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第2章 勇者活動という名の雑用
第21話 勇者、公認
しおりを挟む「……あ~、だるっ」
現在、調理室にて。俺は祝い事とかで、大量の料理を作らされていた。昨日のあの襲撃から次の日に祝い事って。何だよ、そんな空気の読めない祝い事。
「これはオーブンで何分焼けば良いですか?」
「あー、10分くらいで、時々中を見て焦げないように気をつけろ」
「了解です!」
コックの若者に指示を出してから、俺はピザを作るために生地を練る。
……それにしても、国王の一言であんな邪険的な様子だったコックがこうも変わるのか?俺は俺の指示に従順で、料理を楽しそうに作るコックたちを見る。今日の朝、国王直々に料理の事を言われて、その手伝いをするように、他のコックに睨みを効かせながら言ったらこの有り様だ。どんだけ国王に良い顔したいんだよ。
「さて、さっさと片付けるか」
俺はまだ山積みになっている料理の量に嫌気が刺さないように、気持ちを入れ替えてピザの生地を円に伸ばし始めた………。
「……今日、何言われるんだろうな」
昨日の夜中に目を覚ました巧くんが、食事室に向かっている道中にぼそりと呟いた。…確かに、あんだけ意気込んだのに盗賊にやられ、青山くんはどこかへ去った。僕たちを追放するには充分過ぎる出来事が昨日のうちに起きた。
「追放されるかもしれないけど、それはそれで良いんじゃないか?」
僕は自然と口に出ていた。それを聞いて巧くんが僕に顔を向ける。その顔は唖然としていて、まるで青山くんが出て行くと言った時の僕の顔のようだ。しっかりと言わないと不安にさせちゃうかな。
「だって、僕たちがここを離れてもやる事は変わらないじゃないか。僕たちは魔王を倒す為に居るんだ。ここを追放されても、修行場所の中心が変わるだけさ」
それを聞いた巧くんは一瞬何を言われたのか分からないと言いたげな表情だったけど、すぐに笑った。清々しい顔で。
「そうだな!俺たちがやることは変わらないだろうし、かえって青山が言ってたけど、追い出された方が強くなれるかもな」
「サバイバル精神でも付いたりしてな」と彼は不敵に笑った。やっぱり、巧くんならそう言ってくれると思ってたよ。流石は戦士。勇者をいつでも支えてくれる………。
「お、もう居たのか」
大きな机がある部屋、食事室へと入ると既に梶木くんとくるみさん、間宮さんに朱音さんが居た。陸人は多分朝食の準備でもしているのかな?
「……チッ、こんな時間に呼び出してまだ来てねぇのかよ」
朝から不機嫌そうな梶木くんは、国王様やティアナ様の部屋へと繋がる扉へ向かって唾を吐きながらボヤいた。それを見て、くるみさんは震え、朱音さんが青筋を浮かべて立ち上がろうとする。それを手で制して、僕は梶木くんが座っている椅子の横に立つ。
「僕たちはそんな事出来る身分じゃない。国王様に対して失礼だ。テーブルに載ったその唾を拭いて」
「あ?何でテメェが指図するんだよ、雑魚のテメェが」
「雑魚」という言葉に反応してしまう。確かに僕は弱いだろう。けどーー
「君ほどじゃないよ。誰も倒していない魔法使い」
「っ!?もういっぺん言ってみろっ!!口に火の玉ぶち込んで内側から焼いたるぞ!」
僕の胸倉を掴み、左手に火球を作り出した梶木くんを見て、落胆してしまう。その魔法は遠距離に使うもの。そんな至近距離で使うものじゃない。
僕は足を振り上げて左手を射線上から離し、右手で離れた左手を掴み、左手で梶木くんの目玉2つのすぐ前に指を突きつける。
「……どうする?僕はすぐさま瞼越しでも君の目を潰せるのに対して、君は何も出来ない。この状況でも僕が雑魚だと言うのかい?」
「そこまで!」
朱音さんの大きな声と同時に、僕と梶木くんを木のツルが動けないように拘束する。その拘束力はとても強くて、全くビクともしない。こんな強い魔法をすぐさま使える朱音さんは凄いな。
「……何をしているのですか?」
そんな事をしていると、部屋にカレナさんが入って来た。それを見た朱音さんは若干僕と梶木くんを離してから拘束を解く。カレナさんはすぐさま状況を把握したらしく、呆れたようにため息を吐きながらこっちに来る。
「何に揉めていたのかは、何個か考えられますが今は何も言いません。それよりも、あなた方がこれからやってもらう事が決まりました」
カレナさんは無表情、だけど、僕たちは少なからず緊迫した表情でカレナさんの言葉を待つ。この一言で僕たちがどうなるか決まるから。
「…これからあなた方は《グレアノス》公認の勇者として大陸各地の任務を遂行してもらいます」
てっきり、追放の報せかと思ってたけど僕たちに言われたのは勇者を認めるという宣言。そして、大陸各地へ行く事だ。
呆然としている僕たちに、カレナさんはなお口を開く。
「最初の任務が勇者、魔法使い、癒術師、テイマーが岩石族の国《ガレアグラン》に、執事と魔法使いが植人族の国《ガーデラス》へと向かってもらいます。出立は明日の朝。なので……今日は勇者としての出立祝いです」
カレナは微笑んだ。まるで、教え子が立派に育ったのを確認したように。でも、どうして認めてくれたんだ?昨日はダメダメだったのに……。それにーー
「あの~、《ガーデラス》に行くのは私と陸人だけって事ですか?」
朱音さんが申し訳なさそうに手を上げた。そう、僕たちが向かう《ガレアグラン》は4人なのに、《ガーデラス》には僅か2人。こっちの半数しか居ない。そんな数で……任務をこなす事が…出来るんだろう。陸人と朱音さんだと。その証拠として、朱音さんを見るカレナさんの目は信頼しきっている目になっている。
「あ、もうバラしちゃったんですか?」
立派な扉から出てきたのは、いつも以上にオシャレというか、装飾が多くなったティアナ様だ。薄い黄色のドレスをベースとして、ピンク色のティアラや金色の腕輪、サファイアのような宝石が付いたネックレスを付けている。
「申し訳ありません、告げる前に暴れるとは限らないので」と跪きながら、カレナさんは言ったけど、梶木くんのせいで危険人物みたいな扱いを受けた気がする。
「ま、別に誰が言っても変わらんだろう」
その次に出てきたのは、立派な国王が着そうな想像通りの羽織りを着て、初めて王冠を着けて出て来た国王様だ。
僕はいち早く国王様の近くに行き、跪いて尋ねた。
「僕たちは昨日、御身の身を危険に晒してしまいました。それに、仲間の1人も欠けてしまい……、そんな僕たちをどうして勇者と認めてくださったのですか?」
僕の質問に、困ったというより、言いにくそうに顔を逸らす国王様。もしかして、誰かからの圧力があって渋々勇者として認めたのだろうか?そんな事で認めてもらっても、真に認められたとはーー
「お父様、しっかり言わないと分からないよ」
「……分かっている。んんっ!」
色々な考えを巡らせていた僕に咳払いをしたので、僕はすぐさま頭を一旦真っ白にして、国王様の顔を見る。照れたように耳が赤くなっている。一体どうしたんだろう?
「……お主が奴に似ておったのだ」
「……奴とは?」
「お主らで言う、先代勇者だ」
先代勇者。僕たち勇者に対しての対応がやけに慣れていると思っていたら、僕たちの前に召喚されていた勇者が居た………。
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