神造のヨシツネ

ワナリ

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第8話:夢の果て

Act-09 蜂起

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「待たせたな、トモエ」

 源氏軍の本陣から奪った、軍用ジープに乗ったヨシナカが、妻トモエのもとに戻ってきた。

「やり残した事は、ありませんか?」

 静かな笑顔で応じるトモエの背後には、木曽軍に残った機甲武者、戦闘車両が全機、臨戦態勢でスタンバイしていた。

「ああ。ヨリトモの奴に借りも返してきた。これで思い残す事なく――キョウトとも、おさらばだ」

 うなずいたヨシナカの視線の先には、皇帝の御所――ヘイアン宮がそびえ立っていた。

「全軍、準備はできています」

 トモエの声に合わせて、ヨシナカのまわりに木曽兵が集まってきた。その顔は皆、これまでの労苦に疲れ切っていたが、不思議とそこに暗さはなかった。
 すべては木曽ヨシナカという男の大きさが、木曽軍という家族を癒していたのである。

 そんな仲間たちの顔を、ヨシナカは一人一人、順に見つめていく。そして、「みんな――」と、口にしてから目を閉じると、

「本当にすまねえ。今回の事はすべて大将である俺の責任だ」

 そう言って、深々と頭を下げた。

「ヨシナカ様、やめてください!」

「違います! 俺たちが不甲斐なかったせいです!」

 木曽兵が、次々にヨシナカをかばう声を上げると、

「ありがとな、みんな」

 顔を上げたヨシナカは、そのまま空を見つめ語り続ける。

「キョウトに一番乗りしてすぐに、神器を持った同族のウシワカに出会えて、これはツイてるって思ったんだがな……。おまけにあいつは皇女で、それを奉戴すれば、俺たちの新しい国が作れる――俺たちの『夢』が叶うってな」

 夢――その言葉に、兵たちの胸は熱く痛んだ。キソの皆が抱いたその夢ために、ヨシナカがこれまで、どれだけの苦労を重ねてきたかを皆、知っているからである。

「だから煽るだけ煽ってみたんだが……キョウトってのは本当に天狗の棲家すみかだな。見事にしてやられちまって、このザマだ」

「ヨシナカ……でもウシワカは――」

 よもやウシワカを恨んでいるのではあるまいかと、不安そうな声を上げるトモエに、

「ああ、ウシワカはいい子だよな……。あんな子を、政争の具にしようとした俺が間違ってた」

 ヨシナカはそう言うと、一旦言葉を切ってから不意に、

「俺たちも、あんな子が欲しいよな――お前もそう思うだろ?」

「――――!」

 ニヤリと自分を覗き込む夫に、思わずトモエは赤面した。

 そして木曽兵から、拍手喝采が沸き起こった。

「おお! 次の戦は、後継ぎ作りですね!」

「こりゃ大仕事だ。ヨシナカ様、我らはお手伝いできませんが、せいぜいお励みください!」

 大将夫妻をからかい、皆が笑顔に包まれるそこは、とても敗軍の雰囲気ではなかった。

「よーし、みんな! キソに帰るぞ! そして出直しだ!」

 ヨシナカの号令に、皆が「おー!」と腕を上げる。

「だが、このまま手ぶらで帰っちゃ、死んだ奴らに申し訳が立たねえ。落とし前はつけていくぞ――大天狗に仕返しだ!」

 その宣言に木曽兵は、

 ――ヘイアン宮襲撃、皇帝ゴシラカワ奪取。

 という、トモエから事前に申し渡されていた作戦行動を開始するべく、機甲武者を起動させ、戦闘車両のエンジンをかけた。

 
 その少し後、源氏本軍の本陣では――

「なに! ヨシナカが御所を攻撃しているだと⁉︎」

 伝令からもたらされた報告に、大江おおえのヒロモトが驚きの声を上げていた。

「ヨシナカめ、帝を同座させてキソで再起を図る気か!」

 隣の梶原カゲトキは、木曽軍の狙いが、平氏の都落ちと同じ手口である事に、厳しい顔付きになると、

「ヨリトモ様には、私が報告します。カゲトキ殿は急ぎ軍をヘイアン宮に」

 ヒロモトは、いまだ陣屋から出てこない傷心の主君を気遣い、自分たちだけで事態を解決するべく、急ぎ対応に取りかかった。

「魔導結界のおかげで、少しは時間が稼げるだろう。準備が整い次第、出られる部隊から進発させる」

 そう言い残し、本陣を飛び出すカゲトキの目に――その場から、一目散に走り去るウシワカとベンケイの姿が映った。

 御座所でヨシナカ支援を宣言し、それをヨリトモに、「好きにしろ」と突き放されたウシワカ。
 彼女が、今の報告を盗み聞きしていたらしい事に、カゲトキは顔をしかめる。

 まさかとは思うが、ウシワカが本当にヨシナカにつけば厄介な事になる。どちらにしても、ヘイアン宮に急行しなければならないカゲトキは、

「和田ヨシモリ隊、畠山シゲタダ隊は、急ぎ出撃準備せよ!」

 と、指令を残すと、自身も麾下の部隊を進発させるべく、その野営地に走った。



Act-09 蜂起 END

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