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9章 腦
01
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「あ!海だよ真紀ちゃん」
「え?・・・・うっ・・・・」
「あはは、頼むから車内で吐かないでくれよ。これ警察署からパクった車だからな」
「公用車なんですか?」
「悪いな。基本バイクなもんで、自分の車はちっこいんだわ」
「バイクなんですか」
「あぁ。ここじゃあ交通量が多いからバイクの方がはやく目的地につけるんだ」
そう言いながら、ブライアンは車を走らせていた。
因みに、ブライアンと一緒にいる真紀と山吹だが、宇宙エレベーターの一件でその場にいた参考人として、現在アメリカを長期間滞在していた。
勿論、政治の官僚達は長期滞在を拒否し、自国へと帰国した。それもそのはずであり、帰る彼らを止めてまで更なる関係悪化は望んでいない。警察としては、証人がいなくなるのは困る話だが、外交としての政府からの圧力がそれを
上回ったのだ。
結局、残った真紀達(証人)は、長期間のアメリカ滞在を楽しむ為、海と言えばビーチ!……とはいかず、(真紀は泳げず、山吹は日焼けを気にしてか海は嫌い)な二人の為、ブライアンは海岸近くのある企業へと社会科見学に招待したのだ。その企業は、量子コンピューターの開発を成功させ、特許を取得した企業である。そこには色々なゲームもあり、試作品を楽しむのが目的である。
「だけど、どうしてその企業がオッケーしてくれたんですか?一般公開はないんですよね?」
「あぁ、それなんだがこれは機密事項なんで内緒にして欲しいんだが、量子コンピューターにハッキングされ、ウイルスに感染したらしいんだ。普通は、量子コンピューターのセキュリティに普通のコンピューターが挑んでも勝ち目がないはずなんだが、それに勝ってしまって、企業にとっては赤っ恥かかされたわけだ。そこで、ハッキング仕掛けウイルスを流し込んだ犯人を探すことになったんだが、俺がその捜査をしている間だけ、二人の見学が許可されたってわけだ」
「ハッキングですか?犯人の狙いはなんですか」
「企業の情報だろうよ」
「成る程」
「ただ、気になるのはこうも腕のたつハッカーが続けて問題おこすんだなと」
「確かに、宇宙エレベーターの一件を少し考えてしまいますが関係性は今のところないんですよね」
「あぁ、ご名答だ」
「それでも気になったからこの事件を担当したんですね」
「あはは、まるでカウンセリングを受けた気分だ。君は頭がさえてるんだね」
「えぇ、誰かさんと違いまして」
山吹はそう言って、隣を見た。相変わらず乗り物酔いしてる真紀を見て思わずため息をはく。
「なぁ、頼むから本当に吐かないでくれよ」
「ブライアンさん、あとどれぐらいでつきますか?真紀ちゃんの顔色がブルーベリーのような色になって、今にもはじけそうなんですが」
「それは面白くない冗談だ。そうだ!真紀、別のこと考えると楽になるかもしれない。俺の知り合いはそれでのりこえた」
「別…の…こと?」
「おい、本当に大丈夫か?そうだな……じゃあ気を他に集中できるよう問題をだそう。今から言う数字のあとに続く数字を言ってくれ。じゃあ、いくぞ。8172635……その次に続く数字がなんなのか答えてくれ」
「81……えーと、なんでしたっけ?」
「あっ!分かりました。答えは4ですね。8172635を二人の数字と組ませると、81、72、63になって、どれもかけ算の九の段の答えになるので、余った数字の5のペアになるのは4」
「正解。簡単過ぎたかな?じゃあ、次はどうかな?今度も数字の問題。?に入る数字を答えてくれ。じゃあ、いくぞ。
91191117151?066060080
どうだ、これは難問じゃないかな」
「いえ、分かりました」
「なにっ!」
「911で分かりました。緊急連絡先ですね。北アメリカの緊急連絡の番号をならべたんですよね。アメリカは911、カナダも同じく911、サンピエールは2桁の緊急連絡先が3つあって、17と15と18。順番通りに数字が並んでいるので、答えは8ですね」
「あはは……凄いな」
「えへへ。もっと難しい問題出してくださいよ」
「おっ、言ったな。なら、出題者のプライドをかけてリベンジだ。次の数字から隠された4桁の数字を答えよ!
