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第1章 職業って偉大
第6話 勇者とテイマーの特訓
しおりを挟む「…これで良いかな」
「はい、後は私が見るので…」
俺がお嬢様をベットに寝かせると、あの場に唯一居なかったくるみが小さな声で言った。くるみはお嬢様が居ないとあんまり素を出してくれないからなー。
「お嬢様の事はお願いしたいところなんだけど、お前もみんなに混ざって特訓した方が良いんじゃないか?」
俺がそう言うと、傷付いたような目で見てくる。よっぽどお嬢様の事が気になるのか、それとも一人で行くのが怖いのかは分からないが、お嬢様の面倒は俺が見たい。ので、適当な理由を付ける事にした。
「お嬢様の事は俺に任せて、さっさと行った方が良いぞ。お姫様がこれからみんなを集めて訓練をするって言ってたからな」
「……え、ほんと?」
俺が肯定してやると、顔を青ざめて急いで部屋を出て行った。大方、訓練に出ないと何かしらの罰を受けると思ったのだろう。ま、これで二人きりになれたから良いんだけどな。
「……本当に知恵が働くのね」
「知恵が働かないと執事としては半人前になるので」
紅葉さんに言われた事を言うと、お嬢様は辛そうにしながらも笑った。
「今はゆっくり休んで下さい。特訓はまた今度にしましょう」
「そうだね、ちょっと今日は辛いな」とお嬢様は苦笑いをし、スッと寝てしまった。
俺は道具作成で水枕を作り出し、部屋にあった魔力を必要とする蛇口から水を枕に入れて、金具をしっかり締めた後にお嬢様が今使っている枕と瞬時に入れ替える。
「後はお粥を作ろうかな」
もうすぐ昼頃になる。俺はお粥を作る為に調理室へと向かった………。
「いや~、キッツイなオイッ」
目の前で息を荒げ、地面に寝っ転がっている巧くんを見ながら、騎士の人から借りた剣を鞘に収める。
周りを見渡すと、顔色を悪くして座り込んでいる梶木くんと間宮さん、巧くんと同様に息を荒げている青山くん、そして騎士の人が監督している中でひたすら何かの魔法を馬にしているくるみさんが居た。
「はぁ、はぁ、何でっ」
「職業がテイマーなのに出来ないという事は相性が悪いのかもしれませんね」
そう、くるみさんの職業はテイマー。レベルが高い人ならドラゴンも従える事も出来るらしいが、低い人だとそこらの犬ぐらいが限界という、最も差が激しい職業らしい。
「次は小型のワイバーンにしましょう。ワイバーンの方が難しいですが、こればっかりは相性なんで」
「あ、ははい」
騎士の人に戸惑いながらも、くるみさんはついて行く事から諦めて居ないのだろう。最も争い事が苦手そうなくるみさんがまだ頑張ろうとしているんだ。僕ももっと頑張らねば。
「よし、次行ってみようか」
「え!?無理無理っ!他の人に頼んで~!!」
巧くんは首を激しく横に振って断った。仕方ないけど、騎士の人たちにお願いしよう。
「あの~、宜しければ一本お願い出来ませんか?」
「ええ、良いですよ。ただし、俺は少し強いですよ」
ちょっとでも好戦的な人の方が僕も強くなれるだろう。
「はい、構いません。ではっ、いきますっ」
俺は騎士の人が剣を構えたのを確認した後、勢い良く剣を携えて駆け寄った。
「はあっ!」
「はっ!」
僕の渾身の上段からの振り下ろしを剣を横にして受けた騎士。その顔は余裕があって、ニヤリと笑った後、徐々に押され始めた。
「くっ……!」
「相手が剣だけ使うと思ったら大間違いですよっ」
騎士の人が僕の剣を跳ね除けた後、がら空きになった僕の腹に蹴りを入れた。
「があっ!」
僕はなす術なく転がり、止まった時にはもう満身創痍だった。
「はぁ、はぁ」
何とか剣を支えに立とうとするけど、足にも腕にも力が入らない。プルプルと足と腕を震わせて騎士の人を見つめる事しか出来ない。
