怪奇と異端の日常ファイル

石田氏

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第1話 錬金術士と賢者の石

プロローグ

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  コンコン

ドアをノックする音が、広い屋敷の廊下に響きわたる。
「旦那様、お食事の御用意ができました」
しかし、いつもならそこで返事がかえってくるのだが、何もかえってこなかった。
「旦那様?」
使用人は、もう一度ノックをする。しかし、声どころか物音すら部屋から聞こえてこなかった。まるでその部屋からは人気を感じないぐらい静かだった。
 使用人は、主人が出られたあとだと直感し、恐らくすれ違ってしまわれたのだと解釈した。
 しかし、その後も主人の姿は見当たらず、使用人全員で屋敷をくまなく探した。
 


 結局のところどこにもおらず、残る場所は先程の書斎室だった。

コンコン

再び、ノックをするが返事はない。
 使用人はドアノブに手をかけゆっくりと回した。
「!」
どうやら鍵はかけられていないようだ。使用人は、他の使用人に目を送り、そして頷くと意を決してドアを開けた。
「失礼します」
そこは電気のついてない暗い部屋だった。
 使用人は、手探りで入り口近くのスイッチを入れる。

カチッ

「なっ!?」
「ご主人様!?」
部屋が照らされたその中心部に、床に寝そべるかたちで倒れている男性がいた。それこそ、使用人が言っていたこの屋敷の主人である。
 直ぐ様、一人の使用人が対応する。
「すぐに救急車の用意を」
そう言いながら、主人に近き状態を確認する。そして、脈を確認してから
「いや、救急車ではなく警察を呼んでくれ」
「えっ!?」
「それはどう言うことですか?」
聞かれた使用人は、目を閉じて少し合間をあけてから答えた。
「ご主人様はお亡くなりになられました」
「な、なんだって!?」
「とにかく、警察が来るまでこのままにしておきましょう」
「何を言ってるんだ。ご主人様をそのまま床に寝かしたままにしておけと?それでも主人に使える者なのか!」
「今、遺体を動かせば警察方の捜査に支障が出るでしょう」
「何を冷静なことを。まさか・・・これが殺人だと言うのか」
「はい。証拠に、ダイイングメッセージのような紙切れが落ちてました」
「何っ!?」
それはノートの紙切れだった。
「この字は間違いなくご主人様の字です」
そこに書かれていたのは


『賢者の石に殺された』


「な、賢者の石!?」
「私もそれが何を意味するのか分かりません。ただ、殺されたと書かれてある以上、警察を呼ぶまではこのままにしておくことが先決でしょう」
「しかし・・・」
「それで犯人が捕まるというなら、ご主人様も本望でしょう」
「うっ……申し訳ございません。私使用人いながら、ご主人様をお守り出来なかったこと、お許し下さい」
泣き崩れる使用人に、他の者も涙を流した。



 その後、暗い真夜中に屋敷の周りを赤く照らす。それはサイレンと共に、事件の究極の謎の扉が今、開かれたのだった。
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