10 / 142
嘘には嘘を Ⅲ(御園視点)
しおりを挟む
物心ついたときから、オレは異常だということを理解していた。
オレと同じ性別の皆が好きになるのは、決まって女の子で。だけどオレは、オレと同じ性別の人しか好きになれなかった。
頑張って女の子を好きになろうとしてみたことも数回あった。ちょっと好きかな、って思った子に彼女になってもらったり、告白してみたり。
女の子は、賢い生き物だ。オレが彼女たちのことを愛せていないことなんて、すぐに見破られた。優しい子は丁寧にお断りしてくれて、自分に正直な子は辛辣な言葉を吐いて、オレの元から去った。
それでも心が痛まなかったことを考えると、やはり女性を愛すことはオレには無理なのだと悟った。
パソコンなどで調べてみると、オレみたいな人は一定数いるようで、どうやらゲイと呼ばれているようだった。
自分だけが変なのではないということに安堵感を覚えたことは、今でも記憶に残っている。
場合によっては差別の対象になることも。
遊沙と出会ったのは、そんなオレが高校二年になった時だった。一言で言うと、遊沙は変な奴だった。
本を読むことが好きで、いつもニコニコ笑っていた。そのくせ周囲に誰もいなくなると、ふっと感情が抜けて、冷淡な顔になる。それなりに勉強はできるのに、よくぼうっとしてうっかりミスをする。
ちぐはぐな様子が気になって目が離せなくなって、気付けばいつも彼と一緒にいた。彼のことを好きになってしまっていた。
そんな自分の気持ちに気付いたのは、オレの家に彼を呼んだときのことだった。
お金がないのか今にも崩れそうなボロアパートに住んでいる彼は、ゲームをやったことがないと言っていた。だからオレは、一緒にやってみようと誘ったのだった。
遊沙はそれなりに上手かった。彼は得意なものが少ないが、苦手なものも少ないようだった。どれも人並みにできて、だからといって突出してできるものもない。そんな人だった。
オレはふと、遊沙に言った。
「オレさあ、同性しか好きになれないんだよね」
どうして言ってしまったのか、自分でもわからない。最近LGBTQが認知されてきたとは言っても、倦厭されたり、奇異の目で見られたりすることなんて少なくない。
オレは言ってしまってから、遊沙との交友関係がなくなってしまうのではと恐れた。後悔した。
だけど、遊沙は、
「ふーん」
とだけ言った。オレが困惑していると、
「なに? そんなことで友人やめると思った?」
意味が分からない、というような顔をされた。その間も遊沙はゲーム機を離さない。オレが真剣に悩んでいるのに、遊沙はゲームの方が大事なようだった。
「じゃあ言うけど。僕、小中と学校で虐められてて、友達とかいなくて。家が唯一の居場所だったのに、去年喧嘩した矢先に二人とも事故で死んじゃってさ。人生踏んだり蹴ったりなの。そんなときに御園が声をかけてくれて、どれだけ僕が救われたか知ってる? 知らないでしょ」
いや、ホントに知らんわ。まじか、そんな暗い人生歩んできたのかよ。住処がボロいのはそういう事情か。
「これ、話したの御園が初めてだから」
オレだってゲイだと話したの、お前が初めてだよ。
結局オレの悩みなんて、トイレットペーパーみたいに簡単に流されて、だんだんどうでも良くなったんだ。
そこで、オレは悟った。
ああ、オレはコイツのことが好きなんだって。自分の悩みも全部打ち明けたいくらい好きだって。
そしてそれを何でもないことのように受け止めてくれる、そういうところも含めて大好きなんだって。
それからオレは、彼を絶対に幸せにしようって、もう辛い思いはさせないって、そう、決めたのに。
遊沙と連絡がつかなくなって、心配でこっそりアパートを見に行った。電気が付いていれば、疲れて寝ているのだろうから帰るつもりだった。だけど、電気どころか人のいる気配すらない。
バイトだって九時には終わっているはずで、遊沙はいつも寄り道しないからすぐ帰っているはずなのに。
不審に思ったけれどどうすることもできず、帰ろうとした時だった。
「何だったんだよ、さっきのグラサン野郎」
「てかお前、おれら置いてさっさと逃げやがったよな? お前が一番楽しんでたくせに」
「それな、言い出しっぺお前じゃん」
「は? お前らだって十分楽しんでただろうが」
同い年くらいの三人組が揉めながら歩いているのが見えた。不穏な会話をしている三人からさっさと離れようと、足早にすれ違った時。
「あーあ、もうちょっといたぶりたかったのにな」
「今度はもっと人来ないとこでやろうぜ」
「でも次はついて来ないんじゃね?」
「来るだろ、遊沙だし」
は? 遊沙? 見知った名前が聞こえてきた。こいつらが何かしたのか?