巧くんと騎士の人とではこんなにも力の差があるなんて、思いもしなかった。僕たちは曲がりなりにも勇者だ。勇者らしく騎士よりは強いと思っていたけど、そんな簡単な話じゃないみたい。
「勇者様の中に癒術師の方が居ましたよね?」
「………あ、私です」
騎士の人の呼びかけに顔を青白くしながらも応えた間宮さんは僕に近づいて回復魔法をかけてくれる。
緑色の光が僕の体を包み込み、最も痛みがある腹から徐々に全身の痛みが消えてくる。
「あ、ありがとう。間宮さん」
「………別に、癒術師だからやったまで」
間宮さんはそれだけ言うと、ふらふらになりながらも元いた場所に戻っていった。僕はそれを見届けた後にジャンプやら屈伸なんかをしてみるけど、どこも痛くない。回復魔法ってこんなにも効果があるんだ。
「どうします?まだ続けますか?」
「もちろんです」
せめて、この騎士の人には勝ちたい。僕は軽く地面に刺さっていた剣を抜いてまた向かっていった………。
「ギャァッ、ギャァッ!」
私の目の前に、鎖で繋がれ、首には鉄の首輪を着けられ、太い鉄格子がある牢の中に閉じ込められた小さなドラゴンの様な生き物がいる。
「これがワイバーンです。精々武装していない人1人を運ぶ程度しか出来ませんが、捕獲出来たワイバーンはこいつぐらいなんです」
私は騎士の人の話を耳で聞きながらも、意識は目の前のワイバーンに向いていた。……この子、昔飼ってたカナヘビに似てる。こう、なんかつぶらな瞳とか、雰囲気が。
「えぇと、"私に従え。汝の名を………トゲとする。応えるのならば、頭を垂れて一つ鳴くが良い"」
テイマーが使う魔力消費量が少ない契約魔法を唱える。後はこのワイバーンが頭を下げて鳴いたら……
「………チィー」
トゲをテイムしました。
鳴いた。頭を下げて鳴いた。私の視界の左端に映っているスキル一覧の下にテイムしたというのが書かれているから間違いない!
「あの、今すぐ出してもらえませんか?」
「え………、あっハイ。ただいまっ」
騎士の人は少しだけ硬直していたけど、すぐに後ろにある牢を監視している職員と話に行った。
「これからは私と一緒に頑張ろうね?」
「チィッ!チィッ!」
トゲちゃんは翼をパタパタさせて嬉しそうにしている。これからは私とトゲちゃんで頑張っていく。一人じゃないからきっと大丈夫だよね?
私は鎖を外されていくトゲちゃんを見ながらスキル一覧を見る。
スキル一覧
・テイミング ー魔物や動物と主従契約を交わせる
・契約魔法適正 ー魔物や動物と契約するのに必要な魔法を扱える
・勇者 ー身体能力や魔力の基礎値が高くなる
私にはこれぐらいしかスキルが無いけど、トゲちゃんと一緒だからきっと大丈夫だよね?
私は私のスキル一覧の右横に表示されているトゲちゃんの情報を見る。
トゲ (くるみの契約魔物)
魔法一覧
・火炎魔法 ー"フレアブレス"、"フレアウィンド"
・風魔法 ー"ウィンド"、"ウィンドドライブ"
どれも強そうじゃないけど、私の指導次第で強くなるよね?
「チィッ!チィッ!」
トゲちゃんの魔法を見ていたら、解放されたらしいトゲちゃんが私のところにやって来た。私は膝を折って抱き締める。少し鱗が硬いけどそんなの、関係無い。私の代わりに戦ってくれるんだから、しっかりと愛情を注がないとね。
「さあ、私を乗せて飛べるかな?」
「チィ?チィッ!」
トゲちゃんはやる気満々で外へと出た。私は後から追いかける。
トゲちゃんは少し開けた場所で頭を垂れて背中を見せてきたのは、きっと乗れって言う事かな?
乗ってみると、私の不安とは裏腹に私の腰辺りまでのトゲちゃんは私を乗せてしっかりと安定して飛んだ。
最も、中々下ろしてくれなくて大変だったけど………。
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