憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

文字の大きさ
80 / 142

遊園地の話Ⅱ(有栖視点)

しおりを挟む
俺と狼男が互いに睨み合いながら牽制し合っていると、方々へ散っていた三人が戻ってきた。冴木が買ってきたチケットを全員に配る。今日の彼はいつものスーツ姿ではなく、涼しげな七分袖のシャツとすらりとしたシルエットのパンツを穿いていた。足下は歩くことに備えてスニーカーだ。どちらかというとラフな格好なのだが、彼がチケットを配っている様を見ると、チケットがどうしても名刺に見えてしまうのは俺だけだろうか。

快活な態度でチケットを受け取った狼男が冴木に料金を支払おうとして止められていた。冴木が全額負担するつもりなのだろう。全く、冴木だって遊びに来たんだ、あんな奴からはさっさとふんだくってしまえばいいものを。狼男と冴木はしばらく悶着したが、結局冴木が負担するようだ。お人好しめ。

甘やかされた側の狼男はラフを通り超して粗野な印象の服を着ていた。正確には黒のタンクトップに迷彩のアウターを羽織り、下半身はだぼっとしたカーゴパンツと編み上げブーツ。耳には銀のイヤーカフが付いている。俺は絶対に着ないし似合わないミリタリーチックな服だが、悔しいかな、彼にはしっかりと似合っていた。上背うわぜいでは俺が確実に勝っているが、筋肉量では負けているかもしれない。もっと鍛えるか。

冴木は可香谷の分も料金を支払おうとして怒られていた。可香谷は眉間に皺を寄せ、

「貴方に支払わせるほど生活が困窮しているように見えます?」

と言った。彼の口調は厳しいが、何故だか不快感がない。冴木はちょっと笑って首を振り、可香谷からチケット代を徴収した。可香谷は冴木との取引が終わると、全員にこの遊園地の地図兼パンフレットをくれた。さっきいなくなったのはこれを取りに行っていたらしい。…………医者だからだろうか、気が回る奴のようだ。俺は気が回らないから、こういう所を見てやり方を盗まなければ。
可香谷は冴木とほぼ同じ服装だったが、足下が黒いエナメルの革靴だった。

遊沙は俺が前に選んだ、肩に編み込みが入った服を着てくれていた。相変わらず黒ずくめで、俺も今日は黒ずくめだからお揃いだった。胸には俺があげた青い石のペンダントを下げてくれていて、黒い中でワンポイントになっていた。



入場してすぐ何をするかという話になった。冴木は「メリーゴーラウンドはどうか」と言ったが、大の大人、しかも野郎五人で初手メリーゴーラウンドに乗るのはさすがにレベルが高すぎるという観点から却下になった。本人達が良くても周囲の視線が気になるようじゃ楽しめない。冴木的には俺が初めてだから初級から、と思ったようだが、余計なお世話だ。むしろ上級と化している。

ということで、色々協議した結果、まずは無難にジェットコースターに乗ることになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

今日も、社会科準備室で

下井理佐
BL
内気で弱気な高校生・鈴山夏芽(すずやまなつめ)は、昼休みになると誰もいない社会科準備室でこっそりと絵を描いていた。 夏芽はいつものように社会科準備室を開ける。そこには今年赴任してきた社会科教室・高山秋次(あきつぐ)がいた。 新任式で黄色い声を受けていた高山がいることに戸惑い退室しようとするが、高山に引き止められる。 萎縮しながらも絵を描く夏芽に高山は興味を持ち出し、次第に昼休みが密かな楽しみになる。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...