379759265359
これは自信大有りだ」
「え?数字の中に数字が隠れているんですか?」
「そうだ」
「うーん・・・・ちょっと難しいかも」
「どうだ?真紀ちゃんも他のこと考えてると、車の酔いなんて忘れるだろ」
「うっ・・・♪@○Ⅲ※○▽♯」
「きゃあああーー!!」
「おい、マジか!」
「頭の中で数字がぐるぐる回ってる・・・・」
「どうやら数字は逆効果だったみたいですね」
「そう……みたいだな」
ブライアンは少し涙目になって答えた。
+ + +
一度、車を洗浄にまわし、真紀達はそこから徒歩で向かった。
そしてたどり着いたのが『キングスワーク』だった。
「ここって、キングさんが立ち上げた企業の一つですよね」
「そうだ。まぁ、だからと言って英雄のキングがこの会社にあらわれることはないらしいが」
「そうなんですか?」
「他にあちこち会社があるんだ。他の会社や銀行が断った奴らを、キングは雇い可能性を導く。彼の才能はビジネスと言うより人を導くところに才能があるんだ。
例えばだが、会社は才能あるものを求めるものだが、それを育てる能力がなければ中途半端な業績になる。会社をたてた社長とその頃の社員は才能を努力で開花させ、大きな会社へと成功させるが、次世代の社員は才能こそあったが努力を知らない。会社の、上司の指示を待つだけで、会社を本来持ち上げる人物達が、逆に会社にぶらさがっている状態だ。これじゃあ、大企業も最初だけ業績が良かったが、どんどん悪化していく一方になるだろう。そりゃ、不景気になるわな。
そのくせキングは、人間を成功へと導く方法を無意識にやってみせた。結果、彼が立ち上げた会社はどれも業績は安定している。故に、彼に投資する者が増え、彼は世界でもトップクラスの経済王となった。
彼は今でもどこかでスカウトして新たな会社を立ち上げているだろうよ」
「成る程、勉強になりました」
「まぁ、何かツラいことを乗り越えた経験がなければ、人を育てる能力なんて身に付かなかっただろうよ。だから、彼自信も努力で才能を開花した人物だってことさ。
だから結局、才能うんぬんと言うより努力がものを言うってことなんだろうよ」
「そうですね。日本の言葉にも、努力した者は報われるって言葉がありますし」
「ねぇふきちゃん、何で私を見て言うの?」
「あら、それは心当たりがあるってことかな?例えば、数学のテストとか」
「ビクッ!」
「何だ、真紀は数学が苦手なのか?」
「うっ……数字を見ると頭が痛くなる病気で」
「真紀ちゃん、数字を見ると頭が痛くなる病気はないよ」
「いや、多分まだ発見されてない病気なんだよ」
「もうっ!」
山吹は頬を膨らませる。
「まさか、それでさっき吐いたのか?早く言ってくれよそう言うことなら」
ブライアンは再び涙目になる。
「あれ、本当に黙って借りた公用車なんだから」
「すいません……」
「と、とにかく中に入りませんか?」
山吹に言われ、ブライアンは涙を拭い「そうだな」と言って、鞄からメモ帳を取りだし、『キングスワーク』の中へと足を踏み入れた。
+ + +
受付に行くと、若いお姉さんが出迎えた。
「ようこそ『キングスワーク』に。御用件をどうぞ」
「私はブライアン、警察だ」
そう言って、警察手帳を取りだし受付の人に見せた。
「そちらから要請があって来た」
「あっ、警察の方でしたか。只今、担当者と連絡を入れますので少々お待ちください」
そう言って、受付のお姉さんは電話を取り、内線で連絡をとった。
しばらくすると、小太りのメガネをかけた男性がこちらに向かって来た。
「お待たせしました。わたくし、こちらの責任者ウィルと申します」
男は名刺を取りだし、ブライアン刑事にそれを手渡した。ブライアンはそれをちょっと確認すると、すぐにその名刺をしまいこんだ。
「それで、こちらにハッカーによるハッキングを受けたと連絡を受けましたが」
「えぇ、そうです。今、優秀なスタッフがハッキングに対応しています」
「正直、警察からはあなた方のスタッフより優秀な捜査官はいません」
「えぇ、それは構いません。ハッキングはこちらでなんとかします。警察にはうちにハッキングを仕掛けたハッカーを逮捕して頂きたいです」
「それはお任せ下さい。それより、ハッキングは阻止できそうですか?」
「うちはコンピューター関係の仕事ですので心配は入りませんと、言いたいところですがかなり苦戦しています」
「なにっ!?ここではかなりの有名なコンピューター企業なのに?」
「お褒めの言葉ありがとうございます。正直、最初は我々もうちにハッキングするとはいい度胸だと思っていましたよ。おそらく、ハッカーによる腕試しじゃないかと。しかし、どうも普通のハッカーではないようで、かなり早いですし、かなり複雑で、複数のハッカーによるものかと最初は思いました。ですが、どうも一つのコンピューターからによるハッキングだと分かって、ますます相手が何者か分からなくなりました」
「ハッキング元の逆探知は出来たんですね?」
「えぇ、今もハッカーによる攻撃が続いているので、対応とは別に逆探知をし、成功しています。今、地図をお出ししますのでお待ちください」
「あぁ、それなら私も一緒に取りに行こう。他にも聞きたいことがあるんで」
「分かりました。では、こちらへ」
「あっ、その前に彼女らのことは連絡したと思うが」
「あぁ、いいですよ。では、受付の人にお願いしときましょう」
「すいません、こんな時に」
「正直、終わっていると思ったんですよね?」
「えぇ、私もバカなハッカーの腕試しだろうと思っていました」
「いいんですよ。それに、私達は企業向けコンピューターの開発以外にゲーム産業にも手を出したばかりで、子ども達の意見が直に聞けるので、こちらとしては逆に歓迎ですよ」
「そうか、なら良かった」
「では頼む」
ウィルは受付にあとのことを頼むと、ブライアン刑事と共に別の部屋へと向かった。
「それじゃあ、私が案内しますのでついてきて下さい」
「はーい」
「分かりました。よろしくお願いします」
真紀達は、お姉さんに連れられ別のコンピューター室へと向かった。
+ + +
お姉さんに連れられついた部屋は、ゲーマーがはしゃいで喜びそうな数台の古いゲーム機と、パソコンが数台あった。
「わぁー、まるでゲーマーセンターみたい」
「うふふ、そうかも知れませんね。ここの社員は、休み時間にここに立ち寄り時折遊んでらっしゃるので」
「仕事場に遊び場があるなんて楽しそうな会社ですね」
