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第1章 都会抗争
第2話 迫る刺客
しおりを挟む鬼神属。それはかつて日本で『鬼』と呼ばれていた種族である。
姿形は人間とさして変わりはしないが、額に鬼神属を象徴する角が2本生えている。
希島悠史の額にも10センチ位の黒い角が1本生えているが、防止によって今は隠されている。
辺りは薄暗く酒飲みたちの喧騒が微かに聞こえる。
そんな繁華街から少し抜けた先にあるバーで悠史達は軽めの食事をしていた。
「何故角を隠すの?カッコイイのに」
頭に機械的な天輪を載せたシオンが防止を指さして問う。
「馬鹿かお前は一本角はハーフの証だ。酒場とかで見せたら即入店お断りになるぞ」
「まぁ~うちの店みたいな場所もあるけどね~」
「マスターは本当に変わってるよ。」
「あら、悠史くん?それはレディに対して失礼だと思うけど?」
「事実だからな。嘘はつけない性分なんだ。」
「ひっどーい」
カフェ&バー「乙女の泉」の店主。佐々木翔子は繁華街から少し離れた位置に店を構え、それぞれの事情を持つものを寛大に迎え入れていた。
「どうして?事情を持つものを受け入れることが出来るの?」
「どうしてって…面白いことを聞くねお嬢さん。もしかして悠史君のコレかな?」
「翔子さん?からかうのはやめろよ」
「あはは。そうだね。私から見ればハーフもクオーターも何も関係ないのさ。お客様である以上サービスは提供するし、話だって聞く。私がおかしいんじゃなくて世の中がおかしいのさ。」
「そう考える人自体が少ないんだっての」
「そうかな~」
楽しげな会話に邪魔者が訪れたのは数分後のことである。黒いスーツ姿の一見して役人のようにも見える男が2人、入店した。
「……。あの人達、ちょっと不味いね。」
「何かもってんのか?」
「……目の色が…。」
不審な客を見つけた翔子の左目は白くなり、虚空を見つめている。
「あぁ、驚かせちゃったね。これは神眼。なんでも見えるお守りみたいなものよ。」
「……貴女も混じってるの?」
「いや?私の両親はともに人間よ?」
「……人間にはそのような外見的特徴は無いはず。」
「神眼って言ってるけど…そうね。超能力みたいなものよ。」
「……。」
「ボサッとしてないでさっさと行くぞシオン。」
悠史は男達が席に座ると同時に勘定を払い、店の外へ出た。
「また来てね~」
2人が店を出ると同時に席を立とうとした男達の前に翔子が仁王立ちで立ちはだかる。
「何の用かね?我々は急用を思い出したんだが?」
「急用?食い物屋に来て何も頼まないで帰るなんて酷いとは思わないかい?」
「……財布を…忘れたんだよ」
「そっか。じゃあ1人は置いていっても大丈夫よね?」
「……。」
男達はお互い目配せし合うと1人がそそくさと店を後にした。
奇妙な静けさが店の中で漂い、残された男は悪寒が走った。
「それじゃあ、聞くんだけど何故食い物屋でそんな物騒なものを隠し持っていたのかな?」
聞くやいなや男は身を翻し、懐に隠した拳銃を抜こうとした。
「ここは火気厳禁だよ。」
「ぐっ」
男の腕にフォークが刺さり、苦悶の表情を浮かべるがさして気にするわけでもなくフォークを乱暴に抜き捨てた。
「貴様は我々の組織に敵対するという意味で捉えてもいいんだな?」
「組織?何かしらそれは?」
「一般人。それも奴らに肩入れしているような奴に語る名は生憎持っていなくてな。名刺でも今度刷らせておこう。」
「あら、残念。じゃあ、貴方の記憶から情報を貰うわね。そろそろ薬も聞いてきたでしょうし。」
「ぐっ。さっきの…フォークに何か……。」
「さぁて、今日は眠れなさそうだわ。」
大の大人を1人軽々持ち上げ、店を締めると翔子はカウンターの奥にある自宅へと消えていった。
「ユウシ…待って。」
一方、悠史とシオンは複雑に入り組んだ路地を駆け抜けていた。
「どうやら尾行されてたみたいだな」
「尾行…完全にいなかった機凱種のセンサー超優秀。」
「現にいたじゃねぇか。」
「うぐ。」
「まぁいい。多分ひとりは何とかなってる。」
「翔子…危ない。」
「大丈夫だ。それだけはねぇから。」
「……?」
路地を縫うように駆け抜けながら悠史は器用に携帯を開くと画面をシオンに見せた。
そこには先ほどの男の素性が事細かに記載された一通のメールが来ていた。
「ほらな?」
「……翔子……何者……。」
「さぁな。それは謎だ。」
悠史達は話しながら1軒の家の前に立つとそのまま門をくぐっていった。
門には大きな文字で「工房」とだけ書かれていた。
「なんだよ早いじゃねぇか。」
「おう、鉄男。お客だ。」
「残念だがうちは疫病神はお断りなんでな。」
「そりゃ安心しろ。特務機関のエージェントだそうだから。」
「そいつはいいな。鉛玉のプレゼントを用意してやらなくては。」
「いや?鉛玉なら奴らがくれるぞ。」
「マジか。俺の自慢の筋肉に穴開けられるかな?」
「さぁ、なっ」
悠史が投げたナイフは吸い込まれるように扉の影にいたエージェントの頭に突き刺さった。しかし、エージェントはナイフを抜くと銃器を構えた。
「アイツ魔粘種だ。コア破壊しねぇと倒せねぇぞ?」
「くっくっく。その通り。私は魔粘種のディーバ。私のコアを見つけるのが先か蜂の巣になるのが先か選ばせてやるよ」
「どうするよ悠史。」
「鉄男は下がって武器もってこい。」
「ご注文は?」
「暑い武器」
「あいよ。」
「ユウシ、私はどうすればいい?」
「さっきのメールの情報を裏取って調べろ」
「……分かった。」
「答えは決まったか?薄汚ぇ混血種。」
「答え?お前はここで死ぬ。最高峰の殺人鬼がお相手してやるよ。」
「はっそいつは楽しみだな」
そして、鬼神属と魔粘種の戦いが始まった。
何の変哲もない工房で火砲が火を吹き弾痕を穿つ。ナイフを片手に銃火器に挑む。鬼の顔は笑っていた。
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