罪と勇者

神崎 詩乃

文字の大きさ
10 / 27
第1章 初めから終焉

保護者と訓練

しおりを挟む
 カールが殺害されて1週間が経過した。悠叶とシャルロットはレイナに魔法を教えてもらいながら墓守としての活動をしていた。

「『フレア!』」

 手のひらから業火が噴出し見事的を焼き尽くす。
 裕翔の放ったのは火炎魔法の第3位階。『地獄の焔ヘルフレア』という魔法である。
『本当にどうやって詠唱してるの?』
『ん?脳内で魔言は唱えているよ。後は魔力を感じるだけだな。』
『ユウト、それがどれだけ高度な技術かわかって言ってる?』 
『そうなのか?』
『……。』
「ちょっと?2人とも聞いてる?まさか私が念話使えないからって良からぬ会話をしてた訳じゃないわよね?」
「いや、無詠唱や脳内詠唱がどれほど高度なのかが分からなくて」
「…超…。」
「そうね。魔法師は無詠唱が出来て一流だもの。かなり高度な技術よ」
「ふうん。」
「『アースバレット』」

 悠叶の足元からドングリほどの弾丸が製造され、200mほど離した的を消し去る。
「…ほんとにユウトはめちゃくちゃだね…。普通あそこまで飛ばすのにかなり魔力を使うんだよ?シャルちゃんみたいに…。」
『弾丸の維持と推進力が厳しい』
 悠叶としては空中に土で弾丸を作り出し、高速回転を加えて射出しているので推進力として長く魔力を使うことがないのだ。
「あっ…『アースバレット』」
「っぶねぇ誰だ!出てこい!」
 遠く離れた場所には金髪のゴリ…ラではなくクラウドが教会へ向かって歩いていた。
「っち」
『ん?ユウト、どうしたの?』
「あークラウドさんだ何かな」
「これなら…『ウォーターバレット』」
「うわっぎゃぁ」

「あっユウトいつの間に水魔法なんて覚えた…そうじゃない。あぁクラウドさんが!」
「おい、ガキこれはどういう事だ?」
「どうしたゴリラ?通り雨にでもやられたか?」 
「ゴリラじゃねえって言ってんだろうがガキ」 
「ガキじゃねえよゴリラ」
 二人の間に緊迫した空気が流れ出す。
「2人とも!それでクラウドさんはどのような要件で?」
 水に濡れたゴリ…クラウドは顔を拭きながら今回の訪問の目的を明かす。
「ったく…あれ?カールの旦那は?」
「死んだ。正確には殺された」
「そっか~死んじ…は?おい、ユウト…そりゃ冗談でもきついぜ?」 
「俺が冗談でカールが死んだなんて言うと思うか?」
「…。誰がやった?」
「さぁな。」
「…間に合わなかったか…。」
「は?」
「一昨日教会が声明を発表した。内容は『墓守の告発』だ。教会は先日の墓場騒動を一部の反乱分子がやった事にしたいみたいだな。墓守が禁忌の魔術『死霊術』を行い、ブッチャーを制作したと告発文には書かれていた。」
「それで?」
「この地域の墓守に教会からナンバーズが派遣された。奴らは人の話なんか聞きやしない。適当な罪でっち上げて殺す腹積もりだろうよ。」
「へぇ~」
「ナンバーズ…。逃げなきゃ!シャルちゃんも!」 
「へぇってお前なぁ…お嬢ちゃんみたいな反応が一番まともなんだぜ?」
「前置きはわかった。それでお前はなんのために来たんだ?タダの伝言係か?」
「……。お前…案外鋭いよな…。そうだよ。俺はギルド長からの命によりお前らを保護することになった。」

「……。それはつまり教会と敵対するという意味にも聞こえるんだが良いのか?」
「例え教会から墓守を提供されなかったとしてもうちには取っておきの冒険者がいるだとさ。」
『どう考えてもボクらの事だよね…』
『あぁ、あの受付嬢…恐ろしいな。』
「という訳でしばらく世話になる。宜しくな。」
「分かりました。今部屋を掃除してきますね~」 

