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第1章 職業って偉大
第7話 国王の帰還
しおりを挟む「あ~、何で今日はアイツの飯じゃねぇんだよ!」
俺は目の前に置かれたクリームシチューとは程遠い白いスープみたいなのを見て、思わず叫んでしまった。
周りのやつも目の前に置かれたものを見て、気が引けている。ほぼ全員がアイツらの特訓を見て、ここの奴らに相手をしてもらって疲れ果てているのに、こんな飯を食わされるかと思うと嫌になる。
「ま、まあ、陸人さんは朱音さんの看護をしないといけないので、仕方ないですよ。執事という職業になった以上、お嬢様の要素がある朱音さんに仕えるのは当然なんですから」
この国の姫さんであるティアナがそう言うんだから、仕方ねぇんだろ。何でも、この世界では職業が強い力を持っているっぽいしな。
最も、俺には魔法使いとしての意識は無え。ただ、勇者である高野と館山の2人が気に食わねぇから、俺がアイツらに勝つために特訓したまで。
アイツらに勝てたらさっさとこの国を出て良い女をーー
「ティアナ様はいらっしゃいますかっ!?」
あんまり気が進まない飯を食おうとした矢先、1人の騎士が入って来た。それもかなり急いで来たようで、勇者だという高野を軽くあしらっていた奴とは思えないほど息が上がっている。
「何ですか、今は食事中ですが」
「それを承知してのご報告です!たった今、騎士団長様と国王様が帰還されました!」
ティアナはそれを聞いて大急ぎで何も言わずに出て行った。残されたこの部屋に静かな空気が漂う。それを破ったのは高野だ。
「ねぇ、僕たちも行こうよ。これからお世話になる人なんだから、ちょっとでも好印象を持ってもらおう」
高野のこの言葉に騎士の奴が眉をひそめたが、特に何も言ってこない。そういうところもわきまえているのか。
「ま、別に良いんじゃない?」「どっちでもいい~」「わ、私もどっちでも…」
顔は結構好みな間宮はどうでも良さそうに、イケメンで少しムカつく青山も同じように、そして眼鏡は怯えながらボソッと小さな声で言った。その隣には小さなドラゴンらしき奴がいる。
「俺は断然行った方が良いと思う!だって!何かの拍子で勇者をクビになっても困るしな!!」
そう高らかに声を上げたのは、調子者の杉野。何も考えて居なさそうで意外と考えていたらしいな。
「梶木くんは?」
チッ、そんな目で見てくんな。それに、今更俺だけ行かなかったら俺が悪い感じになるだろうが。
「…行くならさっさと行くぞ」
俺は席を立ち、出口へと歩く。出口に着く前に高野が追い越し、扉を広々と開けて先頭を歩く。その横を杉野がついて行っている。
チッ、マジで気に食わねぇ。
「あ、陸人はどうする?」
「どうするも何も、執事なんだから離れられないんじゃない?」
先頭のそんな会話を聞きながら、俺は胸糞悪い気分で廊下を歩いた………。
「何を考えているんだ!お前は!?」
ーパチンッ
年のいってそうだが、まだまだ声に張りのある男の声とまるで頰を打ったかのような音が聞こえた。
「ちょっと走るよ!」
先頭を歩いていた高野が駆け出したので、みんなも後を追いかける。廊下の突き当たりを曲がって、奥に見えた扉を開けると大きな広間に出て、そこから凄く広い玄関が開きっぱなしになっているのが見えた。そこから見えたのは馬を近くに待機させ、酷く憤慨している、廃れた金色の髪がある頭に王冠のようなものを付けた60代くらいの男と、その近くで頰を抑えて涙目になっているティアナが居た。
あぁ!俺が狙っていたティアナに傷を!?許さない!今すぐあの男をーー
と思ったけど、周りに多くの騎士たちが居るのを見て、諦める事にした。自分の身の危険を冒してまで守りたいとは思えなかったからね。仕方ないと諦めよう。
そう思っていた俺と真反対の事を高野はした。
「やめろっ!か弱い女の子に何をやっているんだ!?」
高野は武器も持っていないのに、ティアナを守るように男とティアナの間に割り込んだ。良いぞ!そのまま、ティアナを連れて来い!
「なんだ貴様………ああ、お前がティアナが呼んだ勇者か?」
「そうだ!お前は何者だ!?」
男に敵意むき出しで大声を上げる高野。何者だ?って、頭に王冠付けて、ティアナが逃げようとしない、多くの騎士を連れてる人なんてそんなの国王ぐらいしか居ないと思うんだけど。
「見てわからんか?俺はこの《グレアノス》の国王、ディラスだが?」
ほらやっぱり。国王様も周りの騎士たちも凄い目で見てるよ。早く謝った方が良いんじゃーー
「あなたが国王か!?なら何で自分の娘であるティアナさんを!?」
高野が問いかけると、途端に顔をしかめて全身から殺気を出した国王。俺たちは急に訪れた殺気に息を呑んだ。高野も黙り込んで薄っすら汗を滲ませている。
「お辞めください、ディラス様。そんなにも殺気を出されると、部下たちも震え上がってしまいます」
重い殺気を搔き消すように、騎士たちを掻き分けて来たのは1人の女性。だけど、ただの女性じゃなかった。
着けている鎧には何個かの勲章のようなものがあり、腰にぶら下げている剣は、鞘と柄しか見えないけど、高級感と使い込まれた年季を感じる。そして、銀色の髪を後ろで玉にして結い、キリッとした顔の20代くらいの女性。
顔は好みだけど、絶対性格は真面目なのでパス。
「この者らは私が処分致しますので、お下がりください」
急に言われた死刑宣告に、俺らは固まっていた体に電気が通ったように、各々が構えのようなものをとる。
「待ってください!この人たちは私の独断で呼んだんです!だから、この責任はーー」
「黙れぇ!」
図太くて、覇気のある声にティアナは涙を流すも黙り込んでしまう。高野はこっちに戻ってきたけど、騎士の人たちでも敵わない俺たちが騎士団長らしきこの人と戦えるのか!?
「本当に良いんですか?」
騎士団長らしき人の後ろに現れたのは、女の人ほどじゃないけど、それなりに勲章が鎧に付いている男。
若々しさが出ていて、年齢は女の人と同じくらいだろうか。焦げ茶色の髪で、背中に背丈ほどある大剣を背負っている。
「問題ない。魔王は私が倒すのだから」
エメラルド色の目が俺たちを鋭く睨んだ瞬間、女の人はもちろん、男も後ろへ飛び退いた。その直後に上から一本の刀が落ちた。その刀を中心に地面が軽くひび割れる。
「おい、喧嘩は結構だが、もう少し声を抑えてもらえないか」
この緊迫した空気に、怒りが込められた低い声が通った。そして、上から飛び降りて来た男は、地面に刺さっている刀を抜き、肩にもたれさせながら、言った。
「お嬢様の部屋が玄関から近い方にあるんだよ。お前らが騒ぐとお嬢様がゆっくり寝れねぇじゃねぇか」
怒りを隠しもしないその堂々とした後ろ姿。勇者では無い、館山陸人が2人の騎士を見据えている。
「……陸人…さん…」
「ティアナ様、何があったかは後で伺います。今は目の前の血が上っている騎士団長様と副騎士団長様の相手をしますので」
館山はそう言うと刀を肩から離し、国王に負けない程の殺気を出しながら、言った。
「…少し手荒になると思いますが、ご容赦ください」
執事口調は変わらずに………。
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