
「あー、学園辞めてよかったぁ。あんな人に敵うわけないもん」
そう言いながらも、アルカードの姿を思い出すと、マナの胸が切なくなった。
「マナお嬢様じゃないですか!?」
「シンシア~」
シンシアが躍り出てくると、マナの上にいるメラメラが手を振った。
「メラメラちゃん、久しぶり!」
マナは公爵令嬢と目が合って緊張してしまう。
「ア……アルメリア様」
「こんな所で出会うなんて、奇妙な巡り会わせですこと」
「誰だ? 知り合いか?」
アルメリアはニイナに向かって、スラムにはまったく似つかわしくない華麗なカーテシーを見せた。
「アルメリアと申します」
「これはどうも、ニイナです。……うん? アルメリアって、公爵令嬢の?」
「察しがいいですね」
「マジか……何で公爵様がこんな場所にいるんだ?」
「内密の視察です。この事は公にはしたくないので、口外はなさらぬようお願いします」
それからアルメリアは、マナに微笑を向ける。マナはそんな優しい表情のアルメリアを見た事が無かったので、胸に響く様な思いが募った。
「今のあなたは幸せそうに見えますね。学園を辞めて良かったのではないですか?」
「はい、今はとても楽しいです。ニイナさんも家族みたいに接してくれます」
「わたしはとても後悔しています。あなたを力づくでも学園から遠ざけるべきでした。そうすれば、あんな理不尽な仕打ちを受けずに済んだでしょうに」
「アルメリア様……」
マナは涙を浮かべて言った。
「学園にいた時は、アルメリア様の事が怖かったんです。でも、学園から離れてから、アルメリア様がお優しい方だって分かりました。わたしの事を、ずっと心配してくれたんですよね」
「あなたが学園にいたら不幸になると思っていましたから、あえて厳しい態度を取りました。結局は、あなたに嫌な思いをさせたばかりでしたわ」
「そんな事ありません。今はとても感謝しています」
アルメリアが笑顔で返すと、余りに美しく心現れるような姿に、マナは艶然とした。
「そうだわ、マナさんも手伝って下さらない?」
「え? いいですけど」
マナは内容も聞かずに答えてしまう。アルメリアの中に潜むものが、反射的に相手に是と言わせしめてしまう。
それからマナは、アルメリアと一緒に噴水広場のパン屋に入る。そこにはパンが山と積まれたバスケットがいくつも置いてあった。
「お嬢様、お待ちしていました!」
女将が愛想よく言いながら、切り分けたバゲットをバスケットに積み上げていた。
「わざわざ籠に入れてくれたのですね」
「これくらいは当然です。お店のパンを全て買って頂いたのですから」
そして、護衛の騎士も含めて全員でバスケットを抱えて外に出る。
「出陣ですわ!」
アルメリアは妙に気合が入っている。その訳はすぐに知れた。
「お腹が空いてるスラムの人達に、パンを配って下さいね!」
シンシアが元気に走り回ってパンを配り始めると、こっちから行くまでもなく人が集まってきて大変な事になった。マナはパンを求めて押し寄せてくる人々にたじたじだったが、アルメリアは慣れた手つきでパンを配っていた。パンが無くなる頃には、フロスブルグの町に夕日が射し込んでいた。
「はぁ、どうにかなりそうだったよ……」
マナが疲れ果てて痛んだ石の階段に座っていると、頭の上からパンくずが落ちてくる。ご機嫌のメラメラがバゲットをかじっていた。
「いいね、メラメラは、いつでも幸せそうでさ」
「ご苦労様でした。助かりましたわ」
アルメリアが近づいてくると、マナは頭の上のパンくずを払って立ち上がった。
「アルメリア様、いつもこんな事してるんですか?」
「たまにですわ」
アルメリアは夕刻に沈む裏町を見つめて言った。
「マナさんは、この町を見てどう思いますか?」
「言っちゃ悪いと思うんですけど、酷いところですよね、臭いもきついし」
「本来であれば、町の隅々まで復興は終わっているはずなのです。国からそれだけの支援金が出ています。しかし、現状はこの通りです。貴族のご機嫌取りだけして、後は目に見えるところだけを綺麗に見せている」
「あれ? 支援金は?」
「この町の領主が、復興の為の支援金を横領しているのですわ。わたくしは、このような不正を全て正そうと考えています。誰もできないのなら、このわたしがやります。それがお世話になっている王妃様への恩返しになると思っています」
マナとアルメリアでは、立っている世界が違い過ぎた。マナはアルメリアが星空でもあるような遠い目で見つめていた。
♢♢♢
帰りの乗合馬車にて、マナは夕焼けを浴びながら、長い息を吐いて体の中に溜まっていた重苦しい気持ちを出した。
「あー、学園辞めてよかったぁ。あんな人に敵うわけないもん」
そう言いながらも、アルカードの姿を思い出すと、マナの胸が切なくなった。
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