「えぇ、そうそう他の会社にあることではないですね。私もここに入社した時はビックリしました。でも、そういった娯楽施設が職場にあると、そこの会社で働く社員はストレスチェックでも他の会社よりいい結果になるんです。各企業のメンタルヘルスの講義でも、採用されてるんです」
「へぇ、そうなんですか」
すると、遠くから早速ピコピコと遊ぶ真紀がいた。
「早っ!いつの間に」
「うふふ、ああやって自分達会社が作ったゲームを楽しんでもらえると、実際に私が作った訳じゃなくてもうれしいものね」
「あの、一つ聞いていいですか?」
「はい、何かな?」
「あそこにあるパソコンなんですが、あれも量子コンピューターなんですよね?」
「そうよ。見た目は普通のコンピューターと変わらないけど、中身は最新式のシステム。他のコンピューターよりも計算能力が高く、ゲーム事態も複雑なものにすることが可能になったの。これで、ゲーマーのゲーム攻略は難易度を増し、敵の複数の攻撃パターンを全て計算することとかが、ほぼ不可能になったわ。攻略を考えるのは分かるけど、パターンが分かってしまうとゲーム事態もろくなるの。つまり、本能や、勘、敵の動きで忠実に攻撃を回避したりして欲しいの。その方が、しょせんコンピューターだけどリアル感があるでしょ?それに、複数の攻撃パターンが複雑に出されることで、ゲーマーも遣り甲斐を出すと思うのよ」
「分かります。攻略通りやったらクリアーできるゲームは一度やったら飽きられてしまいますから。やはり、名作は何度やっても面白いものでないと」
「そうそう、その通りよ」
「私も、ここにあるゲームを楽しもうと思います」
「えぇ。是非、感想を頂戴」
「はい」
そう言って、真紀の所へと向かった。
+ + +
その頃、ブライアンの方では地図を受け取り、警察署に一度連絡を入れ、地図の指す所に警察を要請した。
それから、ブライアンはそのまま『キングスワーク』に残り、ハッキングの様子を見ていた。
「どうだ、やれそうか?」
ウィルはパソコンでカタカタと早い速度で打ち込む社員に聞いた。
「いや、まだ分かりません。相手の成長がはやすぎます。次から次へとパターンを変えてきますし、何より本当に相手は人間でしょうか?」
「どういうことだ?」
「いえ、こちらは他のコンピューターとは桁違いに反応の早いソフトですし、何よりハッカーの使うパソコンが量子コンピューターでなければ、本来ここまで苦戦するなんてあり得ないんですよ。だけど、量子コンピューターは市販化されてないんです。何故なら政府が、これ以上ハッカー技術を上げないよう、市販化はまだ認められていないんです。ですから、量子コンピューターの開発をしている企業以外に量子コンピューターを持っている人間はいないはずです。そうなると、計算速度に劣る通常のコンピューターにここまでやられる理由が分からないんです」
「なら、量子コンピューター以外にあり得るとしたら何だか分かるか?」
「そうですね……例えばですが、相手が人間でなくコンピューター自身、つまりAIとかですかね。それでも、計算速度的に対応できないですから、一つのパソコンから複数のネットワークを使い、大規模なハッキングを仕掛けているとすれば・・・・」
「何故、そこまでしてハッキングを仕掛けるんだ?」
「ブライアン刑事、それは私が答えましょう。わが社は、セキリティーに関しても事業を進めておりまして、そのなかには各政府機関のセキリティーについての情報があります」
「なんだと!じゃあ、これはテロか?」
「いえ、もしここまでやるハッカーなら、逆に無駄であることぐらい分かるでしょう。正直、これが人間なら賢いハッカーとしか言い様がありません。そして、それこそ賢いハッカーなら分かるでしょうが、政府機関のセキリティーは一つではありません。こちらが受け持つセキリティーが何者かに知れた場合、政府はそのセキリティーを即刻別のセキリティーへと変えれば無意味になります。もし、政府のネットワークに入りたいなら、尚更直接政府のネットワークへとハッキングするはずです」
「じゃあ、犯人の目的はなんだ?」
「おそらく、社長ではないかと」
「キングさんがか?」
「はい。キングさんは一度、宇宙エレベーター事件後にこちらに連絡を入れたんです。もしかすると、自分の命が狙われるかもしれないと。勿論、理由を聞きました。すると社長は、キャプラさんが殺されたことを知って、犯人は俺達を狙っているはずだと言ったのです。すぐに警察に連絡を入れた方がいいのではと申しましたが、その・・・・」
「構わない、続けてくれ」
「すいません。警察を信用してないわけではないんですが、警察署の署長が事件をおこしてから社長は、政府に保護の要請を出したんです。勿論、署長さんの件は洗脳されていたと聞いていますし、御冥福を申し上げたいところですが」
「構わない、気にしないでくれ。それで、キング社長は政府に護衛を頼んだんだな」
「はい。社長は、政府にも知り合いがいまして、護衛は了承されました。それで、社長は当分の間政府の元、身元を隠すことにしたんです」
「だが、今ハッカーの攻撃を受け、それが万が一ハッキングに成功を許すと、社長の居場所がバレてしまうってわけか。つまり、犯人の目的はそれなんだな」
「はい」
「なら、今から政府に言って居場所を変えてもらうことは可能か?」
「可能ですが、それが犯人の狙いだった場合、社長の身は危なくなりますし、変に移動させるとリスクが出てきます」
「いや、政府に連絡してから移動するまでの時間を考えると間に合わなくなるぞ。早く連絡を入れろ」
「分かりました。では、早速」
「いえ、間に合いません。残念ですが、たった今、侵入を許しました」
「なにっ!?」
パソコン画面は次々と勝手に動く。完全に、ハッカーに乗っ取られてしまった。
+ + +
その頃、真紀達は大変なことになっているとは知らず、普通にゲームを楽しんでいた。
「あー、負けた~」
「真紀ちゃん、敵に突っ込み過ぎだよ」
「私、チマチマしたの嫌い」
「本当、真紀ちゃんは分かりやすいんだから」
「もう一回やろ」
そう言って、スタートボタンを押そうとした時、突然真紀の腰に刀があらわれた。
「強者よ」
「何であらわれるの!消えててよ」
「いや・・・強者よ、遊戯にひたっている場合ではないぞ。敵の反応があった」
「!、もしかして奴らがあらわれたの?」
「そのようだ。この建物の中にいる」
「分かった。案内して」
「承知した」
「ちょっとふきちゃん、私行ってくる」
「え?ちょっと、どこ行くの」
しかし、真紀は答えずそのまま駆け足で行ってしまった。
ーー
「どこにいるの?」
「そこを右だ」
「あの部屋ね」
真紀は勢いよくその部屋に入った!
