罪と勇者

神崎 詩乃

文字の大きさ
2 / 27
第1章 初めから終焉

初めてのバトル

しおりを挟む
虐待を受け、最期には殺された。
そしていい加減な神と出会い、墓の上に転生させられた。

「…えーと?君、名前は?」
悠叶は墓場で出会ったレイナに連れられ、墓場の敷地内にある教会のような建物に向かった。
「カガヤ・ユウト」
「ユウト?このへんじゃ聞かない名前だね。私はレイナ。レイナ・ガードラン」
「…よろしく?」
「なんで疑問形?まぁいいわ。カール!お手伝いさん来たわよー」

初対面の時の礼儀正しい言葉遣いは消え去り、歳が近いという雰囲気かレイナは自然と悠叶にタメ口を使っていた。
「なんだい、レイナ。淑女がそんなに大きな声を出して…。お手伝いさん?そこの黒髪黒目の少年がかい?」

背丈は大柄。170センチ以上はある。西欧風の顔立ちに眼鏡をかけ、髪は茶髪を後ろに撫でつけている。
インテリ風の男だった。
初対面の人間にはとりあえず、鑑定眼を発動させる。
【カール・ジョンソン
人族 32歳 Lv.28 職業 ・聖職者Lv.13・墓守Lv.10聖騎士Lv.5
生命力 5900/5900
魔力    3200/3200
・スキル
  ・聖魔法Lv.10
  ・土魔法Lv.10
  ・浄化魔法Lv.18
  ・炎魔法Lv.7
  ・アンデット特攻
  ・アンデット耐性
  ・聖剣術Lv.3
  ・剣術Lv.6
  ・筋力上昇Lv.6
  ・魔力上昇Lv.7
  ・詠唱破棄
・固有スキル
  ・浄化の炎】

「ぶっ」
「ん?何かね?少年。」
「い、いや、なんでもありませんよ。初めまして、カガヤ・ユウトです。」
「これはこれは。クーロン帝国第3教会所属フロスト支部支部長兼墓守のカール・ジョンソン魔導大佐だ。よろしく」
「…こちらこそっよっよろしくお願いします」
「さて、少しばかり聞きたいことがあるのだが、聞いてもいいかな?」
「え、えぇ。」
「黒髪に黒い瞳。このあたりじゃまず見かけない顔立ちだが、君はどこの生まれなのかな?」
「…実は…記憶が無いんです」

悠叶は先程手に入れた詐術スキルをふんだんに使って嘘の話をでっち上げることにした。

「ほう、記憶が…。詳しく聞かせてもらえるかな?」
「分かりました。」

それから3時間ほど悠叶とカールは語り合った。悠叶は詐術を使い、うまい具合に話を持っていく。
「行く宛がないのならここでしばらく面倒を見ようじゃないか」

そうカールが言った時点でレイナとカールの目には涙のあとがあった。

翌日。朝から来客があった。勿論墓地で来客と言えば埋葬依頼である。
渡された喪服のような黒い衣装に着替えると重厚な木の棺の前にカールが立つ。

「ご遺体、拝見します。」

遺体は近くの街の冒険者。依頼主はその冒険者の冒険者仲間らしい。
遺体の状態は非常に悪かった。顔の皮を剥がされ、頬も裂けている。眼球のない虚ろな眼窩がこちらを覗き、ほとんど全身に切り傷があった…。

「…盗賊…ですか?」
レイナの問に冒険者は頷くとことの顛末を語ってくれた。
「アレックスは昨日…町外れの森で盗賊に襲われたんだ…。」
「昨日…ですか…。まずいな……。」
「えっ?」
「それは…どういう…。」
心配する冒険者に朗らかな笑みを浮かべ、カールは急かすように安置室から出る。
「ここでは何ですし隣で話しましょう。ユウト、ご遺体のそばにいて上げてください。」
「……?わかった。」

