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第2章 勇者活動という名の雑用
第22話 楽しいパーティ
しおりを挟む「……よし、やっと終わったな」
調理室に所狭しと並べられた様々な料理の数々を見る。どれもこの世界には無い料理ばかりらしく、周りのコックたちも配膳の為に来たメイドたちも目を輝かせている。
「よし、じゃあ配膳するか」
「あ、はい。みんな!」
メイドの1人に呼びかけると、みんなに呼びかけて慣れた手つきで次々と俺が道具作成で作ったキャスター付きのサイドテーブルを使って料理を運んでいく。
ほとんど調理室から出て行ったので、俺も後を追おうとして最後のサイドテーブルを持とうとしたら、1人のコックに横から俺の手を退けてサイドテーブルを掴む。
誰かと思い、横を見るとそこにはあの捕まったコックの近くによく居たコックだった。コックは複雑そうに俺を見ているが、視線を前に戻して出口へと進む。だが、去り際に一言残した。
「…あんたの事は気にくわないが、その料理の腕は尊敬する。今回この料理たちの行程を見せて後悔するなよ」
薄っすら見えたその口は今までとは違った、清々しいニヤけ口だった………。
「あ、お疲れ様!」
「いえ、これくらいは」
既に料理が並べられた食事室に入ると、お嬢様が出迎えてくれたので、俺は軽く流しながら出席しているメンバーを見る。国王にお姫様、カレナさん、悠、巧、間宮、くるみ、梶木か。青山は本当に出て行ったらしい。
「ほら、ここに座って」
「え?ですが、執事たる者がお仕えしているお嬢様と一緒の席で食事をするなどーー」
「いいからっ、これは命令!」
命令と言われた瞬間、何がどうなっても、席につかないといけない気がしてお嬢様に言われるがまま座ってしまった。これは絶対お嬢様のスキルだろう。じゃないと、俺が座ろうなんて思わない。
チラリと横に座ったお嬢様を見ると、申し訳なさそうに片手の指を揃えて立てて、片目を瞑った。……まあ、お嬢様のスキルの影響だと言うなら仕方ない。今は座っておこう。
「執事よ、昨日の襲撃での功績と此度の料理、誠に大義である」
長細い机の一際豪華な椅子に座っている国王が俺に礼を言う。急に言われて少し戸惑ってしまい、立ち上がろうとしたけど、お嬢様のスキルの影響で立てなくて、結局変にお辞儀をしてしまった。
それに、何で昨日の襲撃での事を知って……そういえばカレナさんがバラしてたな。目立ちたくなかったのにな。
「それに、勇者たちよ。撃退とまでいかなくても、十二分に活躍してくれた。よって、我公認の勇者と認め、明日より勇者として任務を遂行してもらう」
「ありがたきお言葉」と悠が座って居ながらも、深く頭を下げた。それに習って梶木以外の連中も同じように頭を下げる。
え?ちょっとそんな事になってたのかよ。という事はお嬢様も任務というものに参加しないといけないよな?……変装系のスキルや隠密系のスキルでも習得しないと……。
「それに伴い、執事とその主人の勇者も別の任務に向かってもらう」
国王は俺たちを見て言った。俺はお嬢様の方を見ると、お嬢様は知っていたかのように口パクで「良かったね」と言ってくる。
「今日はお主らの栄征を祝う事とする。今日は明日から始まる任務の為に英気を養ってくれ」
呆気を取られているうちに、国王はワインらしきものが注がれたグラスを掲げ、みんなも同じようにグラスを掲げる。俺は反射的にグラスを掲げたが、まだついて来れてなかった。そんな事を無視するかのように、国王の図太い声が部屋に響いた。
「では、乾杯!!」
「……どう?驚いた?」
お嬢様は面白そうに大きなチキンを慣れた手つきでナイフとフォークを使って切り分けながら俺の方を見る。俺は席を寄せ、お嬢様からナイフとフォークを取り上げて、食べやすい大きさに素早く切り分けながら口を開く。
「そうですね、大変驚きました。特に明日から任務に行くことになる事が」
「そうでしょう、そうでしょう。だって、私が前もって言おうとしていたカレナさんに黙っているように口封じをしたんだもの」
何故か自慢げに少し迷惑な事の真相を言うお嬢様。俺はそれの仕返しとして、優しくお嬢様の口に切り分けたチキンを放り込み、席を元の位置に戻す。
「怒ってるの?」
「いえ、ただ前もって教えてもらえたら、行く場所の事を調べる事が出来たと思いまして」
チキンを咀嚼しながら俺に話しかけてくるお嬢様の方を見ず、いい感じに焦げ目が付いたドリアを口に入れる。そして、周りを見渡すと俺やお嬢様と違い、お酒に耐性の無い巧や梶木が暴れて大わらわになっている。それを止めようとしている騎士の人やメイドの人、それを見て笑っているお姫様と間宮、不安そうにしているくるみ、呆れているカレナさんに、僅かに頬を緩ませている国王に、意外に寝てしまった悠。様々な事が起きている食卓はとっても賑やかだった。
「……こんなに楽しい食事は初めてだね」
「…ええ、大概は静かか、陰謀蠢く息苦しいものでしたから」
うちの旦那様や奥様はそれなりに有名な実業家だったので、屋敷でパーティを開くとしたら、それは来賓の方々がお嬢様に必死にアピールをし、あわよくば縁者になろうという魂胆が丸見えなパーティだった。
俺はいつも、顔を一生懸命に取り繕っているお嬢様を見ていた。その度に思ったものだ、パーティがお嬢様の表情を曇らせてどうするのだと。そんなお嬢様が、このパーティでは本当の笑顔を溢している。……それだけで、このパーティをする意味はあっただろう。
「……あなた方はお酒に強いんですね」
「ええまぁ、小さい頃から飲んでいたので」
カレナさんがグラスにワインを注ぎながら、お嬢様に話しかけている。その顔は若干赤くなっている。4杯も飲んでいるのに全く顔色が変わらないお嬢様と比べたら、お酒はあまり強くないのかもな。
「…どこかの貴族の令嬢だったのですか?」
「え、えぇと…」
カレナさんの質問にどう返していいか分からず、困ったような顔で見てくる。少しため息を吐きながらも、何とかいい感じの言い訳を思いついたので、代わりに言う。
「親がかなりの酒豪でして。小さい頃から子供とお酒を楽しみたくてお酒を慣らす為に色々飲まされまして」
「……はぁ、そんな親もいるのですね」とカレナさんは感心というか、また一つ知らない事を知れたとでも言うように、真に受けて何故か頷いている。もう酒が回りすぎて、色々とおかしくなったのだろうか?
「それにしても、お2人は随分と仲が良いのですね。双子にしては、顔が似てませんが…」
「いえ、双子じゃなくて俺がお嬢様の家に養子として入ったんです」
養子と聞いた途端、目を鋭くさせたカレナさんに、少し警戒してしまうが、すぐに元に戻った。そして、お嬢様のグラスに注いだのに、そのグラスに入っているワインを飲み干すと、「では、楽しんでください」と一言残して部屋から出て行ってしまった。
「…何で入れたのに飲み干したの?」
お嬢様の至極当然の疑問の声がやけに俺の耳に通った。俺は立ち上がり、カレナさんが置いたワインのボトルを取ってお嬢様のグラスに注ぐ。そして、部屋の外か城の外から僅かな音を拾った。その音は斬撃の音だった………。
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