「え?」
「ん?」
「おい、どうしてここに?」
そこにはブライアン刑事とウィルがいた。
「あれ?」
「今は取り込み中だからあとにしてくれないか」
「ごめんなさい」
そう言って、真紀は部屋を出ようとした時、真紀の腰にぶらさがっている刀がカタカタと鳴り出した。
「強者よ、どこへ行く?敵はこの部屋にいる」
「え?」
真紀は振り返り部屋を見渡した。しかし、そこにいるのはやはり、ブライアンとウィルとここで働く社員が数名いるだけだった。
「いないじゃん」
「感じないか、強者よ。あのパソコンから、敵の気配がするのだ」
確かに、パソコンはそこにあった。しかし、
「パソコンから気配がするってどういうこと?」
「画面を見れば分かろう」
真紀は言われるまま、パソコンに近づき「ごめん、ちょっと見せて」そう言って、パソコン画面を見た。
そこには、真っ黒い画面の中に無数の数字がずらっと勢いよく流れていた。
「なにこれ?」
「今、ハッキングを受けてるところだ。セキリティーは破られ、今はこちらではどうしようもできない状況だ」
「それって?」
「乗っ取られてるんだ」
すると、刀がカタカタと鳴り出した。
「これは奴の仕業だ」
「奴?」
「六大武将が一人、龍。電龍とも言われる武将の武具は策をたてる頭脳だ。叡知とも呼べる頭脳を持つ武将に実態はない。かつては人の脳に突然あらわれ、その脳の持ち主を操っていたが、今はどうやらパソコン内部にあるコンピューターが彼の住まいとなったらしい」
「コンピューターの中に敵がいるって言うの?」
「おそらく、かつて龍が人間の脳を住みかにしたように、奴はどっかのパソコンから突然あらわれたのだろう。宇宙エレベーターのハッキングもおそらく龍の仕業だろう」
「つまり、そのパソコンの持ち主は無実だったってこと?」
「そうなるな」
真紀はそれを聞いて青ざめた。ニュースでは確かハッカーは軍によって射殺されたとあった。つまり、無実の人がその時命を失ったことになる!
真紀の怒りがこみ上げてきた。
「どうすればいいの?」
「奴は今やコンピューターにしか生息できない。奴が今目の前にあるコンピューターに侵入したと言うなら、奴をそこから追い出さないよう、外部からネットワークを遮断するのだ。そうすれば、奴はそこから出られなくなり」
「ようはその後、こいつをぶっ壊せばいいんだね」
「うむ」
「ウィルさん、お願いがあります」
「うん?なんだね」
「このパソコンのネットワークを遮断して下さい」
「分かった」
ウィルは、社員に目で合図を送ると、それを了解した社員は、有線ケーブルを外し、施設の無線ランを無効にした。
すると、それに反応したのか、画面が急に真っ赤になった。
「なんだ、これは?」
「ウィルさん、ハッキングが止まりました」
すると、刀が再び語りだした。
「よし、これで龍は閉じ込められた」
「あとはぶっ壊す!」
そう言って、刀を鞘に納めたまま、バットのようにパソコン画面に向かって振りかざした。
バンッ!バンッ!バンッ!
キィィーーーーーー!!
