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第2章 勇者活動という名の雑用
第33話 テンプレは短期で済ます
しおりを挟む「こ、これで良いの?」
「ええ、バッチリです」
恥ずかしそうにもじもじするお嬢様は、長髪の金色のウィッグを被り、服も前の白に近いピンクから黄色に変わっていて、設定としては世慣れしていない村娘で、この街には初めて観光に来たという風にしよう。
「陸人のそれは何をイメージしてるの?」
「ズバリ、子離れ出来ない父親ですね」
俺は黄土色のカツラを被り、黒のサングラス、口元にはつけ髭もつけた。服装も田舎出という事を悟られないように気を使った感じの茶色のジャケット、その下には黄土色のシャツ、灰色のズボンを履いている。靴は厚底で身長差もある程度つくった。
因みに着替えは俺が道具作成で折りたたみ式の更衣空間を作るテントのようなものを作ってお嬢様がその中で着替えて俺はその間にテントの外で着替えた。お嬢様の着替えの音は聞こえたが、姿は見てないからセーフ。
「これなら大丈夫でしょう。以前と全く違うんですからバレる事もありません」
「そ、そうだよね。うん、陸人が言うんだから間違いないよね…」
俺の完璧な作戦に何故か不安そうなお嬢様。少し気になるが、隠密のスキルを解いて、タイミングを見計らって道に出る。
道を歩く人たちはさっきまでの騒動の話をしているが、俺たちの方はほとんど見ず、上手い事溶け込めたみたいだ。
「上手くいきましたね、では先に昼食を取りましょう」
「うん、どこにする?」
適当に入った店でそこそこ美味しい昼食を終え、いよいよ冒険者ギルドにあるという博物館に行く時がやってきた。冒険者ギルドが見える位置まで来ていて、今は道沿いにあった帽子屋を覗く振りをしながら冒険者ギルドの様子を伺っている。
「無理そうなら行かなくてもーー」
「いえ、お嬢様が一度でも行きたいと思われたなら、それを叶えるのが執事です」
お嬢様にそう言ったものの、実は出入り口付近にあの冒険者3人組が居るんだよな…。変装しているとはいえ、本格的なものじゃないからバレる可能性もある。…仕方ない。
「また隠密のスキルを使います。ギルドのどこかに隠れる場所もあるでしょうし、そこで解いて入りましょう」
「それが一番の作戦ならそれで行こっか」
お嬢様が納得したところで、また変装した場所に行き、スキルを使ってから普通に歩いていく。誰にも気付かれず、冒険者ギルドが上にある広場まで来た。
冒険者ギルドまで行くには広場の縁にある柱に備えられたハシゴか、広場ではなく道沿いにある、冒険者ギルドまで続いている階段を登るかの2択だ。
実は隠密のスキルは体の一部が触れ合っていないと隠す事が出来ない。よって、今は僭越ながら手を繋いでここまで来たが、登る手段をどうするかを考えないといけない。
ハシゴはお互い触れ合いながら登る事は難しいというか、無理やり出来ない事は無いが、後から人が来たら終わる。
階段は幅が狭く、肩とかがぶつかったら効果は解けないが、何もない空間にぶつかるという不信感を与えてしまう。最悪手を振り回されたら知られてしまうだろう。
あの3人はハシゴ、もしくは階段を登り切った後にある冒険者ギルドの玄関とも言える出入り口で見張りつつ、下を見下ろしているから、スキルを解いて登っても素早く発動しないとバレてしまう。というかいきなり消えたら少しでも俺たちを見ていた人たちに騒がれてしまう。ここはさっきと同じやり方を取るか。
「お嬢様、失礼します」
「あ、飛んで行くの?」
俺がお嬢様をおぶれるように、手を繋いだままお嬢様の前で屈むとお嬢様はすぐに察したようで肩に手をついたので、繋いでいた手を離して、お嬢様が俺に飛び乗ったのと同時にお嬢様の足を抱える。
