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10章 隠
02
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~今までのあらすじ~
宇宙エレベーターの一件で重要参考人としてアメリカに長期滞在を余儀なくされた真紀は、アメリカ都市部に突然あらわれた六大武将の冂獣と戦うことに。
その頃、留守番していた山吹の所に赤ずきんがあらわれ、さくらが行方不明であることを知らされたのだった。
02
地下通路ーーー
真紀は冂獣の居場所を確認し、再び攻撃体勢にうつった。
「我が主よ、分かっていると思うが戦況というのは予想通りにならないものだ。常に警戒しても予測出来ないのが現実だ。それでも、我が身を信じるしかない」
「分かってるって。じゃあいくよ」
真紀は携帯をデコにあて、タオルで固定し、ライトであたりを照らした。
「携帯のライトじゃ、ちょっといまいちか」
それでもないよりましかと、真紀はそのまま突き進む。
グオオォォーーー!!!
真紀は先程の兵から頂戴した手榴弾を出した。
「どうせなら派手にいこうか」
そう言って真紀は冂獣の後方めがけてそれを投げ飛ばした。そしてすぐに衝撃に備える体勢にうつった。
ドーーーーーーーン!!
激しい振動と共に、今の衝撃で地下通路の壁に亀裂が走った。
冂獣は激しく唸り、自身後方にめがけて攻撃した。しかし、そこにあるのはただの壁であり、冂獣のしていることは子どもが拗ねて壁に八つ当たりしている様に見えた。
「参る!」
真紀は冂獣の大暴れで隙だらけの奴の腸に近づき、そのまま懐に刃を放った。
「斬!」
しかし、ざっくり入った刃だが、巨体な冂獣にはあまり深手になる傷にはならなかった。
グオオオオオオオオオオオオオオ!!
怒りだした冂獣に真紀は一旦後ろへ下がる。
「こいつデカすぎ」
冂獣は再び見えない敵にめがけてあちこちに攻撃する。当然全て空振りし、壁に激突。結果、壁を次々に破壊していく。
「我が主よ、このままではまずいぞ」
「うん」
もはや、かなりの傷を与え耐久敵に負担していく壁に、地下通路を支える機能はいつ陥落してもおかしくなかった。
「崩れるぞ」
鎧武者の警告に真紀は冂獣から更に離れた。その直後、壁は見事に砕け、一気に土が滝の様に流れ込んできた。
グオッ?
冂獣は何が起きたのか理解出来ず、そのまま土に埋もれていった。
その頃、地上では地下通路の崩落で地面が陥没し、大混乱に至っていた。
各報道ヘリで撮されるその光景に、アメリカ市民はただ見守ることしか出来なかった。
ーーーーー
一旦止まった崩落だが、パラパラとまだ崩れる兆候を見せていた。
「奴は?」
埋もれた冂獣がどうなったのかを確かめるべく、真紀は辺りを見渡した。
しかし、微かに地上の光が照され少し明るくなった地下通路に、奴の姿はなかった。その時、何かを察知した鎧武者は叫んだ。
「上だ!」
真紀は素早く反応し、上を見た。すると、地上から奴の雄叫び声と悲鳴が同時に聞こえてきた。
地下通路の天井辺りにある小さな穴から地上の様子が見え、そこに奴の姿が微かに見えた。
真紀は直ぐに地上へ向かう為、地上に繋ぐ非常階段へと急いだ。
ーーーーー
グオオオオオオォォォォーーー
警察と兵士は、地下通路からあらわれた冂獣にめがけて発泡した。しかし、どの兵器も奴に傷をつけることが出来ず、次々と冂獣に襲われ奴の口の中へと放り込まれていった。
グオッ!?
