職業通りの世界

ヒロ

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第2章 勇者活動という名の雑用

第27話 出発前夜

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「いよいよ明日だね」

 結局、こんな夜遅くまで続いたパーティ。流石にお開きになり、現在、私の部屋にはくるみちゃんと加奈ちゃんが私の部屋に来ていた。
 2人は一緒だけど、私は陸人と2人だけだから最後にちゃんと話したかった。

「そうだね~、こっちは不安だけど正直、そっちには陸人くんが居るから全然平気でしょ」
「そ、そんな事無いよ~。私も多分陸人も2人だけってのは不安になるよ」

 「本当か~っ」と加奈ちゃんが私に飛びついて脇やお腹周りや足をくすぐってくる。加奈ちゃんは私を倒して逃げられないように上になってくすぐっているから、退かしたくても出来なくてただ笑う。

「でも、本当にそっちは良いと思う。騎士の人たちも言ってたよ。あの執事が居ればカレナさん並みの戦力になるって」

 加奈ちゃんは急に真剣な表情で呟いた。手は止まり、くすぐられて無いので、目の端に溜まった涙を拭いつつ、加奈ちゃんを見つめる。
 加奈ちゃんの腕は私の顔のすぐ横にある。その腕が微かに震えているのが見える。怖いのかもしれない。いきなりこんなところに連れてこられて、明日には戦場になるかもしれない場所に行かないといけないのが。

「大丈夫、きっと高野くんや巧くんが守ってくれるよ。もし、高野くんや巧くんが傷ついたら加奈ちゃんが治せばいい。そうしてればどんな強敵が相手でも、守りきってくれるよ」

 私は加奈ちゃんに微笑んだ。加奈ちゃんはまだ不安があるようだけど、怖がる事は無くなったのか、私から離れてベットに座って足をパタパタさせている。
 漸く起き上がると、私をジッと見つめるくるみちゃんが居た。いつもはいるトゲちゃんも騎士の人たちに預けているから不安そうに膝を抱えて。

「……くるみちゃんも不安?」
「…うん、戦う事もだけど、朱音ちゃんと離れるのが」

 くるみちゃんは閉じこもるように、より一層膝を抱える。声は震えて今にも泣きそう。
 そんなくるみちゃんのところへ歩き、私は上から覆い被さるように抱き締めた。くるみちゃんは私より物分かりは良いはず。なら、口で言うよりも、直接温もりをあげた方が落ち着くよね。

「むー。私も混ぜてよっ」
「え?ちょっと!?」

 何故か拗ねたように飛びついてきた加奈ちゃんに、私は不意を突かれてくるみちゃんと押し倒されてしまった………。







「……………」「……………」「……………」
(カチャカチャ)

 現在、俺の部屋には梶木、悠、巧が集まっていた。梶木は機嫌が悪そうに部屋の角を見つめ、悠はどう切り出そうか悩んでいるのか、いつまで経っても喋ろうとせず目を瞑っている。巧は完全に雰囲気に押されて黙り込んでいる。
 そんな部屋の中で、俺は無限収納からなおしたままの武器を取り出し、ある程度手入れをしている。こういった武器の手入れも小さい頃にみっちり指導されているので、そこそこ有った武器もあらかた手入れし終えた。

「………で、何でお前たちが俺の部屋に来てるんだ?」

 俺は無限収納で手入れし終えた武器たちをなおしながら、悠たちに聞く。梶木も巧も答えないが、悠は待ってましたとでも言うように表情を明るくして話し出した。

「実は僕たちの最終目的である魔王の話なんだけど」

 そう言って背に隠していた茶色く濁った紙を取り出した。そこにはいつからといつまでかは分からないが、過去のこの国の被害状況が記された表だった。
 それを見ると、最初から最後まで魔物による被害は特になく、どちらかと言うと盗賊や義賊、他種族による嫌がらせらしき被害が記されていた。