 パタパタとレイナはクラウドの部屋を用意しに行った。
「レイナだけだと大変だからシャルも行っておいで。」

 コクリと了解の意を示したシャルロットも走っていった。
「行ったか?」
「あぁ。行った。」
「にしてもなんで分かんだよ俺が来た別な理由が。」
「事前説明を受けてるんでな。大方の予想はつく。」
「なるほど。末恐ろしいガキだぜ全く…。」
「褒め言葉として受け取っておくよ。」
「ったく…そうだよ。お察しの通り勇者様の監視だよ。まぁ保護も含まれてはいるんだがな。」
「理由は?」
「最近、帝都で何か大きな事が起きると言われていてな戦力の確保が急務なんだわ。」
「俺は墓守であり冒険者出会ってテメェみたいな国家のゴリラじゃないんだが?」
「誰が国家のゴリラだ!?いいか?国を揺るがすような大災害時は冒険者を駆り出してもいいって法律があるんだよ。」
「なるほど。それで?何が起きるんだよ」
「分からん」
「分かんねぇのかよ!?」
「とりあえず、だ。一度帝都には行ってみたいだろ?」
「あぁ、まぁな。」
「帝都までは俺が護送する。だが、自分のケツも拭けねぇガキを連れていっても無駄なんでな。基礎的な鍛錬を明日から行う。覚悟しておけよ~軍隊式スパルタ鍛錬なんだからな~。」
「ワータノシミダナー」
「見事な棒読みだな。そんじゃまそういう事だから…。」

翌朝。
まだ朝日が昇って間もない頃。街外れの教会にけたたましく怒声が響き渡った。

「「「全員起床!!!支度を整え中庭に集合!!!」」」
「…あれ?クラウドさん…早いですね~今朝ごはんを…」
「いや、レイナもう作っておいたから安心しろ。」
「…う…る…」
「なんだ?シャルロット。」
「シャルちゃんはあまり上手く喋れないんだよね。念話なら大丈夫なのに。」
「ユウトは?」
「…ね…て…る」
「…ユウト!起きろ!」
「……。」
 悠叶はベットですやすや寝息を立てている。今のユウトには何も聞こえていない様だった。
「こいつ俺の声聞こえてるよな…ん?」
「ユウトは部屋で寝る時遮音結界って結界で体を包むから多分何も聞こえてないですよ。」
「はぁ?どうやって起こすんだ?自然に起きるのを待つしかないのか?」
「ん。」
 ここは任せろとでも言いたげにシャルロットは悠叶に念話を飛ばした。
『ユウト、朝だよ。早く起きて。』
『ん…あぁ…朝…分かった…。』

「おい、これ会話できてるのか?」
「大丈夫です。ユウトとシャルちゃんはいつもこんな感じだから。」
「ふぁ~。」
「おはようユウト。」
「あぁ、レイナか、おはよう。」
「ユウト、お前何か俺にいうことあるよな?」
「うわっゴリラ…いや、クラウドか。おはよう。」
「てめぇ!起きたんならさっさと支度して中庭へ行け!」
「…うるせぇなぁ。朝から怒鳴るなよ…。ったく…まだ夜明け前じゃねぇか…。」
『朝からクラウドが煩い…』
『シャル…朝というかまだ夜中だぞ…。』
「さて、じゃあ運動がてらお前ら3人でかかってこい。遠慮はいらねぇ。」
3いいんだな?」
「おう。お前ら3人がかかってきた所で…」
「光よ集いて目を欺け『光の球ライトボール』!」
「くっ目くらましか!?」
影の拘束シャドーバインド
「は?え?ちょったったん」
「『アースバレット』!」

 土でできた弾丸が影を拘束され動けなくなったクラウドに襲いかかる。弾丸は顔、鳩尾、膝、などを容赦なく襲いクラウドは意識を手放した…。

「……『ヒール』」

 クラウドは舐めていた。冒険者に登録してまもない子ども相手に手加減して負けるなんて有り得ないと。
 墓守の仕事はアンデッド退治で前衛職でもない彼らと自分では天と地ほどの差があると勝手に思い込んでいた。

「……。」

 クラウドはこの3人を同時に相手にしてはいけないと訓練初日で思い知るのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...