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第1章 職業って偉大
第5話 お嬢様との特訓
しおりを挟む俺は廊下を歩く。お嬢様の部屋は俺たち男がまとめられた部屋が並んでいるフロアには無く、反対側にあるので、初めて行く事になるのだが、反対側だという事だけなので意外とサクサクと行けた。
「あれ?どうしてここに陸人くんが居るの?」
部屋が並んでいるフロアで立ち尽くしていると、部屋から出て来たらしい間宮が話しかけて来た。
「ちょっとお嬢様に用事があってな」
「ふーん、用事ね…」
間宮は怪しげに俺を見ていたが、「まあいいかな」と何か変な事を言い残して通り過ぎていった。
間宮とはあんまり接した事が無いから不気味に思ったが、今はお嬢様との話し合いが最優先だ。頭を切り替えて、何パターンか言い訳を考えた後、お嬢様が教えてくれた赤色の縁がある扉をノックする。
ーコンコン
「どうぞ~」
お嬢様の間の少し抜けた声を聞き、「失礼します」と言ってから部屋に入る。
部屋には俺の部屋よりも大きめなベットやトイレ、化粧台が置かれていた。…俺は勇者でも戦闘職でも無いからあの部屋なのか?まあ別に良いけど巧たちもこんな部屋なのに自分だけが少しランクが低いかもと思うと少し腹が立つ。
「…ねぇ、陸人。何をしたの?」
お嬢様はベットに座って心配そうな、怒っているかのような声と目で俺に聞いてくる。俺は調理室で起こった事を余す事無く話した。それを終始何も言わずにお嬢様は聞いてくれた。
「そう、そんな事があったの」
「俺はやった事には後悔はしてませんが、反省はしています。もっと手加減するべきでした」
「そうね、向こうでも自衛隊の人よりも強かったのにね」と少し気を使って微笑んでくれた。ま、実話だけど。
「でも、もう少し会話で解決しようとしてくれるかな?」
「そうですね、申し訳ありません」
俺はいつの間にか会話で解決という向こうで一番やっていた事を忘れていた。この世界に来てから相手を気遣う気持ちが抜けてしまったのかもしれない。
「話はそれだけ。私もあの連中には腹が立ったからねっ、あんま気にして無いよ」
お嬢様はそう言うとベットから立ち上がり、扉をチラリと見ると何かを思い付いたような顔をした。
俺は何を思い付いたのか分からず、首を傾げていると、お嬢様は扉の前まで行き、振り返って言った。
「ちょっと今から特訓しよ?」
「は?何のですか?」
お嬢様は呆れたように肩を落とし、今度は少し強気の目で言った。
「決まってるでしょ!魔法の練習よっ」
「いっくよ~」
お嬢様は手に魔法の一覧が載っている本を見ながら大きな声で俺に呼びかけた。
「いつでもどうぞー!」と大きな声で返して俺は道具作成で作った白手袋をしっかりとはめながら周りを見渡す。周りには俺たちの特訓を観に来た騎士たちにクラスメイトのみんな、そしてお姫様が居た。
お嬢様と俺は100mほど離れあっている。これくらいから俺がどれくらい距離を詰められないようにするかが鍵になる魔法を撃つ特訓だ。
「いっけ~!!」
お嬢様は梶木も撃ってきた拳サイズの火の玉を3つ撃ってきた。それを俺は体を反らして全て躱す。
「今度はこれっ!!」
今度はお嬢様が地面に手をつけると、一本の土の槍みたいなものが飛び出した。それには周りの騎士たちも驚きの声を上げるが、落ち着いて横に飛ぶ。
「そろそろこっちから行かせてもらいますよ」
俺はお嬢様に宣言して走り出す。100mなら10秒でいけるが、特訓なのでゆっくりめに走る。
お嬢様はそれを見て焦って本をめくり始めたのを見て、速度を落とす。
「これならっ」と自信満々に見て、今度は手を突き出して強風を出してきた。
風で飛ばされないように、ゆっくりと足を踏み込みながら歩いている間に次の魔法を用意された。
「これで終わりっ」
お嬢様が決め手として撃ってきたのは炎の龍のような魔法。風で勢いを増した龍は、凄まじい気迫を持っている。
龍を見た騎士たちはもちろん、クラスメイトたち、そしてお姫様も驚きの声を大きく上げている。
「…全くっ、手加減してほしいものだっ」
俺は武器作成で伸縮が強いフックショットを作り、風が吹いていない方に撃ち込み、しっかりと地面に食い込んだのを確認してから縮ませる。
龍が通り過ぎるのを横目で見ながら、お嬢様に近づく。まさか俺が横に避けているとは気づかなかったようで、かなり近づいた所で気づいたけど、もう間に合わない。
「これで終わりましょう」
俺は手刀をお嬢様の目の前に見せて微笑むと、ゆっくりと頷いた。
ードゴォン!
背後で炎の龍がデカイ破壊音を出したのと同時にお嬢様がガクッと膝を折った。
「お嬢様!?」
俺はお嬢様の膝が地面につく前に肩を抱き抱える。お嬢様の息は荒く、少し熱があるようだ。
「失礼します」
俺はお嬢様をお姫様抱っこの形で抱き上げ、炎の龍が生み出した砂煙を避けてお姫様の所へ向かった。
「あ!陸人さんっ!!大丈夫だったんですか!?」
お姫様は俺に駆け寄って来て、抱きかかえているお嬢様を見て納得したような顔になる。
「これは魔力切れの症状ですね、寝たら治ると思いますよ」
お姫様が微笑んでいるのを見て、本当に重大な事では無さそうだ。
「分かりました、失礼します」
俺はお姫様にお辞儀をした後、俺はお嬢様を連れて城内へと入った。
「すげぇ戦いだったな…」
巧くんは冷や汗を頭に滲ませながら、朱音さんが作った人が横たわれる程のクレーターを見ている。
間宮さんも梶木くんも青山くんも、周りにいる騎士たちも度肝を抜いているようだ。
「おい……、あれって"フレアドラゴ"だよな。上級魔法でもかなり上位の…」
「まあ、あの勇者様は魔法使いなんだから、出来ても不思議じゃないよな」
「そうだな、勇者様の職業の魔法使いだもんな」
職業にえらいこだわっているように聞こえるけど、それは当たり前のような気もする。だって僕の頭には彼女を連れて魔王を倒しに行きたいという欲が生まれているのだから。
「…ちくしょう、俺だって」
梶木くんは悔しそうに歯を食いしばり、青山くんも騎士の人たちに指導を受けに行っている。間宮さんは何やらブツブツ呟いている。
「なあ、俺らも特訓しねぇか?」
そんな事を考えている間に巧くんが特訓のお誘いをして来た。巧くんの職業は戦士。きっと僕と一緒に魔王を倒す時に重要になってくる職業だろう。
「良いよ、負けてられないしね」
僕は心の中でスキルオープンと唱えた。するとスキル一覧が視界の左端に表示される。
スキル一覧
・聖剣適正 ー聖剣を扱える
・浄化魔法適正 ー浄化魔法を扱いやすくなる
・精霊契約権 ー信頼関係のある精霊と契約出来る
・職業適正 ー魔の敵に対してある程度能力が向上する
・勇者 ー身体能力や魔力の基礎値が高くなる
このスキルたちがあれば、きっと陸人くんも超えて魔王を倒せるだろう。
僕は巧くんを連れて近くの騎士の人たちに特訓の申し出をした。
これから僕は強くなろう。誰よりも強く。
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