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3.幸せな王子様
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「…ああ、素晴らしい妻と可愛い我が子に囲まれて、私は何て幸せなんだ」
「ええ、私も幸せよ」
昼下がりの四阿でお茶をしながら、生まれたばかりの愛しい我が子を抱きしめるライラ。
( …おかしい、私はこのような耳が頭頂部にある毛むくじゃらの赤子を産んだだろうか?)
「さあ、こっちに来てその子の顔を良く見せて」
「はい、どうぞ…」
(王太子はこの毛むくじゃらが自分の子に見えるのだろうか?私にはクマのぬいぐるみにしか見えないが)
「うん、やはり君にそっくりで可愛い子だよ」
(その人間離れした容姿のぬいぐるみが、私にそっくりだと言うのか?可愛いと言われたのに1ミリも嬉しくない…)
「なあ、エリザもそう思うだろう?」
(エリザとはエリザベートの愛称だろうか?そこは私の名前を呼べよ!)
「…ハハ、どちらかと言いますとセドリック様に似ていると思いますよ?」
(断じて私はあのような毛むくじゃらでなければ、耳も通常の位置にある人間だ)
「よちよち、お父様でちゅよ~!」
(…殴っても良いだろうか?)
「エリザベート様!!」
「ライラ様、何ですか淑女がそのように走ってはしたない」
「今はそれどころではないのです!」
学園の渡り廊下でエリザベートを見つけたライラは、大声を出して駆け寄る。
「エリザベート様、セドリック様のあれは一体何ですか!?」
「あれと言いますと?」
「クマのぬいぐるみをご自身の子どもだと言い、私をエリザベート様の愛称で呼び、あまつさえ物言わぬ綿の塊に赤ちゃん言葉で喋りかけるあの行為ですよ!!」
エリザベートは一瞬目を見開いて、すぐにライラに哀れみの目を向けた。
「そうですか…殿下のあのご趣味の、お仲間であると判断されてしまったのですね」
「趣味?仲間?」
「ライラ様はセドリック殿下の、その…おままごとのご趣味の…えっとお仲間であると見なされたと申し上げたのでございます」
エリザベートは珍しく、歯切れの悪い言葉でライラに説明をした。
「何で!?私はそのような趣味はありません!!」
「しかし、殿下も何のきっかけも無しに判断なさったりはしませんよ?」
どうして自分におままごとの趣味があると、判断したのか。
憤るライラに対してエリザベートが告げる。
「そんな、ままごとが趣味だなんて会話は一度も………!!」
無いと言いかけた瞬間ライラは思い出した、セドリックの言っている内容を良く聞かずに返事をした事があると。
「…どうしましょう、エリザベート様何とかして下さい!!」
「…残念ですが私にはどうする事も出来ませんよ。私は何度も申し上げたでしょう?セドリック殿下に言い寄るのはお止めになって下さいと、私の想像通りの結果になってしまいましたね…」
(平穏な学園生活を送りたいのなら、セドリック殿下に言い寄るな…あれはそういう意味だったのか!)
「それと追い討ちをかけるようで申し訳ないのですが…殿下にご趣味の仲間と見なされたら、卒業するまでおままごとに付き合わされますよ?」
「!!」
昔とある令息がセドリックに取り入るために、「ままごと趣味」に理解があるふりをして近寄った事があったのだ。
その令息はセドリックに「仲間」と判断され、毎日毎日ままごとに付き合わされた。
今更「違う」とも言えず日に日にやつれていく令息、そして学年がかわると同時に「留学」を理由に学園を去ったのだ。
中途半端な年齢での留学であったため事情を知るほとんどの人間はこう思った…
『あいつ逃げたな』…と
この令息がエリザベートの忠告を聞かなかった結果、泣く泣く学園を去った生徒である事は言うまでもない。
そしてライラはエリザベートが予想した通り、これから卒業までの約2年10ヶ月の期間、セドリックとままごとをする破目になるのであった。
「ええ、私も幸せよ」
昼下がりの四阿でお茶をしながら、生まれたばかりの愛しい我が子を抱きしめるライラ。
( …おかしい、私はこのような耳が頭頂部にある毛むくじゃらの赤子を産んだだろうか?)
「さあ、こっちに来てその子の顔を良く見せて」
「はい、どうぞ…」
(王太子はこの毛むくじゃらが自分の子に見えるのだろうか?私にはクマのぬいぐるみにしか見えないが)
「うん、やはり君にそっくりで可愛い子だよ」
(その人間離れした容姿のぬいぐるみが、私にそっくりだと言うのか?可愛いと言われたのに1ミリも嬉しくない…)
「なあ、エリザもそう思うだろう?」
(エリザとはエリザベートの愛称だろうか?そこは私の名前を呼べよ!)
「…ハハ、どちらかと言いますとセドリック様に似ていると思いますよ?」
(断じて私はあのような毛むくじゃらでなければ、耳も通常の位置にある人間だ)
「よちよち、お父様でちゅよ~!」
(…殴っても良いだろうか?)
「エリザベート様!!」
「ライラ様、何ですか淑女がそのように走ってはしたない」
「今はそれどころではないのです!」
学園の渡り廊下でエリザベートを見つけたライラは、大声を出して駆け寄る。
「エリザベート様、セドリック様のあれは一体何ですか!?」
「あれと言いますと?」
「クマのぬいぐるみをご自身の子どもだと言い、私をエリザベート様の愛称で呼び、あまつさえ物言わぬ綿の塊に赤ちゃん言葉で喋りかけるあの行為ですよ!!」
エリザベートは一瞬目を見開いて、すぐにライラに哀れみの目を向けた。
「そうですか…殿下のあのご趣味の、お仲間であると判断されてしまったのですね」
「趣味?仲間?」
「ライラ様はセドリック殿下の、その…おままごとのご趣味の…えっとお仲間であると見なされたと申し上げたのでございます」
エリザベートは珍しく、歯切れの悪い言葉でライラに説明をした。
「何で!?私はそのような趣味はありません!!」
「しかし、殿下も何のきっかけも無しに判断なさったりはしませんよ?」
どうして自分におままごとの趣味があると、判断したのか。
憤るライラに対してエリザベートが告げる。
「そんな、ままごとが趣味だなんて会話は一度も………!!」
無いと言いかけた瞬間ライラは思い出した、セドリックの言っている内容を良く聞かずに返事をした事があると。
「…どうしましょう、エリザベート様何とかして下さい!!」
「…残念ですが私にはどうする事も出来ませんよ。私は何度も申し上げたでしょう?セドリック殿下に言い寄るのはお止めになって下さいと、私の想像通りの結果になってしまいましたね…」
(平穏な学園生活を送りたいのなら、セドリック殿下に言い寄るな…あれはそういう意味だったのか!)
「それと追い討ちをかけるようで申し訳ないのですが…殿下にご趣味の仲間と見なされたら、卒業するまでおままごとに付き合わされますよ?」
「!!」
昔とある令息がセドリックに取り入るために、「ままごと趣味」に理解があるふりをして近寄った事があったのだ。
その令息はセドリックに「仲間」と判断され、毎日毎日ままごとに付き合わされた。
今更「違う」とも言えず日に日にやつれていく令息、そして学年がかわると同時に「留学」を理由に学園を去ったのだ。
中途半端な年齢での留学であったため事情を知るほとんどの人間はこう思った…
『あいつ逃げたな』…と
この令息がエリザベートの忠告を聞かなかった結果、泣く泣く学園を去った生徒である事は言うまでもない。
そしてライラはエリザベートが予想した通り、これから卒業までの約2年10ヶ月の期間、セドリックとままごとをする破目になるのであった。
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