1 / 1
扇風機
しおりを挟む
長い間ここにいる。
中古品として売りに出されてしまった。
私の前を人がよく通るのだが前に居座られたことは記憶にない。
きっと、私は古いタイプの扇風機なのだろう。
恐らく前世は”普通の人間”だと最初は考えていたが、私が長い間売れなかったため、前世を”泥棒をした人間”と考えるようになった。
人々は私の前を流れて横に置いてある、”最新のもの”または、”安価でそれなりに最新のもの”の前に立った。
リモコン付きのものや、縦横関係なく全方向に風を送れるものなど。
中には羽のないものもいた。
「扇がないのに扇風機?」
と皮肉めいたことを考えたが、そんなことを皮肉と考えているのはこの世で私しかいないだろう。
やはりそういった新しいものが早々と売れていった。
ただ値段が安いだけでこれといった機能がない古い私が買われることなどないのだ。
私は運命を悟った。
それからまた時が経った。
私は処分されるらしい。
こうなることは予想していた。
今更怖いなんて感情は湧いてこなかった。
売れなかったことを悲しんだ時期もあったが、そんなことも今ではなくなった。
私は入り口付近の外に運び出された。
数時間後に不良品回収のトラックが来るだろう。
そうなれば私は処分されるだけだ。
久々に見た外の風景を見ながら、来世のことなどを考えていた。
そうしていると、前の方から60代くらいの男が入り口に向かって歩いてきた。
その男性は私の前を通り過ぎたところで足を止めて、私の前に戻ってきた。
男は膝を曲げると考えているような動作を見せた。
数十秒の間、男は私の前にいた。
男は立ち上がって、入り口のドアを押した。
私はこの男に煽られたような感じがした。
外に出された電化製品なんてものは処分される以外に辿る道はないのだ。
そんなことは誰でも分かる。
私は苛立ちはしなかった。
扉が開いた。
中からは先程の男が店員を連れて出てきた。
「これ貰ってもいいですか?」
「もちろんいいですよ。今日処分する予定だったんです。それにしても何故こんな古いも のを?」
「こういった古いものが好みなんでね。
味があるじゃないですか?」••••
店員と男のやり取りが終わった後、私は男の車の助手席に乗せられた。
私は気分が良かった。
男が私を選んでくれたこと、私が男の役に立てることを考えると高揚した。
やはり前世は”普通の人間”だったのかもしれない。
中古品として売りに出されてしまった。
私の前を人がよく通るのだが前に居座られたことは記憶にない。
きっと、私は古いタイプの扇風機なのだろう。
恐らく前世は”普通の人間”だと最初は考えていたが、私が長い間売れなかったため、前世を”泥棒をした人間”と考えるようになった。
人々は私の前を流れて横に置いてある、”最新のもの”または、”安価でそれなりに最新のもの”の前に立った。
リモコン付きのものや、縦横関係なく全方向に風を送れるものなど。
中には羽のないものもいた。
「扇がないのに扇風機?」
と皮肉めいたことを考えたが、そんなことを皮肉と考えているのはこの世で私しかいないだろう。
やはりそういった新しいものが早々と売れていった。
ただ値段が安いだけでこれといった機能がない古い私が買われることなどないのだ。
私は運命を悟った。
それからまた時が経った。
私は処分されるらしい。
こうなることは予想していた。
今更怖いなんて感情は湧いてこなかった。
売れなかったことを悲しんだ時期もあったが、そんなことも今ではなくなった。
私は入り口付近の外に運び出された。
数時間後に不良品回収のトラックが来るだろう。
そうなれば私は処分されるだけだ。
久々に見た外の風景を見ながら、来世のことなどを考えていた。
そうしていると、前の方から60代くらいの男が入り口に向かって歩いてきた。
その男性は私の前を通り過ぎたところで足を止めて、私の前に戻ってきた。
男は膝を曲げると考えているような動作を見せた。
数十秒の間、男は私の前にいた。
男は立ち上がって、入り口のドアを押した。
私はこの男に煽られたような感じがした。
外に出された電化製品なんてものは処分される以外に辿る道はないのだ。
そんなことは誰でも分かる。
私は苛立ちはしなかった。
扉が開いた。
中からは先程の男が店員を連れて出てきた。
「これ貰ってもいいですか?」
「もちろんいいですよ。今日処分する予定だったんです。それにしても何故こんな古いも のを?」
「こういった古いものが好みなんでね。
味があるじゃないですか?」••••
店員と男のやり取りが終わった後、私は男の車の助手席に乗せられた。
私は気分が良かった。
男が私を選んでくれたこと、私が男の役に立てることを考えると高揚した。
やはり前世は”普通の人間”だったのかもしれない。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる