憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

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遊園地の話Ⅳ

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冴木さんの提案で遊園地に来ることになった僕たちは、その貴重な時間を目一杯楽しんでいた。
有栖は仕事が忙しくてこういう所には来られなかったみたいだし、僕はお金の関係であまり来たことがない。母さん達がいた頃は行っていたと思うのだけど、小さいときだったのかその記憶は薄い。
冴木さんだって有栖のスケジュール管理でそれどころじゃなかったはずだから、つまり三人ともほぼ初めてということだ。
冴木さんは誰でも誘ってくれて良いと言ったので、僕は御園を誘った。御園は何をするでもなく人を笑わせる才能があるから、いてくれるととても心強い。時折有栖とLINEもしている様だし、仲も良さそうだから呼んでも問題ないだろう。案の定、有栖と御園は度々僕には聞こえないように内緒の話をしていた。二人だけの積もる話もあるのだろう。二人とも僕経由の友達なので、こうして面と向かって会うのは数ヶ月ぶりくらいだろうし。
それに、両方とも僕とはいつでも会えるから、会えない方と話した方が良いに決まっている。


現地には、僕たち以外にもう一人いて、名前を可香谷さんというらしかった。僕がわりと死にかけた毒チョコ事件で僕を診てくれたお医者さんらしい。正直全く覚えていないのだけど、今更ながらお礼を言っておくと”医者として当然のことをしたまで。礼はいらない”と軽くあしらわれてしまった。表情も態度も冷めた人だけど、嫌な感じはしなかった。
彼は冴木さんと面識があるようで、何かしらを話ながら冴木さんの傍にいた。
恋愛感情に疎い僕が彼らをどうこう言う資格はないけれど、可香谷さんは冴木さんに気がある、とまでは行かなくても、他の人よりは気にかけている感じがする。気のせいかもしれないけれど。


乗り物の順番待ちをしながらそんなことを考えていると、突然目の前に二つの食べ物が現れた。何事かと見上げると、左手の方のポップコーンは有栖が、右手の方のチュロスは御園がこちらに差し出していた。二人が列を抜け出して買ってきてくれたらしい。それぞれの手にはそれぞれが僕にくれたものと同じものが握られていて、二人ともパリパリと食べていた。
市販品だし衛生上は大丈夫だと思うので、少し迷ってポップコーンを口に入れる。すると、有栖がふんと笑った気配がした。ちらりと顔を見ると、とても満足げな顔をした彼が勝ち誇ったように御園を見下ろしていた。対する御園はぐぬぬ……と悔しそうな顔をしている。
もしかして、僕がどっちを先に食べるかみたいな賭けでもしていたのだろうか。

次にこういう場面があったら今度は御園の方を選んでみようか。それはそれで面白そうだ。
小声で何か言い合いを始めた彼らを微笑ましく眺めながら、僕は早く順番が回ってこないかなあと疲れた足を擦って思った。
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