神造のヨシツネ

ワナリ

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第5話:白の軍団

Act-04 状況開始

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 同時刻、ヘイアン宮の庭園では、シートをかけられ、その身を隠しているシャナオウのそばで、

「ムネモリとトモモリが、御座所に入っていったのね――シゲヒラの名前がないけど、どうしたの?」

 と、『朝廷のツクモ神』であるベンケイが、動き出した状況への報告に、怪訝な顔で反問していた。

「はっ、平氏が申すには、シゲヒラは一昨日の戦闘で受けた傷の具合が、思わしくないとの事で」

 衛兵の返答にベンケイは顔を曇らせる。
 確かに一昨日、シゲヒラの機甲武者をシャナオウの大技『サウザンドソード』で破壊したのは、他ならぬウシワカとベンケイであり、そのパイロットが負傷していても不思議ではなかった。

 だが昨日の平氏の使者の口上では、参内にはシゲヒラの名前もあった。
 本当に傷の具合が悪化したのかもしれないが、ゴシラカワの挑発的な仕掛けに対する、平氏側の作戦変更とも考えられる――いや、ベンケイはそうであると判断した。

「ウシワカ、私は一人で行くから、ここで待っていて」

「えっ、トキタダが動き出したら、シャナオウで止めにいくんじゃなかったの?」

「思ったよりも動きが小さいかもしれないの。もし平氏の機甲武者が動き出したら、すぐに戻るから!」

「ちょ、ちょっとベンケイー⁉︎」

 トキタダのいる東宮へ飛び去るベンケイ。その背中を、ウシワカは、サブローとカイソンと共に、呆気にとられたまま見送る事しかできなかった。

 段取りでは――御座所のゴシラカワにはトモモリが、東宮のアントクにはトキタダが強行突破を仕掛けてくると想定して――ウシワカはベンケイと、トキタダの迎撃を担当するはずであった。

 だが、パートナーのベンケイが一人で行動してしまったため、ウシワカは当面する事がなくなってしまった。

「どうする、ウシワカ?」

 サブローの問いに、

「うーん、戦闘が始まるまでシャナオウは平氏の目に触れさせる訳にはいかないから……うん。私たちも東宮へ行こう」

「えーっ、ベンケイさんは待っている様に言ってたじゃない!」

「そうだけど……なんか私も行った方がいい気がするんだ」

「気がするって……!」

 独自行動を行おうとするウシワカと、それを諌めるカイソンのやり取りが続くが、

「じゃあ、アタシとウシワカだけで行こうか」

 というサブローの一流の駆け引きに、

「ま、待って! どうしていつも私を置いていこうとするの!」

 カイソンがふくれっ面になる事で、三人の心はひとつになった。


 そして皇帝御座所では、

「えー、陛下のご尊顔を拝し、恐悦至極に存じまする中……えー、この度我ら平氏一門は、源氏の暴徒の襲来により……えー、しばしの間この都より――」

 平氏の棟梁、たいらのムネモリが緊張のため、しどろもどろになりながら、女帝ゴシラカワに向けて、キョウト退去の口上をダラダラと述べていた。

 その間、副将である弟のトモモリは、何も言わずに目を伏せ、何かを待っていた。
 そして、まどろっこしい口上が終わると、ゴシラカワは半分開いた御簾の中から、

「トモモリ、顔を上げい」と言ってから、「都落ちの挨拶にしては、随分仰々しい供回りで来たものだな――外の機甲武者、いったい何機だ?」

 と、平氏の皇帝強奪の陣容について、単刀直入に問い合わせた。

「三十五機」

 それに応じるトモモリも、これまた簡潔に真実を答える。

「それで上手くいくと思うてか? ヘイアン宮には、我ら『天使の直系』たる皇族による魔導結界も張ってある。よもや、それを知らぬお前ではあるまい」

 もうゴシラカワは、トモモリしか見ていない。シンゼイをはじめ、居並ぶ廷臣たちもこのやり取りを、息を呑んで見守っていたが、

「外からなら結界も効きましょう。だが――」

 そう言って片肌脱ぎになったトモモリの体には、

「き、貴様!」

 思わずシンゼイが絶叫するほどの、大量の爆薬が巻き付けられていた。

「動かれるな、陛下。あなたがシールドを張るのが早いか、私が起爆スイッチを押すのが早いか――さいの目に賭けてみられるか?」

「フッ、フフフッ」

 この状況にも、落ち着きを失わず笑うゴシラカワは、

「して、これからどうする? 私を動座させても、きっとこのシンゼイが私を廃位して、アントクを即位させて、お前たちを朝敵にするぞ?」

 と、平然と言葉を重ねていく。この陰で『大天狗』と揶揄される大策謀家は、己の身を賭して一門を背負おうとする、たいらのトモモリという偉丈夫とのやり取りが、楽しくなってしまった様であった。

「それも抜かりなし!」

「シゲヒラか?」

「――――⁉︎」

 ゴシラカワはすべてを見通している――見通した上で、自分たちを御座所まで招き入れた事に、トモモリは違和感を覚え始めた。

 その時、御座所の外に、ドーンという爆発音が響き渡った。
 それは、ムネモリとトモモリの従者に変装し、共にヘイアン宮に入ったシゲヒラが、行動を開始した合図であった。



Act-04 状況開始 END

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