オレは奴らの後をつけながら話を盗み聞いて、ことの顛末を理解した。こいつらか。遊沙を虐めていたクソ野郎どもは。
パーカーのフードを深めに被る。大切な親友のためだし、ちょっとくらいやり過ぎても良いよな。
オレと同じ性別の皆が好きになるのは、決まって女の子で。だけどオレは、オレと同じ性別の人しか好きになれなかった。
頑張って女の子を好きになろうとしてみたことも数回あった。ちょっと好きかな、って思った子に彼女になってもらったり、告白してみたり。
女の子は、賢い生き物だ。オレが彼女たちのことを愛せていないことなんて、すぐに見破られた。優しい子は丁寧にお断りしてくれて、自分に正直な子は辛辣な言葉を吐いて、オレの元から去った。
それでも心が痛まなかったことを考えると、やはり女性を愛すことはオレには無理なのだと悟った。
パソコンなどで調べてみると、オレみたいな人は一定数いるようで、どうやらゲイと呼ばれているようだった。
自分だけが変なのではないということに安堵感を覚えたことは、今でも記憶に残っている。
場合によっては差別の対象になることも。
遊沙と出会ったのは、そんなオレが高校二年になった時だった。一言で言うと、遊沙は変な奴だった。
本を読むことが好きで、いつもニコニコ笑っていた。そのくせ周囲に誰もいなくなると、ふっと感情が抜けて、冷淡な顔になる。それなりに勉強はできるのに、よくぼうっとしてうっかりミスをする。
ちぐはぐな様子が気になって目が離せなくなって、気付けばいつも彼と一緒にいた。彼のことを好きになってしまっていた。
そんな自分の気持ちに気付いたのは、オレの家に彼を呼んだときのことだった。
お金がないのか今にも崩れそうなボロアパートに住んでいる彼は、ゲームをやったことがないと言っていた。だからオレは、一緒にやってみようと誘ったのだった。
遊沙はそれなりに上手かった。彼は得意なものが少ないが、苦手なものも少ないようだった。どれも人並みにできて、だからといって突出してできるものもない。そんな人だった。
オレはふと、遊沙に言った。
「オレさあ、同性しか好きになれないんだよね」
どうして言ってしまったのか、自分でもわからない。最近LGBTQが認知されてきたとは言っても、倦厭されたり、奇異の目で見られたりすることなんて少なくない。
オレは言ってしまってから、遊沙との交友関係がなくなってしまうのではと恐れた。後悔した。
だけど、遊沙は、
「ふーん」
とだけ言った。オレが困惑していると、
「なに? そんなことで友人やめると思った?」
意味が分からない、というような顔をされた。その間も遊沙はゲーム機を離さない。オレが真剣に悩んでいるのに、遊沙はゲームの方が大事なようだった。
「じゃあ言うけど。僕、小中と学校で虐められてて、友達とかいなくて。家が唯一の居場所だったのに、去年喧嘩した矢先に二人とも事故で死んじゃってさ。人生踏んだり蹴ったりなの。そんなときに御園が声をかけてくれて、どれだけ僕が救われたか知ってる? 知らないでしょ」
いや、ホントに知らんわ。まじか、そんな暗い人生歩んできたのかよ。住処がボロいのはそういう事情か。
「これ、話したの御園が初めてだから」
オレだってゲイだと話したの、お前が初めてだよ。
結局オレの悩みなんて、トイレットペーパーみたいに簡単に流されて、だんだんどうでも良くなったんだ。
そこで、オレは悟った。
ああ、オレはコイツのことが好きなんだって。自分の悩みも全部打ち明けたいくらい好きだって。
そしてそれを何でもないことのように受け止めてくれる、そういうところも含めて大好きなんだって。
それからオレは、彼を絶対に幸せにしようって、もう辛い思いはさせないって、そう、決めたのに。
遊沙と連絡がつかなくなって、心配でこっそりアパートを見に行った。電気が付いていれば、疲れて寝ているのだろうから帰るつもりだった。だけど、電気どころか人のいる気配すらない。
バイトだって九時には終わっているはずで、遊沙はいつも寄り道しないからすぐ帰っているはずなのに。
不審に思ったけれどどうすることもできず、帰ろうとした時だった。
「何だったんだよ、さっきのグラサン野郎」
「てかお前、おれら置いてさっさと逃げやがったよな? お前が一番楽しんでたくせに」
「それな、言い出しっぺお前じゃん」
「は? お前らだって十分楽しんでただろうが」
同い年くらいの三人組が揉めながら歩いているのが見えた。不穏な会話をしている三人からさっさと離れようと、足早にすれ違った時。
「あーあ、もうちょっといたぶりたかったのにな」
「今度はもっと人来ないとこでやろうぜ」
「でも次はついて来ないんじゃね?」
「来るだろ、遊沙だし」
は? 遊沙? 見知った名前が聞こえてきた。こいつらが何かしたのか?
オレは奴らの後をつけながら話を盗み聞いて、ことの顛末を理解した。こいつらか。遊沙を虐めていたクソ野郎どもは。
パーカーのフードを深めに被る。大切な親友のためだし、ちょっとくらいやり過ぎても良いよな。
0
あなたにおすすめの小説
今日も、社会科準備室で
下井理佐
BL
内気で弱気な高校生・鈴山夏芽(すずやまなつめ)は、昼休みになると誰もいない社会科準備室でこっそりと絵を描いていた。
夏芽はいつものように社会科準備室を開ける。そこには今年赴任してきた社会科教室・高山秋次(あきつぐ)がいた。
新任式で黄色い声を受けていた高山がいることに戸惑い退室しようとするが、高山に引き止められる。
萎縮しながらも絵を描く夏芽に高山は興味を持ち出し、次第に昼休みが密かな楽しみになる。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
天の求婚
紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。
主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた
そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた
即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる