語られない物語

神崎 詩乃

文字の大きさ
2 / 4
第1章 都会抗争

第2話 迫る刺客

しおりを挟む

 鬼神属。それはかつて日本で『鬼』と呼ばれていた種族である。
 姿形は人間とさして変わりはしないが、額に鬼神属を象徴する角が2本生えている。
 希島悠史の額にも10センチ位の黒い角が1本生えているが、防止によって今は隠されている。

 辺りは薄暗く酒飲みたちの喧騒が微かに聞こえる。
 そんな繁華街から少し抜けた先にあるバーで悠史達は軽めの食事をしていた。
「何故角を隠すの?カッコイイのに」

 頭に機械的な天輪を載せたシオンが防止を指さして問う。
「馬鹿かお前は一本角はハーフの証だ。酒場とかで見せたら即入店お断りになるぞ」
「まぁ~うちの店みたいな場所もあるけどね~」
「マスターは本当に変わってるよ。」
「あら、悠史くん?それはレディに対して失礼だと思うけど?」
「事実だからな。嘘はつけない性分なんだ。」
「ひっどーい」

 カフェ&バー「乙女の泉」の店主。佐々木翔子は繁華街から少し離れた位置に店を構え、それぞれの事情を持つものを寛大に迎え入れていた。

「どうして?事情を持つものを受け入れることが出来るの?」
「どうしてって…面白いことを聞くねお嬢さん。もしかして悠史君のコレかな?」
「翔子さん?からかうのはやめろよ」
「あはは。そうだね。私から見ればハーフもクオーターも何も関係ないのさ。お客様である以上サービスは提供するし、話だって聞く。私がおかしいんじゃなくて世の中がおかしいのさ。」
「そう考える人自体が少ないんだっての」
「そうかな~」


 楽しげな会話に邪魔者が訪れたのは数分後のことである。黒いスーツ姿の一見して役人のようにも見える男が2人、入店した。

「……。あの人達、ちょっと不味いね。」
「何かもってんのか?」
「……目の色が…。」

 不審な客を見つけた翔子の左目は白くなり、虚空を見つめている。

「あぁ、驚かせちゃったね。これは神眼。なんでも見えるお守りみたいなものよ。」
「……貴女も混じってるの?」
「いや?私の両親はともに人間よ?」
「……人間にはそのような外見的特徴は無いはず。」
「神眼って言ってるけど…そうね。超能力みたいなものよ。」
「……。」
「ボサッとしてないでさっさと行くぞシオン。」
 悠史は男達が席に座ると同時に勘定を払い、店の外へ出た。
「また来てね~」
 2人が店を出ると同時に席を立とうとした男達の前に翔子が仁王立ちで立ちはだかる。
「何の用かね?我々は急用を思い出したんだが?」
「急用?食い物屋に来て何も頼まないで帰るなんて酷いとは思わないかい?」
「……財布を…忘れたんだよ」
「そっか。じゃあ1人は置いていっても大丈夫よね?」
「……。」

  男達はお互い目配せし合うと1人がそそくさと店を後にした。
 奇妙な静けさが店の中で漂い、残された男は悪寒が走った。

「それじゃあ、聞くんだけど何故食い物屋でそんな物騒なものを隠し持っていたのかな?」

 聞くやいなや男は身を翻し、懐に隠した拳銃を抜こうとした。
「ここは火気厳禁だよ。」
「ぐっ」

 男の腕にフォークが刺さり、苦悶の表情を浮かべるがさして気にするわけでもなくフォークを乱暴に抜き捨てた。

「貴様は我々の組織に敵対するという意味で捉えてもいいんだな?」
「組織?何かしらそれは?」
「一般人。それも奴らに肩入れしているような奴に語る名は生憎持っていなくてな。名刺でも今度刷らせておこう。」
「あら、残念。じゃあ、貴方の記憶から情報を貰うわね。そろそろ薬も聞いてきたでしょうし。」
「ぐっ。さっきの…フォークに何か……。」
「さぁて、今日は眠れなさそうだわ。」

 大の大人を1人軽々持ち上げ、店を締めると翔子はカウンターの奥にある自宅へと消えていった。

「ユウシ…待って。」

一方、悠史とシオンは複雑に入り組んだ路地を駆け抜けていた。
「どうやら尾行されてたみたいだな」
「尾行…完全にいなかった機凱種エクスマキナのセンサー超優秀。」
「現にいたじゃねぇか。」
「うぐ。」
「まぁいい。多分ひとりは何とかなってる。」
「翔子…危ない。」
「大丈夫だ。それだけはねぇから。」
「……?」

  路地を縫うように駆け抜けながら悠史は器用に携帯を開くと画面をシオンに見せた。
 そこには先ほどの男の素性が事細かに記載された一通のメールが来ていた。
「ほらな?」
「……翔子……何者……。」
「さぁな。それは謎だ。」
 悠史達は話しながら1軒の家の前に立つとそのまま門をくぐっていった。
 門には大きな文字で「工房」とだけ書かれていた。

「なんだよ早いじゃねぇか。」
「おう、鉄男。お客だ。」
「残念だがうちは疫病神はお断りなんでな。」
「そりゃ安心しろ。特務機関のエージェントだそうだから。」
「そいつはいいな。鉛玉のプレゼントを用意してやらなくては。」
「いや?鉛玉なら奴らがくれるぞ。」
「マジか。俺の自慢の筋肉に穴開けられるかな?」
「さぁ、なっ」
  悠史が投げたナイフは吸い込まれるように扉の影にいたエージェントの頭に突き刺さった。しかし、エージェントはナイフを抜くと銃器を構えた。
「アイツ魔粘種スライムだ。コア破壊しねぇと倒せねぇぞ?」
「くっくっく。その通り。私は魔粘種のディーバ。私のコアを見つけるのが先か蜂の巣になるのが先か選ばせてやるよ」
「どうするよ悠史。」 
「鉄男は下がって武器もってこい。」
「ご注文は?」
「暑い武器」
「あいよ。」

「ユウシ、私はどうすればいい?」
「さっきのメールの情報を裏取って調べろ」
「……分かった。」

「答えは決まったか?薄汚ぇ混血種。」
「答え?お前はここで死ぬ。最高峰の殺人鬼がお相手してやるよ。」
「はっそいつは楽しみだな」

 そして、鬼神属と魔粘種の戦いが始まった。
 何の変哲もない工房で火砲が火を吹き弾痕を穿つ。ナイフを片手に銃火器に挑む。鬼の顔は笑っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

処理中です...