「ささ、こちらへ。」
「私はドアの外で待機しています。」
「わかった。よろしく頼むね。」

2人は訳知り顔で頷き合い、部屋の外に出た。

『コトリ…』

ふたりが部屋から出て数分後…部屋の隅で無限収納と空間操作の練習を行う。
主に無限収納の機能性の調査を行い、何が収容出来て何が出来ないのかを突き止める。

何度も何度も部屋にあった本やロウソクをしまい、しまう感覚を覚える。

「ふむ…普通にしまえるな…。」

『コトリ…。』

「ん?」
悠叶はなにか聞こえた気がした。遺体安置室、無残な遺体、そして音。まさか…。
不安が募る。

恐る恐る後ろを振り向くとそこには棺があった。重厚な木の棺で開いた様子はない。
(ホッ…)

そして再び前を向き直すとそこには顔の皮を剥がされ、虚ろな眼窩を向けるご遺体があった。

「ウワッ」
『ヴァー』
「ホラーかよ!クッソ。」

ご遺体ことゾンビはまるでこちらを見ているかのように顔を向けると悠叶の肩を掴んで噛み付こうとした。
「冗談じゃねぇぞ!」
『ウヴァー!!』

掴まれた肩を振りほどき、ゾンビを突き飛ばす。突き飛ばされた拍子に本棚が倒れ、ドアを塞ぐ…。
その後、痛みを感じない様子でゾンビは再び立ち上がる。
「レイナ!カール!お客さんが暴れ出したんだがどうすんだ!これ!」
「え!ホントに!?」
「こんなんで嘘ついてどうすんだよ」
「やだ!ドア開かない!」
「嘘だろおい…」
皮膚のない顔が一瞬嗤ったように見えた。


【アレックス・クリストファー(アンデット)
人族 28歳 Lv.32 職業 ・戦士Lv.16・剣士Lv.10大剣士Lv.6
生命力 4800/4800
魔力    1600/1600
・スキル
  ・大剣術Lv.4
  ・剣術Lv.8
  ・筋力上昇Lv.6
  ・防御力上昇Lv.4
  ・体力上昇Lv.5
・固有スキル
  ・鋼の心】
鑑定眼を使用し、相手の力量を突き止めたあと、悠叶は叫ぶ。
「ちょっと待てよ!勝てねぇだろこれ!」

「あーあ…案の定動き出したかぁ」
「カール!そこにいるなら助けろよ!」
「んーそうしたいのは山々だが…如何せん扉を何とかしなくてはねぇ。少しの間耐えていてくれ。」
「冗談だろ!!」
「こんな時に冗談を言ってもしょうがないだろー」

ゾンビは2人の掛け合いに興味も示さず、一直線に悠叶へ襲いかかる。その身のこなしは生前のままに動き、悠叶を追い詰める。

「くっそ…無力化させれば…」

無限収納のスキルは対象に触れていることと無生物ということが条件らしい。ゾンビは死んでいる為無生物扱いになるかと思いきや魔物としての生物扱いらしく、収容できなかった。

『ヴァー』
「うるせぇ!」

悠叶はゾンビの顔面を棺に叩きつけ、一瞬の隙をかせぎ、窓からの脱出を試みることにした。

『困ってる?ねぇ?困ってる?』
窓に手をかけた瞬間脳内に聞き覚えのある声が聞こえ、世界の時間が止まったかのようにゾンビが硬直する。
「あぁ?」
『怖い顔~。空間操作の説明をしてないからね。一応説明するとその力を使えば勝てるかもよ。ヒントは収容。かな』
「……は?」
『窓の外を見てご覧。』

唐突に世界は再び動き出す。悠叶は言われた通りに窓の外を見るとそこには多数の墓石とそれを囲う杭があった。

「なぁるほど!とりあえず、一か八かって事な!」
【空間操作を発動しますか?yes/no】
「もちろん、イエスだ!」

悠叶の体の中から何かを吸い取られ、ゾンビの上に何かが現れる。
『グェ!』

その何かは杭だった。
何も無い空間から唐突に現れた杭はそのままゾンビ首を貫き、床へと縫い止めた。

「…何とか…なったのか?」
「土の精霊よ我に力を。大地の弾丸!『アースバレット』!」

ドドドドッという音とともに霊安室の扉が吹き飛ばされ、レイナが突入してくる。
「ユウト!?無事?生きてる?」

ホッとしたのか気が抜けたのか、悠叶はその場に座り込むと静かに意識を手放した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...