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◆君のための歌◆
◇すれ違い3◇
しおりを挟むしばらく歩くと突然梶原くんは立ち止まった。
「いきなり連れ出してごめんな…」
「大丈夫だけど…どしたの?」
「なんか…気に入らねぇんだよな…」
先生のこと…?
梶原くん、何か先生にされたのかな…?
「何かされたの…?」
「何かって…それは…」
はぐらかす梶原くん。
一体どうしたんだろ…
「俺が星野を好きだからかもしれない。」
「え…?」
「だから、気にしなくていいんだ。」
そう言って梶原くんは微笑んだ。
何だかよく分からないけどわたしも笑顔で返した。
すると突然わたしは梶原くんに強く抱きしめられた。
「梶原くん…?」
「悪い…少しだけこのままでいさせてくれないか?」
梶原くんは震える声でつぶやく。
今日は梶原くんの様子が変だ。
「うん…いいよ。」
そう返すと、梶原くんは体を離し、わたしの目を見て言う。
「好きだ…星野。」
真剣な顔の梶原くんはなんだか少しかっこよく見えた。
梶原くんとなら…付き合っても大丈夫かな…そんな事さえ考えていた。
だけどさっきの先生の心配そうな顔や赤くなった顔、それが頭から離れない。
それだけじゃない…今までの先生との思い出が頭を駆け巡る。
とたんに切なさがこみ上げてきて、気付くと涙が溢れていた。
やっぱり簡単に忘れられないよ…無かった事になんてできない…
あんなに本気で好きになったのは先生が初めてだから…
「星野…?」
梶原くんの声にハッとなり、わたしは急いで涙を拭った。
「ごめんね…。」
「俺は…諦めたくないんだ。」
「うん…」
「サンキュ、そろそろ戻るか!」
梶原くんはそう言うと微笑んで歩き出した。
わたしも微笑んでその後を歩く。
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