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遊園地の話Ⅲ(御園視点)
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珍しく遊沙に誘われて遊園地に遊びに来たオレだが、遠くからでも目印に出来るデカい何かのせいで、楽しさは半減だった。
…………いや、まあ、オレがあいつの立場だったなら邪魔なのは確実にオレの方だが。せっかく誘われたのだから出来るだけ楽しみたい。そしていちゃつきを邪魔したい。
立場が逆ならあいつだってそうするはずだからな。
いつか遊沙の病室で見た男、冴木は今のところ全く害がない。あの時は何も知らなかったから胡散臭かったが、今ではあいつのマネージャーだって分かってるし、人柄もただただ良い人だった。オレの入場料と、今日だけはどの乗り物にも乗れるという、他より値段が高いフリーパス代を払ってくれると言われた。申し訳なさから一度は払うと申し出たが、彼は「せっかく来てくれたから」と、オレの申し出を断った。
にこにこと何処か嬉しそうだ。LINE上のあいつの話だとこの男は親のようなものらしいが、もしそうならば息子のライバル的な存在のオレをここまで歓迎するものなのだろうか。
気になったのでその場であいつにチラリと聞くと、冴木はオレが遊沙のことを好いていると知らないらしい。認識としては”遊沙の親友で有栖のファン”といったところか。遊沙の親友なら有栖とも仲良くなれるかもと思ってしまっているらしく、あいつも呆れていた。
……冴木がちょっと遊沙に似ていると思ったのは、こういう抜けた性格が原因かもしれない。
そんな彼はメリーゴーラウンドに乗ろうという難易度の高い提案をしてきたが、様々な反対にあってジェットコースターに乗ることになった。
乗ることになったのだ。
ここで何が始まるかというと、
「遊沙の隣は当然俺だろ」
「別に決まってないだろ」
遊沙の隣をかけた争奪戦である。最も平和な解決策として遊沙にどちらの隣が良いか聞いたのだが、返答は「どちらでも嬉しい」だった。彼にとっては隣が恋人だろうが友人だろうがどっちでも良いのだろう。うん、遊沙はそういう奴だ。
その返答を聞くと、この朴念仁は突然拳を突きつけてきた。武力で解決しようっていうのなら確実にオレが優勢だ。
「なんだ? やる気か?」
オレは鼻を鳴らして言った。背が高い方が勝てるほど、オレは弱くない。
「は? 何言ってんだ? じゃんけんポンだろうが」
いやお前が何言ってんだ。”じゃんけんポンだろうが”じゃねえんだよ。分かるかよ。口で言えや。
イライラしながらも提案に乗り、その厳正なるじゃんけんの結果――――。
オレと奴は、仲良く隣同士で収まっていた。何でだよ。全く意味が分からない。
冴木と可香谷という見知らぬ男が二人で座り、遊沙は一人で座り、オレとこいつは全くもって心底大変不本意ながら、隣同士で座っている。全部こいつのせいだ。
こいつが皆の見えるところでじゃんけんを行ったせいで、それを見ていた他の三人が席決めと勘違いして文字通り手を出したのだ。結果は見ての通り。確率的には高くないはずなのに、こうして綺麗に分かれてしまった。”姫”の隣を争った結果、野郎と野郎が隣になるなんて悲劇以外の何物でもない。
「オイ、お前のせいだぞ」
オレが動き出したコースターの上で恨みがましく言うと、
「……ああ、今回ばかりは少し反省だな」
しおらしい発言が帰ってきた。オレとは反対方向を向いて。相当嫌だったらしい。
そういうところは気が合うな。
結局オレたちはただ無言のまま、前の席に座って感情の薄い声で「わー」などと言っている遊沙を眺めていた。
…………いや、まあ、オレがあいつの立場だったなら邪魔なのは確実にオレの方だが。せっかく誘われたのだから出来るだけ楽しみたい。そしていちゃつきを邪魔したい。
立場が逆ならあいつだってそうするはずだからな。
いつか遊沙の病室で見た男、冴木は今のところ全く害がない。あの時は何も知らなかったから胡散臭かったが、今ではあいつのマネージャーだって分かってるし、人柄もただただ良い人だった。オレの入場料と、今日だけはどの乗り物にも乗れるという、他より値段が高いフリーパス代を払ってくれると言われた。申し訳なさから一度は払うと申し出たが、彼は「せっかく来てくれたから」と、オレの申し出を断った。
にこにこと何処か嬉しそうだ。LINE上のあいつの話だとこの男は親のようなものらしいが、もしそうならば息子のライバル的な存在のオレをここまで歓迎するものなのだろうか。
気になったのでその場であいつにチラリと聞くと、冴木はオレが遊沙のことを好いていると知らないらしい。認識としては”遊沙の親友で有栖のファン”といったところか。遊沙の親友なら有栖とも仲良くなれるかもと思ってしまっているらしく、あいつも呆れていた。
……冴木がちょっと遊沙に似ていると思ったのは、こういう抜けた性格が原因かもしれない。
そんな彼はメリーゴーラウンドに乗ろうという難易度の高い提案をしてきたが、様々な反対にあってジェットコースターに乗ることになった。
乗ることになったのだ。
ここで何が始まるかというと、
「遊沙の隣は当然俺だろ」
「別に決まってないだろ」
遊沙の隣をかけた争奪戦である。最も平和な解決策として遊沙にどちらの隣が良いか聞いたのだが、返答は「どちらでも嬉しい」だった。彼にとっては隣が恋人だろうが友人だろうがどっちでも良いのだろう。うん、遊沙はそういう奴だ。
その返答を聞くと、この朴念仁は突然拳を突きつけてきた。武力で解決しようっていうのなら確実にオレが優勢だ。
「なんだ? やる気か?」
オレは鼻を鳴らして言った。背が高い方が勝てるほど、オレは弱くない。
「は? 何言ってんだ? じゃんけんポンだろうが」
いやお前が何言ってんだ。”じゃんけんポンだろうが”じゃねえんだよ。分かるかよ。口で言えや。
イライラしながらも提案に乗り、その厳正なるじゃんけんの結果――――。
オレと奴は、仲良く隣同士で収まっていた。何でだよ。全く意味が分からない。
冴木と可香谷という見知らぬ男が二人で座り、遊沙は一人で座り、オレとこいつは全くもって心底大変不本意ながら、隣同士で座っている。全部こいつのせいだ。
こいつが皆の見えるところでじゃんけんを行ったせいで、それを見ていた他の三人が席決めと勘違いして文字通り手を出したのだ。結果は見ての通り。確率的には高くないはずなのに、こうして綺麗に分かれてしまった。”姫”の隣を争った結果、野郎と野郎が隣になるなんて悲劇以外の何物でもない。
「オイ、お前のせいだぞ」
オレが動き出したコースターの上で恨みがましく言うと、
「……ああ、今回ばかりは少し反省だな」
しおらしい発言が帰ってきた。オレとは反対方向を向いて。相当嫌だったらしい。
そういうところは気が合うな。
結局オレたちはただ無言のまま、前の席に座って感情の薄い声で「わー」などと言っている遊沙を眺めていた。
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