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第12話:決戦ダンノウラ
Act-03 心象風景――皇女アントク
しおりを挟む皇女アントク。
タカクラ帝の一人娘として生を受け、次期皇帝の座を約束されていた聖なる皇女。
彼女の運命は、源平に翻弄されたといっても過言ではなかった。
アントクが三歳の時、父タカクラ帝が崩御。
母が平キヨモリの娘だったアントクは、平氏の専権を警戒した摂政シンゼイによって、後継の座をゴシラカワにかすめ取られた。
――皇統が清ければ、それでよい。
物心つかぬ彼女に、もし意識があればそう言っただろう。
アントクとは、そういう『憎しみの感情』とは無縁の存在であった。
そして彼女は、平氏の皇女として花の様に麗しく成長した。
一門を優遇し、その裏で対抗勢力を徹底的に弾圧した平氏。
そんな政治を幼き少女が目にする事はなく、ツクモ神トキタダと、優しき公達に囲まれたアントクの目に映る世界は、いつも美しかった。
――憎む事なく、愛し続けるだけでいい。
だがそんな日々は突然、終わりを迎えた。
平キヨモリ没後の、後継ムネモリの失政。
同時に起こった源氏の復活。
ヘイアン宮での、源ウシワカとの運命の邂逅。
汚れを知らぬ皇女の世界は、血に染められた。
燃える都。蹂躙される一門。
そこにはいつも緑の機甲武者がいた。
――あいつが私から美しい世界を、愛する者を、何もかも奪っていく。
皇女の心にいつしか怒りの感情が芽生え、それはイチノタニの炎の中で、憎しみへと昇華した。
――源ウシワカ、許すまじ。この世から滅ぼすべし。
齢十一にしてアントクは、皇女の身ながら機甲武者を駆る戦士となった。
その強大な魔導力の先にアントクが見るのは、美しき世界。
正義が正義として尊ばれ、悪が存在しない、かつて自分が生きてきた理想郷。
だがそんなものは元々、存在しなかった。
それは平キヨモリという英雄が見せた、ひと時の幻想。
平氏という悲しいほど家族的な一族が見た、一期の夢であった。
このダンノウラで、餓狼のごとき源氏を――源ウシワカを討つ。その先にこそ美しき未来がある。
もはやそれが、どれだけ独善的であろうと、アントクはもう止まらない。
正義が暴走した時の悲劇など、その当事者には分かる訳もなかった。
自身がもっとも忌み嫌った、悪鬼へと変貌した――聖なる皇女。
だがそれでも、その心はダンノウラの海よりも青く澄み切っていた。
Act-03 心象風景――皇女アントク END
NEXT Act-04 ラストアタック
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