「また舌を噛まないように、歯を食いしばってください」
「うん、よろしくね」
お嬢様は俺の首に回した両手をより一層幅を狭く締めて、背中に体重をかけて俺に委ねると言っているかのような事をする。背中に柔らかな感触があって一瞬お嬢様を意識したが、お嬢様の行動で、すぐさま私情を消し、足に力を込めて身体強化魔法をかける。
さっき見た感じだと、玄関から少し右に行った所に荷物置き場のようなところと近くに道沿いから伸びた別の階段が見えた。荷物置き場でスキルを解いて、きっと階段の正面に玄関があるはずだからそこから入ろう。
「では、いきます」
俺は地面にヒビがいかない程度に力を込めて飛び跳ねる。着地地点は玄関にある出てすぐ雨などで濡れないように設けられたひさしにしよう。広くてそこそこ厚さがあるからきっと大丈夫だろう。
「……!?」
「…キャッ!」
全くの予想外。まさかの玄関から出てきた腰に柄が包帯でぐるぐる巻きの両刃直剣を携えた歳は30くらいの赤髪の男に斬撃を飛ばされ、少し無理な形で躱したので、失速し、結局男たちの前で俺は四つ足ついて着地した。
お嬢様はいきなりの出来事に驚き、着地するまでは腕を離さなかったが、着地の衝撃で腕を離してしまい、隣でゆっくりと落ちた。
「……!?いきなり女が現れたぞ!!」
「こいつはあの男と一緒に居た奴だ!!」
3人の男が俺たちを囲ったので、仕方なく俺も姿を現わす。それでまた3人は驚く。その間にお嬢様に手を差し出して立たせる。
「何事ですか!?」
「喧嘩かぁ?」
「あの3人が騒いでるみたいだぞ~」
騒ぎを聞きつけて奥から職員らしき女の人が来て、さらに冒険者たちも少しずつだがやってくる。これはマズイが、状況を説明すれば何とかなるか?
「俺たちはこの街に初めて来た者だ!来てすぐこの3人組が襲って来たので、この3人からは見つからないように入ろうとしただけだ!怪しいものではない!」
本当の事を言うが、周りの奴は半信半疑という感じで、言われた3人は規定があるのかは知らないが「口から出まかせを言うな」とそんな感じの事を言って襲って来た事を無かったことにしようとしている。
仕方ない、正体を明かして乗り切れる事にかけるか。
「俺たちは国王様に依頼を受けた、勇者という者だ!これがそれを示す証明書だ!」
俺は変装を解き、職員らしき女の人に証明書を突きつけながら周りに訴える。お嬢様も変装を解き、俺たちの黒髪を見た周りの奴は俺たちの事を信じ始めた。さらに、証明書が本物だという事を職員が言って、なお俺たちに傾き始めた。このまま押し切れるか?
そんな上手くいかないとでも言っているかのように、俺に斬撃を放った男が人混みを押し退けて来た。
「そんな事はどうだっていい、今知りたいのはこの街に仇なすものたちかどうかだ」
剣先を俺に向けて、威圧的な目で見てくる。3人組はその男に便乗して、男を肯定するような事を言い、他の連中も男の方に傾き始めていく。
「どうやって証明すれば良い」
「簡単な事だ。冒険者とは力に答えを見出している連中なのだから、俺に力を示せば良い。つまり決闘だ」
……これもテンプレにあったような気がする。だが、こんな犯罪者かどうかを示す為に決闘をするのもテンプレなのだろうか。
「分かった、ならさっさと来い。一瞬で済ます」
「知らないだろうが、俺はAランク冒険者だーー」
なんか言いながら来た男だが、男の顎にすれ違いざまに掌底をぶつけ、俺の隣で男が意識を飛ばして地面に倒れて勝敗は決した。
「カレナさんより弱い奴が俺に勝てる訳がないだろう」
口から僅かに血を覗かせている男に言い放ったのと同時に周りの連中が沸いたように歓声をあげた………。
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