妙な悲鳴のような音を最後に、パソコンは完全に壊れた。
「ふぅーー」
「強者よ、気がはれたか?」
「いや、全然。命を奪われた彼の報いが晴れることなんてないよ。だって、こんなことしたって、彼は生き返らないんだから」
それを聞いた刀は、そのままうっすらと消えていった。
「えーと、それで終わったのかな?」
「はい、終わりました」
「そうか、ありがとう」
お礼を真紀に言うウィルに、ブライアンは方を手にのける。
「ウィルさん、まだ安心は早いです。確認の為、キング社長に連絡を入れて下さい」
「分かりました」
そう言って、ブライアンに言われた通り連絡を入れる為、その場を立ち去った。
「真紀ちゃん、私からも言わせてくれ。よくやってくれた」
「いえ。それより、あの答えですが1749ですよね」
「え?」
「379759265359の中に4桁の数字が隠されている」
「あぁ、車の中で問題を出したアレか。よく分かったな」
「円周率の3.14を思い出したんです。だけど、1と4の数字だけ違ってました。1は7になっていて、4は9になっていた。そのまま数字を並べると4桁の数字になるってわけですね」
「正解だ。やるなぁ、かなり自信があったんだがな」
「ふふん、やるときゃやるんです!」
「なら、私から最後の問題だ。3635215641XY19の意味を答えよ。これに答えられたら、高級レストラン食べ放題のご馳走を用意しよう」
「むむむむ。その挑戦、受けた!」
「お、楽しみにしてるぞ」
そう言って、一件落着した二人は山吹の元へ行き、ゲームざんまい楽しんだのだった。
「え?・・・・うっ・・・・」
「あはは、頼むから車内で吐かないでくれよ。これ警察署からパクった車だからな」
「公用車なんですか?」
「悪いな。基本バイクなもんで、自分の車はちっこいんだわ」
「バイクなんですか」
「あぁ。ここじゃあ交通量が多いからバイクの方がはやく目的地につけるんだ」
そう言いながら、ブライアンは車を走らせていた。
因みに、ブライアンと一緒にいる真紀と山吹だが、宇宙エレベーターの一件でその場にいた参考人として、現在アメリカを長期間滞在していた。
勿論、政治の官僚達は長期滞在を拒否し、自国へと帰国した。それもそのはずであり、帰る彼らを止めてまで更なる関係悪化は望んでいない。警察としては、証人がいなくなるのは困る話だが、外交としての政府からの圧力がそれを
上回ったのだ。
結局、残った真紀達(証人)は、長期間のアメリカ滞在を楽しむ為、海と言えばビーチ!……とはいかず、(真紀は泳げず、山吹は日焼けを気にしてか海は嫌い)な二人の為、ブライアンは海岸近くのある企業へと社会科見学に招待したのだ。その企業は、量子コンピューターの開発を成功させ、特許を取得した企業である。そこには色々なゲームもあり、試作品を楽しむのが目的である。
「だけど、どうしてその企業がオッケーしてくれたんですか?一般公開はないんですよね?」
「あぁ、それなんだがこれは機密事項なんで内緒にして欲しいんだが、量子コンピューターにハッキングされ、ウイルスに感染したらしいんだ。普通は、量子コンピューターのセキュリティに普通のコンピューターが挑んでも勝ち目がないはずなんだが、それに勝ってしまって、企業にとっては赤っ恥かかされたわけだ。そこで、ハッキング仕掛けウイルスを流し込んだ犯人を探すことになったんだが、俺がその捜査をしている間だけ、二人の見学が許可されたってわけだ」
「ハッキングですか?犯人の狙いはなんですか」
「企業の情報だろうよ」
「成る程」
「ただ、気になるのはこうも腕のたつハッカーが続けて問題おこすんだなと」
「確かに、宇宙エレベーターの一件を少し考えてしまいますが関係性は今のところないんですよね」
「あぁ、ご名答だ」
「それでも気になったからこの事件を担当したんですね」
「あはは、まるでカウンセリングを受けた気分だ。君は頭がさえてるんだね」
「えぇ、誰かさんと違いまして」
山吹はそう言って、隣を見た。相変わらず乗り物酔いしてる真紀を見て思わずため息をはく。
「なぁ、頼むから本当に吐かないでくれよ」
「ブライアンさん、あとどれぐらいでつきますか?真紀ちゃんの顔色がブルーベリーのような色になって、今にもはじけそうなんですが」
「それは面白くない冗談だ。そうだ!真紀、別のこと考えると楽になるかもしれない。俺の知り合いはそれでのりこえた」
「別…の…こと?」
「おい、本当に大丈夫か?そうだな……じゃあ気を他に集中できるよう問題をだそう。今から言う数字のあとに続く数字を言ってくれ。じゃあ、いくぞ。8172635……その次に続く数字がなんなのか答えてくれ」
「81……えーと、なんでしたっけ?」
「あっ!分かりました。答えは4ですね。8172635を二人の数字と組ませると、81、72、63になって、どれもかけ算の九の段の答えになるので、余った数字の5のペアになるのは4」
「正解。簡単過ぎたかな?じゃあ、次はどうかな?今度も数字の問題。?に入る数字を答えてくれ。じゃあ、いくぞ。
91191117151?066060080
どうだ、これは難問じゃないかな」
「いえ、分かりました」
「なにっ!」
「911で分かりました。緊急連絡先ですね。北アメリカの緊急連絡の番号をならべたんですよね。アメリカは911、カナダも同じく911、サンピエールは2桁の緊急連絡先が3つあって、17と15と18。順番通りに数字が並んでいるので、答えは8ですね」
「あはは……凄いな」
「えへへ。もっと難しい問題出してくださいよ」
「おっ、言ったな。なら、出題者のプライドをかけてリベンジだ。次の数字から隠された4桁の数字を答えよ!
