婚約者のいる殿方を横取りした令嬢の末路

弥生

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アリスティア視点

 ある日曜日の昼下がりブランケンハイム邸のテラスを忙しそうに行き来するメイド達
「みんなお疲れ様、もう準備は出来たかな?」
 そんな中銀髪の青年がメイド達に声をかけた

「あっアリスティア様、はい問題ありません、ちゃんとリリー様のお好きな紅茶の茶葉も用意しておりますよ」
「そうか、ありがとう」
「アリスティア様、リリー様に早くお会いになりたいのですね、来られるまでまだ1時間もあるのにソワソワなさって」
 アリスティアが幼い頃からいる最年長のメイドが茶化す
「…そんなに態度に出でいたかい?父上に浮かれているとか言えないな」
 そう言って少し恥ずかしそうに目をそらすアリスティア、このメイドには考えている事を全て読まれているような気がして仕方がない

「…ですが本当にお茶菓子を用意しなくてもよろしかったのですか?」
「ああ、リリーがケーキを作って持って来てくれる、みんなの差し入れ分もあるって言っていたよ」
「本当ですか!私リリー様のお菓子大好きなんですよ」
 甘い物が好きなメイド達が色めき立つ、リリーの作る菓子は店で売っていても不思議ではない出来栄えで使用人達にも評判だ
 伯爵令嬢として生まれていなかったらそちらの道に進んでいたのかも知れない

「ほら、みんなおしゃべりは後にして仕事に戻りましょう!」
 最年長のメイドが後輩のメイド達に次の業務の指示を出し退出して行った
「それではアリスティア様、何かあればお呼び下さい」
「ああ、ありがとう」

 メイド達がそれぞれの仕事に戻った後この半年で起きた事を思い出す
 リリーとティアゴ公爵令息との婚約の話、ユング公爵家の圧力にフェルマー伯爵家は逆らう事が出来ずなかば強制的にリリーは彼の婚約者となった
 アリスティアはこのとき程後悔した事は無かった、一人前になってからリリーに求婚をしよう等と自身に言い訳を作って今まで行動を起こさなかった事を
 幼馴染としての立場にあぐらをかいていた事を思い知らされたのだ、幼馴染は付き合いの長いだけの友人で恋人と言うわけではない事くらい分かっていた筈なのに…

 ところがティアゴ公爵令息に恋をする1人の令嬢の行動によってリリーと彼の婚約は解消になった、婚約者のいる相手にも形振り構わずアプローチをするバイタリティ
 その令嬢の行いは決して褒められたものではないけれどその行動力の十分の一でも自分にあればあのような後悔はしなかったのだろうか?

 そして今度こそ後悔はしたくないと玉砕覚悟でリリーに告白をしたのだ、嬉しそうに照れながら『私もアリスティア様の事をずっとお慕いしてました』と受け入れてもらえてからもうすぐ2ヶ月になる

 そう言えばティアゴ公爵令息を横取りする形で婚約者になった令嬢はマドレーナと言う名前だったのか、大規模な行事で見かけた事はあったが会話をした事が無かったため名前も知らなかった
 初対面の頃からやたら怖い目で睨み付けてくる令嬢
 何か失礼な事でもしてしまったのなら謝罪しなくてはいけないと思ったが嫌いな相手に話かけられるのはその令嬢の苦痛になるから止めた方が良いとさっきのメイドに言われたのだ
 会話をしたのは国王陛下に婚約の報告に行った時が初めてだった、私の名前を聞いて驚いた顔をしていたけれどどうかしたのだろうか?

「アリスティア様、リリー様がいらっしゃいましたよ」
「ああ、今行く」
 色々と考えているうちに時間が経っていたようだ、今度リリーにお菓子の作り方を教わって一緒に作ってみようかな?
 そうすれば少しでも長く時間を共有できる、そんな事を考えながら最愛の婚約者を出迎えに向かうのだった
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