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第7章 選定戦争
第100話 テイマーの成長
しおりを挟む王城まではどんなに急いでも3日はかかるらしい。いくらドラゴンとなったトゲちゃんでも3日間飛びっぱなしは無理なので、途中に街へ寄ってそこから出ている定期便の馬車に乗る事にした。
トゲちゃんに1日乗って、馬車で1日、トゲちゃんに1日乗る形で向かう事になった。
「もう暗くなってきたね…」
ずっと空を飛び続けておしゃべりしていたけど、もう日が落ちかけていた。
「街の明かりが見えるからそこに行こうか、トゲちゃんお願いっ」
くるみちゃんの指示を的確に聞き、速度を落としながら徐々に高度を落としていく。
「そういえば、トゲちゃんはどうするの?この大きさじゃ街には入れなさそうだけど……」
「そこは大丈夫だよ。そ、それよりも……門番の人とかの対応を……頼んでもいい?」
どうやらくるみちゃんは街の人と話すことの方が気になるみたい。
「うんっ、任せて!」
「ーーって事があって、今歩いて王都まで向かっているんですよ…」
「それは大変だったろうに…………ほらっ、気持ちばかりの金貨だが、これで良い宿に泊まりなさいっ」
渡されたのは3枚の金貨。明らかに3人分の宿代としては豪華。
「そ、そんな受け取れませんっ」
「いや、俺が渡したいんだ!受け取ってくれっ」
無理に渡された金貨を握りしめ、こんなに心優しい人がいる事に感動して不覚ながらも涙が滲み出るのを抑えながらお礼を言い、みんなと門をくぐった…。
「で、どういう風に考えたら俺らが孤児になるんだ?」
若干怒っている巧くんは、地上に足を置ける事が嬉しくて元気になっている。
「だって、こんな夜遅くに馬車も無しに街に入る人とか怪しいと思わない?なら、王都に出稼ぎに来た孤児にすれば納得してくれるかなって」
私たちは格好こそ普通、いや上等なモノになるけど、それだけじゃ身分は証明出来ないし、陸人が持っていた勇者の証明書はスキルが使えないらしいから取り出せないし……。
「朱音ちゃんって……お芝居上手だったんだね」
「えっ?そ、そう……?」
くるみちゃんに褒められてつい照れちゃう。
「チィィチィィ!」
そんなくるみちゃんに同調するように、くるみちゃんの頭に乗ったヒヨコのような大きさになったトゲちゃんは鳴く。まさか、大きさを自在に操れるなんて……テイマーって不思議だな~。
「孤児に見られるどころか、憐みの目で見られるなんて……」
巧くんはまだ怒っているみたいだけど、門番の人が信じてくれたのは巧くんのおかげでもある。
長い慣れない空の旅で完全にグロッキーになった巧くんを私とくるみちゃんが肩を貸して歩かせて門まで行ったから、男がグロッキーになっても一緒に王都を目指す健気な子供たちと見られて、助ける意味も込めて街へと入れてくれたんだと思う。
………まあ、女の子に助けてもらっている、男として情けない奴と巧くんの事を思ったのはあるだろうけど。
「まあ今日は宿に泊まって、明日王都の近くまで行く馬車を探そう!」
「おー!」「お、お~…」
私の掛け声に元気よく声を上げた巧くんと恥ずかしそうにするくるみちゃんと共に宿へと向かった……。
「じゃあ、出発しますよ~」
「「はーい」」
無事に見つけた宿に泊まって、朝早くから馬車を探してまだ人の少ない馬車へと乗り込む事ができ、出発出来た。
一応この街を出る前に金貨をくれた門番さんに、余った金貨2枚を返しに行ったけど、持っておいてほしいと言って聞かなかった。
出世払いしに来てくれたらいいと言ってくれたあの門番さんはとても優しい人だ。王城の問題が解決したら、国王から金貨をもらって門番さんに渡しに行こう。
私たちの他にも人は居るけど、護衛と思われる背中に大剣を担いだ顔に傷だらけの男の人と、まだ幼い女の子に絵本を読み聞かせている若々しさのあるお母さんだけ。
おしゃべりしたいけど他の人が居る手前、うたた寝をしたり小声で少し話す程度しか出来ない。
巧くんは護衛の人と同じく大剣を使うからか、ずっと対抗意識があると言わんばかりの目で護衛の人を見つめている。それを気にもせず、目を瞑って大人しくしている護衛の人は大人の余裕があるみたいな感じ。
歳も30は行ってそうだし…。
…………ふと、ナハリヤのドラゴンと一緒に戦ってくれた門番さんを思い出す。
