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第5章 つかの間の休息
第66話 暗殺者の処遇
しおりを挟む「あ、リクトさ~ん!」
食事室にて、暫く座り込んでいたらメサにメイカ、その他もろもろが入って来た。
メサもメイカも表情は晴れやかで、無事に真っ当な職業に就けたのを示している。
後からリーナと悠と一緒に入って来たカトラは……どうやら上手くいかなかったらしく、表情が曇っていた。
カトラに事情を聞こうと立ち上がろうとした時、メイド服姿のままのカレナさんが真剣な表情でこっちに来た後、背を向けて口を開いた。
「……彼女は《リオヌス》の王位継承者なんだろう?そればかりは我々では対象しかねる。正式に《リオヌス》から令状を貰わぬ限りはな」
「なら、俺が《リオヌス》にーー」
「それは賛同しかねる。今《リオヌス》は安全とは言えない。……そんな場所に行くのを見過ごすほど私は薄情ではない」
カレナさんはそれだけ言って部屋を出て行った。カレナさんが俺の事を考えてくれたのは意外だったが、簡単には引き下がる訳にはいかない。
もちろん、今すぐ行くほど馬鹿ではないので、タイミングを見計らおう。それに、もっと力をつけないとな。
「……あれ?そういえばくるみは?」
本当に今更だと思うが、くるみに梶木が居ない。梶木は正直どうでも良いが、くるみは確かお嬢様と親しかったはず。
「それなんだけどね、どうやら学校に行ったらしいの」
「…………は?」
学校?この世界にも学校はあるかもしれないと思っていたが、そこに行った?何故?
「あぁ、言い方が悪かったかな?テイマーって珍しい職業らしくて、そのテイマーを確実に育成するための学校に行く事になったらしいよ」
「そうだよね?」とお嬢様が間宮に聞くと、普通に頷いた。どうやら本当らしい。
「くるみちゃんが志願したんだよ。まあ、学校の方が安全だし、仕方ないよね」
「ま、まあ。確かにそうかもしれないが……」
間宮が肩をすくめるのを見ながら、あの引っ込み思案なくるみが学校でやっていけるか、不安になるが……安全を考えたら妥当だな。最も、戦闘になれないままになると思うが。
「因みに梶木くんはみんなが居た任務先に残ったらしいよ」
「ふーん」
どうでも良い情報を流しながら、今後の事を考える。
これまで通り、任務を受けるのは確定だな。それが一番早く強くなれるだろうし、一応国への建前があるからな。
問題はカトラをどうするかだ。
「……置いて行くのが良いよな」
「私たちは?」
「…もちろん、お前たちも置いていく」
俺の独り言に混ざってきたメイカに呆れるように言い捨てると、頬を膨らませて不満げな顔になる。
「そもそもお前たちは真っ当な職業に就いたんだろ?なら、俺やお嬢様に関わる必要がーー」
「ジャーン!」
俺が言い終えるより前に突き付けられた一枚の紙。少し腹立ちながらも、その紙を奪うように取って内容を読む。
メサ並びにメイカは陸人及び朱音の任務を円滑に遂行させるための補助として、永久的に専属の御者へと任命する。
「……はい?」
「ふふん。つまり、私たちからはもう離れられないってこと」
「「またよろしくお願いします」」
いつの間にか来ていたメサと一緒に頭を下げたメイカ。国王からの令状がある以上、これを無視したら俺が悪い事になる。
「…ああ、分かったよ。またよろしくな」
「はい!」「よろしく!」
嬉しそうに返事をするメサと元気に返事をするメイカに、もう何も言う事は無く、諦めたように座っておく。
「え?また一緒なの!?」
「はい!そうなんです!!」
地味に聞いていたお嬢様が混ざって、俺の目の前で女子3人が楽しく飛び跳ねながら円を描くように手を繋いでいる。
思わず視界をズラすと、その先に丁度巧が居て、何やら口パクで言っている。
『さ い こ う だ よ な こ の こ う け い』
……不純な目をしている巧にお嬢様たちの足を掻い潜るように毒針を放つと、意外にギリギリで避けやがった。だが、気を改めさせるには十分だったようで、すぐに悠の下へと逃げるように行った。
「良かったね!また4人だよ!!」
「……ええ、そうですね」
俺が毒針を投げていたなんて、知る由も無いお嬢様が無邪気な笑顔で振り返った。そんな笑顔に惹かれたなんて、死んでも言えない。
俺は至って平然と返事した。
その日は結局、飯を食べただけで終いとなった。もちろん、どんちゃん騒ぎは起こったが、誰も怪我をする事なく、風呂も終えた俺は懐かしい部屋にあるベットに寝そべっていた。
今思えば、俺たちは異世界にいる。『地球』とは違い、危険が蔓延る危険な世界。
でも、笑顔があり、楽しみがある。こんな世界だからこそ、『地球』では見れなかった、大人数で楽しんでいるお嬢様の顔を見れた。
だから、余計にこの世界に肩入れしてしまう。こんな職業に縛られた、自由があって無いような世界に言いようのない憤りを覚えてしまう。
ミスラとか言う女神。あいつにもう一度会って、これまで俺が感じた嫌な部分を全て修正させてやりたい。
『……それは不可能です』
急に響いた女性の声に、俺はベットから飛び上がり、刀を構えて姿勢を低くする。だが、この部屋の侵入者への警戒は無意味だった。
俺が寝そべっていたベットのすぐそば、出入り口に至るまで、どこにも侵入者らしき者が居ない。
『それもそのはず、私はあなたの頭に直接話しかけてきているのですから』
清楚で大人らしい声が、俺には忌まわしいビッチのような声に聞こえるが、それを防ぐ手段を俺は持ち合わせていないので、諦めて刀をなおす。
「一体何の用だ?今の今まで全く影を見せなかったくせに」
『酷い言い様ですね、こちらも忙しかったと言っておきます』
神とやらは大した力をお持ちのくせに、忙しくなるんですね~。
どうせ、これも聞こえているんだろうから、少し嫌味のように言っておく。
『私は正確には神では無く、戦乙女。神への手続きは滞りなく進んでいるので神になるのは時間の問題ですが……そこは一応言っておきます』
「そうですか、で?何の用ですか?」
こっちから何も出来ないのなら、こんな奴とは長く話したく無いので、さっさと本題に入る。
『要件は至ってシンプルです。魔王討伐を一刻も早く進めてください。魔王はこの世界の癌です。早く取り除くべきです』
と、言われてもなー。俺はまだ魔王が何をやっているのか、魔王の討伐の必要性も知らないと言うのに。
『……とにかく、早くお願いします』
少し怒ったのか、吐き捨てるように言ってそれっきり声が途絶えた。
……それにしても、いきなり何だったんだ?魔王は確かに、害があるかもしれないが、今のところは魔王と言うより、魔物や暗殺者集団の方が対象すべきだろう。
……何にせよ、国王からの任務をこなそう。それが一番の近道で、堅実な道だろう。
…俺たちは『地球』に帰る事が出来るのだろうか?魔王を倒したとして、あの女神は俺たちを帰す手段を持ち合わせているのだろうか?
『20歳になったら、全てを話そう』
旦那様が俺たちが高校へ入学した日に告げた言葉。お嬢様も知らない"何か"を俺とお嬢様は知らないといけない。それまでに帰る事が………。
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