婚約者のいる殿方を横取りした令嬢の末路

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「きゃっ！」
「あら？リリー様いましたのごめんなさいね、存在感がなさすぎて気付きませんでしたわ」
「…いえ大丈夫ですよマドレーナ様」
 ぶつかって転倒させておきながらこの言葉、最近ではマドレーナのリリーに対するこのような態度は日常になりつつあった

 リリーが友人と会話をしていると態々割って入ってチクチク嫌味を言う、リリーの私物を隠す、事実無根の悪質なリリーの噂を流す、最早イジメである

 リリーは成績優秀で大人しい令嬢、マドレーナの嫌味に対しても気にする様子もなく笑顔で流していた
 しかし嫌味に関してはリリー本人が気にしていないのなら問題にならなくてもそれ以外の行為は犯罪に近い
 マドレーナの思考ではリリーは恋人を横取りした悪女で、自分がしている事はちょっとした制裁だから何の問題も無い
 自分は運命の相手を奪われた悲劇のヒロインなのだと信じて疑わないのであった

 悲劇のヒロインは寧ろリリーなのだがマドレーナの思考が読めるわけもなく、リリーに対して突然高圧的な態度になった彼女にクラスメート達は困惑するのであった

 リリーは誰に対しても優しく礼儀正しい令嬢なのでマドレーナの流した悪い噂を信じる者はいない、クラスメートは何度もマドレーナを注意したり咎めたりしたが聞く耳を持つわけもなく不穏な空気が流れる教室

 何とかしたいところだが当のリリーがマドレーナを庇うため手が出せない状態だった