死んだような報せは聞いてないけど、あのミスラ様と相対して無事でいるはずもない。
…………門番さんが死んだ理由は私にあったのだろうか?もし、あの日にナハリヤのところにいかなければ…陸人を優先して行かせれば……。
陸人もあんな事にはならなかったのかもしれない…。
「魔物だ!頼みますっ!」
馬車が急停車し、後ろの扉を勢いよく御者さんが開ける。護衛の人が腰を上げて馬車を降りる前に降りた。
「何やってるんですかっ、お客さん!危ないですからーー」
「………"フリーズアウト"」
御者さんの言葉を遮るように、いつの間にか周囲を囲っていた猿や鹿の魔物を凍らせる。
芯まで凍った魔物は音を立てて砕け散る。
「……あんた、何者だ?」
護衛の人が馬車へと戻ろうとした私の前に立ち塞がる。
「何者って……まだ不出来な勇者としか言えません」
一方的に言い放ち、馬車へと戻って膝を抱える。
……………陸人があんな事になって、くるみちゃんと久しぶりに再開して、不安だけどそれを悟らせないように気丈に振る舞っていたけど、こうして自分をゆっくりと見つめ直す時間が………嫌なことばかり思い出させる。
「…………あ、朱音ちゃ……」
くるみちゃんは声をかけてくれようとしたけど、すぐに黙り込んでしまった。
…魔物に当たり散らかして……らしくないなぁ……私。陸人が居たなら、この気持ちが少しは和らいでくれるのかな…。
その後、馬車は止まることなく日が落ちて来ている辺りには街へ着いた。その間、馬車の中を変な空気にしちゃった………。
今日はトゲちゃんに乗って王都へと向かう。あれから、街の宿に着いてから努めて普段通りに接したおかげで、巧くんもくるみちゃんも普通に接してくれた。
「いつぐらいに着くの?」
「うーん……昼を超えた辺りには着きそうだけど…向こうに着いた時にはトゲちゃんは疲れ切っちゃうな」
くるみちゃんはトゲちゃんの心配をしての発言だと思うけど、王城は今攻め込まれている。
そんな中でトゲちゃんは強い戦力になると思うし、向こうでしっかりと戦える為にも無理はしない方が良さそう。
「じゃあ、休憩挟もっか。トゲちゃんに無理ばかり強いるのも良くないし」
「そうしてくれると嬉しい!ありがとう!朱音ちゃんっ!」
私たちは今、空を高速移動しているのに思いっきり抱きついて来た。
体が反りそうになったけど、体幹を意識して堪える。
トゲちゃんがゆっくりと降下していくのを見て、密かにホッとしている巧くんは未だに空の旅には慣れていないみたい。
「……あれ?もしかして……人じゃない?」
くるみちゃんが降下地点を決めるために地面を見ていたら、何かを見つけたみたい。
気になって下を見下ろすと確かに人……が集団になって歩いている……。
「どこかに向かって大移動しているのかな?」
「うーん…どうだろーーっ!!」
降りる時にこの集団を巻き込まないようにしないとか考えていたら、急にトゲちゃんが身をよじり急上昇する。
「いやぁぁぁっ!」
「うっ…!トゲちゃん!あの人たちが攻撃してきたんだねっ」
巧くんが情けない声を上げる中、トゲちゃんと意思疎通が出来るらしいくるみちゃんが大きな声で、頼もしい声でーー
「攻撃して来たのはあっちなんだから!トゲちゃんっ、やるよ!」
「ガァァアッ!」
甘えた時の声とは全く違う、本気で威嚇しているドラゴンらしい声を上げて地上の敵を正面に据えるトゲちゃんと………旋回とかの激しい動きをモノともせずに立ち上がってトゲちゃんと同じ視線を向けるくるみちゃん。
「朱音ちゃん、見てて。私も強くなったんだからっ」
くるみちゃんが腕を振り上げるのと同時にトゲちゃんは口に巨大な炎の魔法陣を組み上げていく。
魔法使いという職業を持っているからこそ分かる、人の身では到達出来ない荒々しくも緻密な構成で組み上げられた魔法陣はトゲちゃんと同程度ほどの大きさへと広がり構築を終えた。
「燃え尽きて!」
くるみちゃんの声と共に振り下げられた腕。それと連動して魔法陣から一筋の炎が着弾し、地上に火柱を立てた。
ここまで来そうなほど高い火柱は人などついでのように跡形もなく消しとばした。
火花が音を立てて辺りへ雪のように舞い落ちる中、くるみちゃんの顔は前とは比べ物にもならない、強い目をしていた………。
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