379759265359
これは自信大有りだ」
「え?数字の中に数字が隠れているんですか?」
「そうだ」
「うーん・・・・ちょっと難しいかも」
「どうだ?真紀ちゃんも他のこと考えてると、車の酔いなんて忘れるだろ」
「うっ・・・♪@○Ⅲ※○▽♯」
「きゃあああーー!!」
「おい、マジか!」
「頭の中で数字がぐるぐる回ってる・・・・」
「どうやら数字は逆効果だったみたいですね」
「そう……みたいだな」
ブライアンは少し涙目になって答えた。
+ + +
一度、車を洗浄にまわし、真紀達はそこから徒歩で向かった。
そしてたどり着いたのが『キングスワーク』だった。
「ここって、キングさんが立ち上げた企業の一つですよね」
「そうだ。まぁ、だからと言って英雄のキングがこの会社にあらわれることはないらしいが」
「そうなんですか?」
「他にあちこち会社があるんだ。他の会社や銀行が断った奴らを、キングは雇い可能性を導く。彼の才能はビジネスと言うより人を導くところに才能があるんだ。
例えばだが、会社は才能あるものを求めるものだが、それを育てる能力がなければ中途半端な業績になる。会社をたてた社長とその頃の社員は才能を努力で開花させ、大きな会社へと成功させるが、次世代の社員は才能こそあったが努力を知らない。会社の、上司の指示を待つだけで、会社を本来持ち上げる人物達が、逆に会社にぶらさがっている状態だ。これじゃあ、大企業も最初だけ業績が良かったが、どんどん悪化していく一方になるだろう。そりゃ、不景気になるわな。
そのくせキングは、人間を成功へと導く方法を無意識にやってみせた。結果、彼が立ち上げた会社はどれも業績は安定している。故に、彼に投資する者が増え、彼は世界でもトップクラスの経済王となった。
彼は今でもどこかでスカウトして新たな会社を立ち上げているだろうよ」
「成る程、勉強になりました」
「まぁ、何かツラいことを乗り越えた経験がなければ、人を育てる能力なんて身に付かなかっただろうよ。だから、彼自信も努力で才能を開花した人物だってことさ。
だから結局、才能うんぬんと言うより努力がものを言うってことなんだろうよ」
「そうですね。日本の言葉にも、努力した者は報われるって言葉がありますし」
「ねぇふきちゃん、何で私を見て言うの?」
「あら、それは心当たりがあるってことかな?例えば、数学のテストとか」
「ビクッ!」
「何だ、真紀は数学が苦手なのか?」
「うっ……数字を見ると頭が痛くなる病気で」
「真紀ちゃん、数字を見ると頭が痛くなる病気はないよ」
「いや、多分まだ発見されてない病気なんだよ」
「もうっ!」
山吹は頬を膨らませる。
「まさか、それでさっき吐いたのか?早く言ってくれよそう言うことなら」
ブライアンは再び涙目になる。
「あれ、本当に黙って借りた公用車なんだから」
「すいません……」
「と、とにかく中に入りませんか?」
山吹に言われ、ブライアンは涙を拭い「そうだな」と言って、鞄からメモ帳を取りだし、『キングスワーク』の中へと足を踏み入れた。
+ + +
受付に行くと、若いお姉さんが出迎えた。
「ようこそ『キングスワーク』に。御用件をどうぞ」
「私はブライアン、警察だ」
そう言って、警察手帳を取りだし受付の人に見せた。
「そちらから要請があって来た」
「あっ、警察の方でしたか。只今、担当者と連絡を入れますので少々お待ちください」
そう言って、受付のお姉さんは電話を取り、内線で連絡をとった。
しばらくすると、小太りのメガネをかけた男性がこちらに向かって来た。
「お待たせしました。わたくし、こちらの責任者ウィルと申します」
男は名刺を取りだし、ブライアン刑事にそれを手渡した。ブライアンはそれをちょっと確認すると、すぐにその名刺をしまいこんだ。
「それで、こちらにハッカーによるハッキングを受けたと連絡を受けましたが」
「えぇ、そうです。今、優秀なスタッフがハッキングに対応しています」
「正直、警察からはあなた方のスタッフより優秀な捜査官はいません」
「えぇ、それは構いません。ハッキングはこちらでなんとかします。警察にはうちにハッキングを仕掛けたハッカーを逮捕して頂きたいです」
「それはお任せ下さい。それより、ハッキングは阻止できそうですか?」
「うちはコンピューター関係の仕事ですので心配は入りませんと、言いたいところですがかなり苦戦しています」
「なにっ!?ここではかなりの有名なコンピューター企業なのに?」
「お褒めの言葉ありがとうございます。正直、最初は我々もうちにハッキングするとはいい度胸だと思っていましたよ。おそらく、ハッカーによる腕試しじゃないかと。しかし、どうも普通のハッカーではないようで、かなり早いですし、かなり複雑で、複数のハッカーによるものかと最初は思いました。ですが、どうも一つのコンピューターからによるハッキングだと分かって、ますます相手が何者か分からなくなりました」
「ハッキング元の逆探知は出来たんですね?」
「えぇ、今もハッカーによる攻撃が続いているので、対応とは別に逆探知をし、成功しています。今、地図をお出ししますのでお待ちください」
「あぁ、それなら私も一緒に取りに行こう。他にも聞きたいことがあるんで」
「分かりました。では、こちらへ」
「あっ、その前に彼女らのことは連絡したと思うが」
「あぁ、いいですよ。では、受付の人にお願いしときましょう」
「すいません、こんな時に」
「正直、終わっていると思ったんですよね?」
「えぇ、私もバカなハッカーの腕試しだろうと思っていました」
「いいんですよ。それに、私達は企業向けコンピューターの開発以外にゲーム産業にも手を出したばかりで、子ども達の意見が直に聞けるので、こちらとしては逆に歓迎ですよ」
「そうか、なら良かった」
「では頼む」
ウィルは受付にあとのことを頼むと、ブライアン刑事と共に別の部屋へと向かった。
「それじゃあ、私が案内しますのでついてきて下さい」
「はーい」
「分かりました。よろしくお願いします」
真紀達は、お姉さんに連れられ別のコンピューター室へと向かった。
+ + +
お姉さんに連れられついた部屋は、ゲーマーがはしゃいで喜びそうな数台の古いゲーム機と、パソコンが数台あった。
「わぁー、まるでゲーマーセンターみたい」
「うふふ、そうかも知れませんね。ここの社員は、休み時間にここに立ち寄り時折遊んでらっしゃるので」
「仕事場に遊び場があるなんて楽しそうな会社ですね」