次々と食い殺していった冂獣に突然、異変が起きた。その頃、やっと地上にたどり着いた真紀は、何が起きているのか理解出来ないでいた。
「何が起きてるの?」
「奴は進化しようとしている」
「進化!?」
「大量に人間を食らった奴は肉体を変化させる。それが奴の力だ」
グオオオオオオオオオオ
冂獣の雄叫びと共に、バキバキと鎧武者が先程言った通り体が変化し、体を黒から赤黒へ、背中からは悪魔のような翼が生えてきた。
冂獣は生まれたばかりの羽を広げバサバサと動かし始めた。
「奴は飛ぶ気らしい。このままでは逃げられるぞ」
「分かってる!」
真紀は走りこみ、奴に飛ばれる前に攻撃をしかけようとした。しかし、冂獣の尻尾が反応し邪魔する真紀に攻撃をしかけた。
「くっ」
真紀は刀で飛んできた尻尾を受け止めだが、冂獣はその隙に飛び立ってしまった。
「おい、真紀」
すると、近くで待機していたブライアンが真紀を呼んだ。
「こっちだ」
ブライアンの後方には既に飛ぶ準備が出来ているヘリがあった。
真紀は準備のいいブライアンに感謝し、素早くそのヘリに乗り込んだ。それに続いてブライアンも乗り込む。
「出してくれ」
ブライアンに言われ、パイロットはヘリを飛ばした。
「何かあった時の逃走用に準備しておいて良かったな。勿論、今は逃げずに奴を追いかける。都市上空であんなのが飛ばれちゃ困るからな。それより何か策はあるのか?」
「まだ考え中」
「奴にさっき兵士が銃を放ったが奴には全く効いていなかった。あいつを倒せるのは真紀しかいないんだろ」
「うん」
「本当は女の子にあいつと戦えなんて言えないんだが……頼む、奴を倒せるのが真紀しかいないのなら、アメリカを救ってくれ」
「そのつもり」
「そうか。なら、あとで褒美をやらなきゃな」
「なら、ご馳走でお願い。今日、朝から何も食べてないから腹ペコ」
「あはは、真紀はこんな時でもよく平気でいられるな。正直、真似できないよ」
「そう?あ、ステーキ食べ放題で」
「あはは、分かった。最高級の肉を食わしてやる」
「もうすぐで奴に追いつきます」
パイロットのアナウンスで真紀とブライアンは一旦話しを中断し前方を見た。そこには、冂獣が空を飛んでいる姿が確認できた。
「何か前よりデカくなってる気がする」
そんなことをボソッと真紀が言った直後、自分達が乗るヘリの真横でミサイルが通過し、冂獣に直撃した。
グオオオオオオォォォォーーー!
「アメリカ兵とやらは学習しないようだな。冂獣相手に通常兵器は通用しないというのに」
鎧武者の言う通り、冂獣はミサイルに直撃しても無傷だった。
冂獣は方向を急転回し、攻撃を仕掛けた軍用ヘリに向かって飛んだ。
軍用ヘリのパイロットは冂獣がこちらに突進して来るのを見て再び攻撃を仕掛けたが、どれもむざんに終わり、パイロットはギリギリのところで操縦をオートにし脱出した。機体を放棄し、パイロットはパラシュートで逃げた。
冂獣は放棄された機体に激突し、爆発と爆風を引き起こし、真紀達の乗るヘリにも突風が当たる。なんとかヘリはパイロットの腕でバランスを取り戻すが、冂獣は更に近くにいる軍用ヘリに向かって突進しだしていた。
「冂獣は目が見えないが、どうもヘリの音で居場所を見つけているようだ」
そう鎧武者が言うも、エンジン音を消すにはエンジンを切る必要があり、そんなことをすればどちらにせよ墜落してしまう。
ブライアンとパイロットは汗をかき対応を考えているなか、真紀は立ち上がりヘリのドアを開けた。
「何をするつもりだ!?」
「アイツに近づけて。アイツにとびうつる」
「バカな……死ぬぞ」
「死なないようなんとかする」
「いや、駄目だ。危険過ぎる」
「このままじゃ、このヘリもやられちゃう」
そんな話しをしていると、2機目のヘリが先程墜落した。それを見たブライアンは舌打ちした。
「分かった。どちらにせよ、次に狙われるのはこっちだ。奴から近づいてくる。こっちはパラシュートとかないから必死に回避するが、その間に奴に飛び降りれるか?」
「それでいい」
「かなり無茶だぞ」
「そっちこそ、アイツから逃げるのは無茶にならないの?」
「確かにそうだな。だが、絶対生きて戻るんだぞ」
「そっちこそ」
「あぁ、褒美の約束しちまったから死ぬわけにもいかないしな」
「そうそう、ステーキね」
「分かってるよ」
「来ます!」
パイロットがそう言って、冂獣の体当りを回避する。ヘリは激しく揺れ、立ってのバランスを保つのが難しい。しかも、動く相手にうまく移らなければならない。確かに、ブライアンが言う通り無茶だった。しかも、このヘリが保ってられるのも時間の問題。真紀は今までにない汗をかきながら、必死に奴を見定め何とか飛び移るタイミングを探る。
空振りした冂獣は、大きく回り再び突進してきた。ヘリは必死に横に回避するが、冂獣の羽が大きく常にギリギリで、いつ羽がヘリに直撃してもおかしくなかった。だからと言って、上に回避したら冂獣の羽から引き起こされる突風が真下からヘリに直撃し、バラバラになってしまう。
冂獣は三度目の突進を仕掛けてきた。今度は少し横上に回避し、丁度真紀からは斜め下に冂獣がいるかたちになった。この貴重なタイミングに真紀は思いきって奴に向かって飛んだ。
「届けーーー!」
真紀は必死に腕を伸ばす。その手に何とか掴むことが出来た。
必死に冂獣の尻尾に捕まる真紀に気づいた奴は、尻尾を激しく振る。それに振り落とされないようしがみつく真紀。
冂獣はしびれをきかせ、デタラメに飛び回る。その間に冂獣からマークが外れたヘリは素早くその場から離れた。
真紀は先程のヘリと激しく動く冂獣に酔い吐きそうになるが必死にこらえ、今に集中する。
「まずはこの邪魔な尻尾を斬る!」
真紀はにょきにょきと尻尾の上に上り、自身の下に伸びる尻尾の先をめがけて刃を放った。
ブチッ!