「これは今から30年前、先代の勇者が魔王に敗北してから一年間の被害状況なんだけど、先代の勇者が敗北する前は魔物による被害が圧倒的だったんだけど、敗北してからは逆に減ったみたいなんだ」
 
 悠は新たにもう一つの紙を広げながら説明した。確かに、表を見る限りではそうみたいだな。
 だからどうしたと言いたいが、それを言う前に悠は更にもう一枚の紙を2枚の紙に重なるように広げた。
 そこには初めに見た表とは打って変わって、魔物による被害がちょっとずつ増えていっている。

「これは先代の勇者が敗北してから2年後の一年間の被害状況。……僕の言いたい事は分かるかな?」
「…つまり、魔物による被害が増えていっている中、手を焼いたお姫様がお前たちを召喚したって事だろ?」 

 表を見て、悠の表情を見て仮説を立てて悠に言うと、悠は真剣な表情で首を横に振った。

「僕は騎士の人たちにパーティ中に聞き込みをしたんだけど、確かに魔物による被害は見るに堪えないものだったらしい。だけど、それは何年周期かで起こっているから別段危険視するものじゃないらしい」
「って事は?」
「古株のティアラ様をよく知っている騎士の人によると、ティアラ様は今年の魔物の被害を特別視しているらしい」

 何年周期かで起こっている事を特別視。確かにそれは気になるな。

「今回の任務は僕たちという違う見解を持った勇者が、ティアラ様が感じている不安を調べる事って僕は踏んでいる」

 悠は俺たちを見渡しながら言った。もし、悠の言っている事が本当だとしたら、魔王とやらが動く前兆なのかもしれないな。

「……分かった、なるべく注意する」
「そっちは2人なんだから気は抜けないよね」

 そうだな、ある意味気は抜けないな。お嬢様が安全で快適に任務をこなせるように、色んな事に気を回さないと。

「……もう話は終わりか?なら、俺は戻る」
「俺もさっさと寝ますかねー」
「あ、僕も」

 話が終わった途端、帰りだす。ならさっさと話をしてほしかった。
 それにしても………、魔王ね。RPGやファンタジーの世界ではど定番のボス。最強に相応しい力を持っていて、それを倒すのが勇者。
 この世界はまるでゲームみたいだな。ま、ゲームとは違ってリセットもバグも使えないから慎重にいかないとな。

「……魔王はあいつらが倒すらしいし、俺は関係ないか」

 何だって俺は執事だからな。







「おはようございます!今日はお日柄も良く、皆さんの絶好の出立日和ですね」

 俺が作った朝飯を食べ終え、用意された服装に着替えて城門で女子たちを男子たちが待っていると、朝飯には顔を出さなかったお姫様が来た。
 天気の良い日によく似合う、黄色のドレスを着てこっちに来ている。

 因みに男子に支給された服装は、紺のズボンと白色のTシャツのようなもの、暗めの青色の上着だった。何でも、初代勇者の要望で作られた勇者専用の服装らしい。完全に制服をモチーフにしてるだろ。だが、胸当てはある事から、しっかりと防御方面も考えているらしい。

 あ、俺は白と黒の執事服だ。しっかりとした生地で、動きやすくて体温調節もしやすい気がする。流石は国が支給したやつ、良い職人さんがいるもんだな。それと、執事服は向こう以来なので、少し感動した。やっぱり俺は執事服が一番かな。

「あ、もう集まってたんだ~」

 呑気な声が聞こえ、声のする方を向くと、白色に近いピンク色のドレスのような服を着て、フードの付いた白のベストを着たお嬢様が走って来ていた。

 その後ろから、ジーンズのような短パンに片方だけ長袖の黄色の上という、かなりラフで軽量な服を着たくるみと下に白色のショートスカートが見え、黄緑を基調とした前と後ろ、左右に一本ずつ布が縦に垂れている、1人だけ異世界感丸出しの間宮が来た。

「これで全員ですねっ!では、任務内容を発表します!」


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