「えぇ、そうそう他の会社にあることではないですね。私もここに入社した時はビックリしました。でも、そういった娯楽施設が職場にあると、そこの会社で働く社員はストレスチェックでも他の会社よりいい結果になるんです。各企業のメンタルヘルスの講義でも、採用されてるんです」
「へぇ、そうなんですか」
すると、遠くから早速ピコピコと遊ぶ真紀がいた。
「早っ!いつの間に」
「うふふ、ああやって自分達会社が作ったゲームを楽しんでもらえると、実際に私が作った訳じゃなくてもうれしいものね」
「あの、一つ聞いていいですか?」
「はい、何かな?」
「あそこにあるパソコンなんですが、あれも量子コンピューターなんですよね?」
「そうよ。見た目は普通のコンピューターと変わらないけど、中身は最新式のシステム。他のコンピューターよりも計算能力が高く、ゲーム事態も複雑なものにすることが可能になったの。これで、ゲーマーのゲーム攻略は難易度を増し、敵の複数の攻撃パターンを全て計算することとかが、ほぼ不可能になったわ。攻略を考えるのは分かるけど、パターンが分かってしまうとゲーム事態もろくなるの。つまり、本能や、勘、敵の動きで忠実に攻撃を回避したりして欲しいの。その方が、しょせんコンピューターだけどリアル感があるでしょ?それに、複数の攻撃パターンが複雑に出されることで、ゲーマーも遣り甲斐を出すと思うのよ」
「分かります。攻略通りやったらクリアーできるゲームは一度やったら飽きられてしまいますから。やはり、名作は何度やっても面白いものでないと」
「そうそう、その通りよ」
「私も、ここにあるゲームを楽しもうと思います」
「えぇ。是非、感想を頂戴」
「はい」
そう言って、真紀の所へと向かった。
+ + +
その頃、ブライアンの方では地図を受け取り、警察署に一度連絡を入れ、地図の指す所に警察を要請した。
それから、ブライアンはそのまま『キングスワーク』に残り、ハッキングの様子を見ていた。
「どうだ、やれそうか?」
ウィルはパソコンでカタカタと早い速度で打ち込む社員に聞いた。
「いや、まだ分かりません。相手の成長がはやすぎます。次から次へとパターンを変えてきますし、何より本当に相手は人間でしょうか?」
「どういうことだ?」
「いえ、こちらは他のコンピューターとは桁違いに反応の早いソフトですし、何よりハッカーの使うパソコンが量子コンピューターでなければ、本来ここまで苦戦するなんてあり得ないんですよ。だけど、量子コンピューターは市販化されてないんです。何故なら政府が、これ以上ハッカー技術を上げないよう、市販化はまだ認められていないんです。ですから、量子コンピューターの開発をしている企業以外に量子コンピューターを持っている人間はいないはずです。そうなると、計算速度に劣る通常のコンピューターにここまでやられる理由が分からないんです」
「なら、量子コンピューター以外にあり得るとしたら何だか分かるか?」
「そうですね……例えばですが、相手が人間でなくコンピューター自身、つまりAIとかですかね。それでも、計算速度的に対応できないですから、一つのパソコンから複数のネットワークを使い、大規模なハッキングを仕掛けているとすれば・・・・」
「何故、そこまでしてハッキングを仕掛けるんだ?」
「ブライアン刑事、それは私が答えましょう。わが社は、セキリティーに関しても事業を進めておりまして、そのなかには各政府機関のセキリティーについての情報があります」
「なんだと!じゃあ、これはテロか?」
「いえ、もしここまでやるハッカーなら、逆に無駄であることぐらい分かるでしょう。正直、これが人間なら賢いハッカーとしか言い様がありません。そして、それこそ賢いハッカーなら分かるでしょうが、政府機関のセキリティーは一つではありません。こちらが受け持つセキリティーが何者かに知れた場合、政府はそのセキリティーを即刻別のセキリティーへと変えれば無意味になります。もし、政府のネットワークに入りたいなら、尚更直接政府のネットワークへとハッキングするはずです」
「じゃあ、犯人の目的はなんだ?」
「おそらく、社長ではないかと」
「キングさんがか?」
「はい。キングさんは一度、宇宙エレベーター事件後にこちらに連絡を入れたんです。もしかすると、自分の命が狙われるかもしれないと。勿論、理由を聞きました。すると社長は、キャプラさんが殺されたことを知って、犯人は俺達を狙っているはずだと言ったのです。すぐに警察に連絡を入れた方がいいのではと申しましたが、その・・・・」
「構わない、続けてくれ」
「すいません。警察を信用してないわけではないんですが、警察署の署長が事件をおこしてから社長は、政府に保護の要請を出したんです。勿論、署長さんの件は洗脳されていたと聞いていますし、御冥福を申し上げたいところですが」
「構わない、気にしないでくれ。それで、キング社長は政府に護衛を頼んだんだな」
「はい。社長は、政府にも知り合いがいまして、護衛は了承されました。それで、社長は当分の間政府の元、身元を隠すことにしたんです」
「だが、今ハッカーの攻撃を受け、それが万が一ハッキングに成功を許すと、社長の居場所がバレてしまうってわけか。つまり、犯人の目的はそれなんだな」
「はい」
「なら、今から政府に言って居場所を変えてもらうことは可能か?」
「可能ですが、それが犯人の狙いだった場合、社長の身は危なくなりますし、変に移動させるとリスクが出てきます」
「いや、政府に連絡してから移動するまでの時間を考えると間に合わなくなるぞ。早く連絡を入れろ」
「分かりました。では、早速」
「いえ、間に合いません。残念ですが、たった今、侵入を許しました」
「なにっ!?」
パソコン画面は次々と勝手に動く。完全に、ハッカーに乗っ取られてしまった。
+ + +
その頃、真紀達は大変なことになっているとは知らず、普通にゲームを楽しんでいた。
「あー、負けた~」
「真紀ちゃん、敵に突っ込み過ぎだよ」
「私、チマチマしたの嫌い」
「本当、真紀ちゃんは分かりやすいんだから」
「もう一回やろ」
そう言って、スタートボタンを押そうとした時、突然真紀の腰に刀があらわれた。
「強者よ」
「何であらわれるの!消えててよ」
「いや・・・強者よ、遊戯にひたっている場合ではないぞ。敵の反応があった」
「!、もしかして奴らがあらわれたの?」
「そのようだ。この建物の中にいる」
「分かった。案内して」
「承知した」
「ちょっとふきちゃん、私行ってくる」
「え?ちょっと、どこ行くの」
しかし、真紀は答えずそのまま駆け足で行ってしまった。
ーー
「どこにいるの?」
「そこを右だ」
「あの部屋ね」
真紀は勢いよくその部屋に入った!