切り離された尻尾は短くなり、その激痛に冂獣は吠えた。
「次は羽!」
真紀はゴツゴツした冂獣の体をロッククライミングをするかのようにヨチヨチとのぼる。そして、冂獣の羽の根元まで辿り着くと、真紀は再び刀を奮った。
バサッ!
ザッパリ根元を切り落とし、羽はそのまま地上に落下した。羽が片方だけになり、バランスを崩した冂獣はもはや飛べなくなり、そのまま先程の羽と同様に地面に落下するだけだった。
真紀は必死にしがみつき衝撃に備える。冂獣も、片方の羽を必死に動かし衝撃を少なくしようとするが、あまりの巨体に落下速度は落ちるどころか早まった。結果
ズドーーーーン!!
地面を叩き割りながら落ちた冂獣は悲鳴のような叫びをあげる。
「ふぅ……」
何とか生きられた真紀は、全身に激しい痛みを感じるもなんとか動くことが出来た。
グルルル……
かなり弱まった冂獣は、それでも少しずつ動かしていく。真紀は冂獣の上を歩き、奴の首もとまで来た。
「これで終わり!」
真紀は刀の先を奴の首筋に定め、脇を閉めるように刀を一旦引く。そして、名一杯引いた後に突き抜けるように鋭く、素早く一直線に放った。
「 涙溜貫凪 」
鎧武者の刀技が直撃し、冂獣の首に風穴を開けた!
宇宙エレベーターの一件で重要参考人としてアメリカに長期滞在を余儀なくされた真紀は、アメリカ都市部に突然あらわれた六大武将の冂獣と戦うことに。
その頃、留守番していた山吹の所に赤ずきんがあらわれ、さくらが行方不明であることを知らされたのだった。
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地下通路ーーー
真紀は冂獣の居場所を確認し、再び攻撃体勢にうつった。
「我が主よ、分かっていると思うが戦況というのは予想通りにならないものだ。常に警戒しても予測出来ないのが現実だ。それでも、我が身を信じるしかない」
「分かってるって。じゃあいくよ」
真紀は携帯をデコにあて、タオルで固定し、ライトであたりを照らした。
「携帯のライトじゃ、ちょっといまいちか」
それでもないよりましかと、真紀はそのまま突き進む。
グオオォォーーー!!!
真紀は先程の兵から頂戴した手榴弾を出した。
「どうせなら派手にいこうか」
そう言って真紀は冂獣の後方めがけてそれを投げ飛ばした。そしてすぐに衝撃に備える体勢にうつった。
ドーーーーーーーン!!
激しい振動と共に、今の衝撃で地下通路の壁に亀裂が走った。
冂獣は激しく唸り、自身後方にめがけて攻撃した。しかし、そこにあるのはただの壁であり、冂獣のしていることは子どもが拗ねて壁に八つ当たりしている様に見えた。
「参る!」
真紀は冂獣の大暴れで隙だらけの奴の腸に近づき、そのまま懐に刃を放った。
「斬!」
しかし、ざっくり入った刃だが、巨体な冂獣にはあまり深手になる傷にはならなかった。
グオオオオオオオオオオオオオオ!!
怒りだした冂獣に真紀は一旦後ろへ下がる。
「こいつデカすぎ」
冂獣は再び見えない敵にめがけてあちこちに攻撃する。当然全て空振りし、壁に激突。結果、壁を次々に破壊していく。
「我が主よ、このままではまずいぞ」
「うん」
もはや、かなりの傷を与え耐久敵に負担していく壁に、地下通路を支える機能はいつ陥落してもおかしくなかった。
「崩れるぞ」
鎧武者の警告に真紀は冂獣から更に離れた。その直後、壁は見事に砕け、一気に土が滝の様に流れ込んできた。
グオッ?
