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第6章 協力者

第60話 訪問者

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===リリ視点========================

「あ、寝ちゃった」

 私の膝で案外早く寝てしまったルル。いつもなら私を凝視したりするけど、よっぽど疲れが溜まっていたみたい。

「まあ、ルルは置いといて。これからどうしましょう?」
「ユウキの命令を守っているならどこかの武闘大会に出ているはずだけど……」

 ティフィラさんもエルガさんも悩んでいます。確かに、今回の武闘大会にイアさんが出ていたら、すぐに師匠と連絡を取って再会出来たかもしれません。ティフィラさんは一刻も早く師匠に会いたいのか、少し焦り気味に見えます。

「あのーー、どうしてお姉ちゃんに会おうとしているんですか?」

 アイが申し訳なさそうに聞いてくる。思い返してみたら、一度もイアさんを捜す理由を言っていませんでした。

「それは勿論、ユウキがイアの力を借りたいと言ったからよ」
「え?すごく強いよ、この2人」

 不思議そうに私とルルを指差すアイ。

「いや、私達でも勝てない人はいるからね」
「え!!あ………もしかして、ユウキ?」
「何で呼び捨てなの!?」
「すみませんっ!ユウキさんと言いますから!!」

 師匠の事を呼び捨てにしただけで、精霊を50体もアイの周囲に展開したティフィラさん。………ちょっとやり過ぎなんじゃ………。

「ええ、師匠には敵いません。第一、私の武術もルルの魔法も、師匠のを真似しているか似せているだけですし。……その真似や似せる事すら完全に出来ないけど……」
「………ユウキさんって何者?」
「それは教えない~~!!」
「ええ!そんな~~!!」

 師匠の正体は迂闊にバラしてはいけないぐらい、有名だからね。

「もしかして、『全能の大英雄』様だったりして!………まあ、そんな都合のいい話は無いに決まってるけど…………」
「あはははは~~」

 この子、意外と鋭い?

「お主ら、盛り上がっているところ悪いが、外が騒がしくないか?」
「あ、オリナも気がついた?やっぱり、相手にされない者同士、暇だから気づくよね~~」
「お主と一緒にするでないわ!!」

 オリナがエルガさんを精神的に沈めたけど、気にせず、ゆっくりとルルを膝から降ろして窓から外を見てみると、外は大勢の人でごった返しているけど、何故か道のように開けてある部分もあり、そこを窓の左側から馬車が進んでいました。

「なんか、偉い人でも来たかのようになっていますよ?」
「どれどれ。あ、本当だね。でも、ここら辺に偉い人が来るような店があったかな?」
「あ、ここの宿の前で止まりましたよ」
「ここの宿の前~?目の前は廃墟で、畑と土産屋しか無いから………」
「多分、土産屋で何かここの名産品を買うんですよ!!」
「うん、きっとそうだね。つまり、僕らには関係無いって事だ!」

 エルガさんと話し合った結果、私達には関係の無いって事で落ち着きました。だって、私達は偉いさんとの接点はありませんし!なんか嫌な予感がするけど、絶対関係ありませんし!!

(コンコン)

 突然鳴ったノックに私は嫌な予感が当た
ったような気がしました。………師匠はよく、トラブルに巻き込まれていたと言っていましたが、きっとこんな予感ばかりしていたんでしょう………。

「はーい、何ですか?」

 私の嫌な予感を知る由もなく、エルガさんは扉を開ける。扉を開けた先には、戸惑った顔をしている宿の管理人と…………シャルティ様がいました………。



「えーー、どうして連合国の人族代表様がこんな一般人がいる宿にいらっしゃっているんですか?」
「試合でお疲れのところ、突然お邪魔してしまって申し訳ありません」

 薄っすらと青筋を浮かべるティフィラさんとそれを意にも介さず、微笑みを浮かべるシャルティ様。
 現在、私達はシャルティ様と机を境界線として、向かい合わせに座っています。シャルティ様一人に対して私達6人。ルルもしっかり起こして、オリナとアイの睨み合いもやめさせ、並んで座っています。因みに、オリナは元の姿に少し似ているエルフ族の姿になっています。

「いくら人気があるとはいえ、護衛もつけずに得体の知れない人達の部屋に入るのは、いささか気が緩んでいらっしゃると思いますが」
「お気になさらず、あなた方はともかく、あの二人なら顔を合わせた事がありますから。覚えていますか?リリ・ギティールさんとルル・ギティールさん?」
「「!!」」

 え…………、どうして家名を?それに顔を合わせた事があるって………。

「といっても、あなた達がまだ1歳だった頃の話ですけどね………」

 目を閉じたまま、私達の方を見て微笑むシャルティ様。………初めて会った時のエルガさんの得体の知れなさのような怖い感じの人に思えます。

「まさか、わざわざ今日、予選通過をしたから来たって事はありませんよね?」
「まあ、それもありますが、本題は違います」
「本題?」
「ええ、リリさん、ルルさん。あの《》の惨劇からどうやって生き延びたんです?」
「「!!!」」

 この人は………、《オルガ》で起きた事を知っているの!?それとも、あの惨状から推測しているの!?

「………あなたは一体何者なんですか?」
「それはあなた方も知っているかと思いますが?」
「……普通、あの状況を見たら、?って聞くはずです。なのに、………。まるで、何が起きたのか知っているかのような口ぶりですね。それとも、あれはあなたが仕組んだんですか………!?」

 勿論、あの惨劇は魔王がやった事は知ってるけど、間違いなく、この人は何かを知ってる!《オルガ》の事か神々の事かは分からないけど、重要な何かを知っているはず!!
 シャルティ様は、私の問いかけにため息をつき、手に先端に透明な球体が浮かんでいる金色の杖を持ち、杖を座ったまま、立てました。恐らく、あれは『ソウルウェポン』。なんで、今出したかは分からないけど、警戒はしとかないと………

「私の『ソウルウェポン』の能力は"過去と未来を見る事"。過去なら10年前まで、未来なら1年後まで見る事が出来ます」

 シャルティ様の『ソウルウェポン』の能力はとんでもないものです。そんな事は師匠も出来ません。

「私は《オルガ》に直接訪れ、能力を使い、あなた達に何があったのかを見ました。………分かりますよね? 私はあなた達を助けた男を知っています」
「「…………っ!!」

 師匠の存在を、国のトップに知られてしまっていた!もしかして、この人は師匠の力を利用する気なんじゃ……!!

「単刀直入に言います。あの男、『全能の大英雄』様に会わせなさい」
「…………どうしてですか?」
「そんなの、決まっています。魔神領への侵略の要になってもらいます」
「「「「「!!!」」」」」

 連合国は、魔神領を攻め込むつもりだったんだ………。確かに、それに師匠の力が加われば、成功はほぼ確実。

「勿論、あなた達も同行してもらいます。戦力は多ければ多いほどいいですからね」

 …………どうしよう。師匠は多分、魔神領にいるであろう、神々を倒すつもりだろうし、そこに連合国が加わったら多少の戦力になるかもしれない。………どうしたら………!!

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 少し、遅れてしまって申し訳ありません!
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