「え?」
「ん?」
「おい、どうしてここに?」
そこにはブライアン刑事とウィルがいた。
「あれ?」
「今は取り込み中だからあとにしてくれないか」
「ごめんなさい」
そう言って、真紀は部屋を出ようとした時、真紀の腰にぶらさがっている刀がカタカタと鳴り出した。
「強者よ、どこへ行く?敵はこの部屋にいる」
「え?」
真紀は振り返り部屋を見渡した。しかし、そこにいるのはやはり、ブライアンとウィルとここで働く社員が数名いるだけだった。
「いないじゃん」
「感じないか、強者よ。あのパソコンから、敵の気配がするのだ」
確かに、パソコンはそこにあった。しかし、
「パソコンから気配がするってどういうこと?」
「画面を見れば分かろう」
真紀は言われるまま、パソコンに近づき「ごめん、ちょっと見せて」そう言って、パソコン画面を見た。
そこには、真っ黒い画面の中に無数の数字がずらっと勢いよく流れていた。
「なにこれ?」
「今、ハッキングを受けてるところだ。セキリティーは破られ、今はこちらではどうしようもできない状況だ」
「それって?」
「乗っ取られてるんだ」
すると、刀がカタカタと鳴り出した。
「これは奴の仕業だ」
「奴?」
「六大武将が一人、龍。電龍とも言われる武将の武具は策をたてる頭脳だ。叡知とも呼べる頭脳を持つ武将に実態はない。かつては人の脳に突然あらわれ、その脳の持ち主を操っていたが、今はどうやらパソコン内部にあるコンピューターが彼の住まいとなったらしい」
「コンピューターの中に敵がいるって言うの?」
「おそらく、かつて龍が人間の脳を住みかにしたように、奴はどっかのパソコンから突然あらわれたのだろう。宇宙エレベーターのハッキングもおそらく龍の仕業だろう」
「つまり、そのパソコンの持ち主は無実だったってこと?」
「そうなるな」
真紀はそれを聞いて青ざめた。ニュースでは確かハッカーは軍によって射殺されたとあった。つまり、無実の人がその時命を失ったことになる!
真紀の怒りがこみ上げてきた。
「どうすればいいの?」
「奴は今やコンピューターにしか生息できない。奴が今目の前にあるコンピューターに侵入したと言うなら、奴をそこから追い出さないよう、外部からネットワークを遮断するのだ。そうすれば、奴はそこから出られなくなり」
「ようはその後、こいつをぶっ壊せばいいんだね」
「うむ」
「ウィルさん、お願いがあります」
「うん?なんだね」
「このパソコンのネットワークを遮断して下さい」
「分かった」
ウィルは、社員に目で合図を送ると、それを了解した社員は、有線ケーブルを外し、施設の無線ランを無効にした。
すると、それに反応したのか、画面が急に真っ赤になった。
「なんだ、これは?」
「ウィルさん、ハッキングが止まりました」
すると、刀が再び語りだした。
「よし、これで龍は閉じ込められた」
「あとはぶっ壊す!」
そう言って、刀を鞘に納めたまま、バットのようにパソコン画面に向かって振りかざした。
バンッ!バンッ!バンッ!
キィィーーーーーー!!
妙な悲鳴のような音を最後に、パソコンは完全に壊れた。
「ふぅーー」
「強者よ、気がはれたか?」
「いや、全然。命を奪われた彼の報いが晴れることなんてないよ。だって、こんなことしたって、彼は生き返らないんだから」
それを聞いた刀は、そのままうっすらと消えていった。
「えーと、それで終わったのかな?」
「はい、終わりました」
「そうか、ありがとう」
お礼を真紀に言うウィルに、ブライアンは方を手にのける。
「ウィルさん、まだ安心は早いです。確認の為、キング社長に連絡を入れて下さい」
「分かりました」
そう言って、ブライアンに言われた通り連絡を入れる為、その場を立ち去った。
「真紀ちゃん、私からも言わせてくれ。よくやってくれた」
「いえ。それより、あの答えですが1749ですよね」
「え?」
「379759265359の中に4桁の数字が隠されている」
「あぁ、車の中で問題を出したアレか。よく分かったな」
「円周率の3.14を思い出したんです。だけど、1と4の数字だけ違ってました。1は7になっていて、4は9になっていた。そのまま数字を並べると4桁の数字になるってわけですね」
「正解だ。やるなぁ、かなり自信があったんだがな」
「ふふん、やるときゃやるんです!」
「なら、私から最後の問題だ。3635215641XY19の意味を答えよ。これに答えられたら、高級レストラン食べ放題のご馳走を用意しよう」
「むむむむ。その挑戦、受けた!」
「お、楽しみにしてるぞ」
そう言って、一件落着した二人は山吹の元へ行き、ゲームざんまい楽しんだのだった。
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