冂獣は何が起きたのか理解出来ず、そのまま土に埋もれていった。
その頃、地上では地下通路の崩落で地面が陥没し、大混乱に至っていた。
各報道ヘリで撮されるその光景に、アメリカ市民はただ見守ることしか出来なかった。
ーーーーー
一旦止まった崩落だが、パラパラとまだ崩れる兆候を見せていた。
「奴は?」
埋もれた冂獣がどうなったのかを確かめるべく、真紀は辺りを見渡した。
しかし、微かに地上の光が照され少し明るくなった地下通路に、奴の姿はなかった。その時、何かを察知した鎧武者は叫んだ。
「上だ!」
真紀は素早く反応し、上を見た。すると、地上から奴の雄叫び声と悲鳴が同時に聞こえてきた。
地下通路の天井辺りにある小さな穴から地上の様子が見え、そこに奴の姿が微かに見えた。
真紀は直ぐに地上へ向かう為、地上に繋ぐ非常階段へと急いだ。
ーーーーー
グオオオオオオォォォォーーー
警察と兵士は、地下通路からあらわれた冂獣にめがけて発泡した。しかし、どの兵器も奴に傷をつけることが出来ず、次々と冂獣に襲われ奴の口の中へと放り込まれていった。
グオッ!?
次々と食い殺していった冂獣に突然、異変が起きた。その頃、やっと地上にたどり着いた真紀は、何が起きているのか理解出来ないでいた。
「何が起きてるの?」
「奴は進化しようとしている」
「進化!?」
「大量に人間を食らった奴は肉体を変化させる。それが奴の力だ」
グオオオオオオオオオオ
冂獣の雄叫びと共に、バキバキと鎧武者が先程言った通り体が変化し、体を黒から赤黒へ、背中からは悪魔のような翼が生えてきた。
冂獣は生まれたばかりの羽を広げバサバサと動かし始めた。
「奴は飛ぶ気らしい。このままでは逃げられるぞ」
「分かってる!」
真紀は走りこみ、奴に飛ばれる前に攻撃をしかけようとした。しかし、冂獣の尻尾が反応し邪魔する真紀に攻撃をしかけた。
「くっ」
真紀は刀で飛んできた尻尾を受け止めだが、冂獣はその隙に飛び立ってしまった。
「おい、真紀」
すると、近くで待機していたブライアンが真紀を呼んだ。
「こっちだ」
ブライアンの後方には既に飛ぶ準備が出来ているヘリがあった。
真紀は準備のいいブライアンに感謝し、素早くそのヘリに乗り込んだ。それに続いてブライアンも乗り込む。
「出してくれ」
ブライアンに言われ、パイロットはヘリを飛ばした。
「何かあった時の逃走用に準備しておいて良かったな。勿論、今は逃げずに奴を追いかける。都市上空であんなのが飛ばれちゃ困るからな。それより何か策はあるのか?」
「まだ考え中」
「奴にさっき兵士が銃を放ったが奴には全く効いていなかった。あいつを倒せるのは真紀しかいないんだろ」
「うん」
「本当は女の子にあいつと戦えなんて言えないんだが……頼む、奴を倒せるのが真紀しかいないのなら、アメリカを救ってくれ」
「そのつもり」
「そうか。なら、あとで褒美をやらなきゃな」
「なら、ご馳走でお願い。今日、朝から何も食べてないから腹ペコ」
「あはは、真紀はこんな時でもよく平気でいられるな。正直、真似できないよ」
「そう?あ、ステーキ食べ放題で」
「あはは、分かった。最高級の肉を食わしてやる」
「もうすぐで奴に追いつきます」
パイロットのアナウンスで真紀とブライアンは一旦話しを中断し前方を見た。そこには、冂獣が空を飛んでいる姿が確認できた。
「何か前よりデカくなってる気がする」
そんなことをボソッと真紀が言った直後、自分達が乗るヘリの真横でミサイルが通過し、冂獣に直撃した。
グオオオオオオォォォォーーー!
「アメリカ兵とやらは学習しないようだな。冂獣相手に通常兵器は通用しないというのに」
鎧武者の言う通り、冂獣はミサイルに直撃しても無傷だった。
冂獣は方向を急転回し、攻撃を仕掛けた軍用ヘリに向かって飛んだ。
軍用ヘリのパイロットは冂獣がこちらに突進して来るのを見て再び攻撃を仕掛けたが、どれもむざんに終わり、パイロットはギリギリのところで操縦をオートにし脱出した。機体を放棄し、パイロットはパラシュートで逃げた。
冂獣は放棄された機体に激突し、爆発と爆風を引き起こし、真紀達の乗るヘリにも突風が当たる。なんとかヘリはパイロットの腕でバランスを取り戻すが、冂獣は更に近くにいる軍用ヘリに向かって突進しだしていた。
「冂獣は目が見えないが、どうもヘリの音で居場所を見つけているようだ」
そう鎧武者が言うも、エンジン音を消すにはエンジンを切る必要があり、そんなことをすればどちらにせよ墜落してしまう。
ブライアンとパイロットは汗をかき対応を考えているなか、真紀は立ち上がりヘリのドアを開けた。
「何をするつもりだ!?」
「アイツに近づけて。アイツにとびうつる」
「バカな……死ぬぞ」
「死なないようなんとかする」
「いや、駄目だ。危険過ぎる」
「このままじゃ、このヘリもやられちゃう」
そんな話しをしていると、2機目のヘリが先程墜落した。それを見たブライアンは舌打ちした。
「分かった。どちらにせよ、次に狙われるのはこっちだ。奴から近づいてくる。こっちはパラシュートとかないから必死に回避するが、その間に奴に飛び降りれるか?」
「それでいい」
「かなり無茶だぞ」
「そっちこそ、アイツから逃げるのは無茶にならないの?」
「確かにそうだな。だが、絶対生きて戻るんだぞ」
「そっちこそ」
「あぁ、褒美の約束しちまったから死ぬわけにもいかないしな」
「そうそう、ステーキね」
「分かってるよ」
「来ます!」
パイロットがそう言って、冂獣の体当りを回避する。ヘリは激しく揺れ、立ってのバランスを保つのが難しい。しかも、動く相手にうまく移らなければならない。確かに、ブライアンが言う通り無茶だった。しかも、このヘリが保ってられるのも時間の問題。真紀は今までにない汗をかきながら、必死に奴を見定め何とか飛び移るタイミングを探る。
空振りした冂獣は、大きく回り再び突進してきた。ヘリは必死に横に回避するが、冂獣の羽が大きく常にギリギリで、いつ羽がヘリに直撃してもおかしくなかった。だからと言って、上に回避したら冂獣の羽から引き起こされる突風が真下からヘリに直撃し、バラバラになってしまう。
冂獣は三度目の突進を仕掛けてきた。今度は少し横上に回避し、丁度真紀からは斜め下に冂獣がいるかたちになった。この貴重なタイミングに真紀は思いきって奴に向かって飛んだ。
「届けーーー!」
真紀は必死に腕を伸ばす。その手に何とか掴むことが出来た。
必死に冂獣の尻尾に捕まる真紀に気づいた奴は、尻尾を激しく振る。それに振り落とされないようしがみつく真紀。
冂獣はしびれをきかせ、デタラメに飛び回る。その間に冂獣からマークが外れたヘリは素早くその場から離れた。
真紀は先程のヘリと激しく動く冂獣に酔い吐きそうになるが必死にこらえ、今に集中する。
「まずはこの邪魔な尻尾を斬る!」
真紀はにょきにょきと尻尾の上に上り、自身の下に伸びる尻尾の先をめがけて刃を放った。
ブチッ!
切り離された尻尾は短くなり、その激痛に冂獣は吠えた。
「次は羽!」
真紀はゴツゴツした冂獣の体をロッククライミングをするかのようにヨチヨチとのぼる。そして、冂獣の羽の根元まで辿り着くと、真紀は再び刀を奮った。
バサッ!
ザッパリ根元を切り落とし、羽はそのまま地上に落下した。羽が片方だけになり、バランスを崩した冂獣はもはや飛べなくなり、そのまま先程の羽と同様に地面に落下するだけだった。
真紀は必死にしがみつき衝撃に備える。冂獣も、片方の羽を必死に動かし衝撃を少なくしようとするが、あまりの巨体に落下速度は落ちるどころか早まった。結果
ズドーーーーン!!
地面を叩き割りながら落ちた冂獣は悲鳴のような叫びをあげる。
「ふぅ……」
何とか生きられた真紀は、全身に激しい痛みを感じるもなんとか動くことが出来た。
グルルル……
かなり弱まった冂獣は、それでも少しずつ動かしていく。真紀は冂獣の上を歩き、奴の首もとまで来た。
「これで終わり!」
真紀は刀の先を奴の首筋に定め、脇を閉めるように刀を一旦引く。そして、名一杯引いた後に突き抜けるように鋭く、素早く一直線に放った。
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