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第一章 世界創造編
45.第二回
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べっこう飴はコガネとシロガネに届けられた。
『おいしいー! 甘いね、コガネ!』
『うん! わたしたちの形のもあるよ! あ、こっちはツツミ様だ!』
おおはしゃぎの泉の精二人である。タンチョウは少しほっとしたようにコガネとシロガネを見て微笑んだ。
「喜んでもらえて良かった。まだまだたくさんあるからね」
『わーい! タンチョウおねえちゃん、ありがとう! 大好き!』
『僕も! もっと食ーべよ!』
ニコニコしながらカゴに手をやるシロガネ。そんな中、そばでレカエルとイヴが何やら言い争いをしていた。
「い、イヴ。私の型の飴を! あの二人にも食べてもらうのです、早く出しなさい!」
「そんな! こ、これはわたくしの物です! ぜんぶぜーんぶわたくしの物なのです!!」
自分の飴も二人にあげたいレカエルと、すべて独占したいイヴ。二人の攻防はしばらくの間続いたのであった。
『あー、おいし! こんなものを作れるなんてタンチョウおねえちゃんはすごいんだね!』
『わたしたちと同じでツツミ様に創られた人だもんね! さすがだね!』
手放しでほめる二人。タンチョウは少し照れたように答えた。
「そ、そんな大したものじゃないよ? 水に溶かして煮詰めて固めるだけだから……。お菓子のなかでもすごく簡単なものだよ」
『そうなの? じゃあ、もっとおいしいおかしも作れるの?』
「う、うーん。まだまだ材料が足りないけど、頑張ってみるね」
現状あるのは砂糖代わりのマナと、いくつかの植物くらいである。充実したスイーツライフを送るには、まだまだ必要なものがたくさんある。
『楽しみにしてるね!』
『僕たちも、できることがあったらおてつだいするからね!』
「まかせておくのですよー!!」
答えたのはタンチョウではなくレカエルだった。二人を撫でまわしながら宣言する。
「レカエルおねえちゃんがおいしいお菓子をいっぱい作ってあげますからねー。ケーキを焼きましょうかねー。クッキーですかねー。ほっぺたが落っこちちゃうかもしれませんよー。ふふ。おっこちちゃったらほっぺ、私にくださいねー。日がな一日むにむにしますねー。うふ、うふふふふ」
「レカエル、気持ち悪いよ。っていうかお菓子なんて作れるの? 創造するんじゃなくて自分で料理して」
ややあきれた様子のツツミ。レカエルの言葉のニュアンスを鑑みるに、創るのではなく作るという感じだった。
「ふふ。レカエルおねえちゃんは乙女の嗜みとしてお菓子作りもできちゃいますよー……、こほん。もとい、できますよ」
途中までコガネたちに話しかける口調だったレカエルが咳払いをして言い直す。
「タンチョウより上手とは言えないかもしれませんが、その辺の技術は少なくともあなたよりは上です」
「……ほほう。言うじゃんレカエル」
レカエルの言葉に神経を逆なでされたツツミ。静かな闘志が燃えてきた。
「私もお菓子にはけっこううるさいよ……? 数多の人間界の食べ物を食してきたツツミ様の経験値、甘く見ないほうがいいんじゃない?」
「ふっ。所詮は与えられたモノを食べてきたというお客さんとしての経験値でしょう? 作り手としてそれが生かせるとでも? あなたこそ、考えがマナよりも甘いのではありませんか?」
二人の間で視線がバチバチと火花を散らす。
『わあ! レカエルおねえちゃんもおかし作れるの!?』
『ツツミ様も!?』
純真無垢であるが故、二人の間に流れる不穏な空気を察することができないコガネとシロガネ。結果として煽られる形となったレカエルが見下すように言う。
「もちろんですよ二人とも。このような主に仕えていては、本当の甘味というものを味わうこともできないでしょう。ツツミはせいぜい地面のマナを舐めまわしているのがお似合いです!」
「レカエルこそ! 木から出る樹液でも啜ってればいいよ、カブトムシみたいにね!」
「お、お二人とも落ち着いてください! 子供の前ですよ!」
タンチョウの制止にもツツミとレカエルは矛を収める様子がない。おろおろとどうしていいかわからないタンチョウである。
「え、エウラシア様! お二人を止めてください!」
「うー?」
我関せずとばかりにべっこう飴に舌鼓を打っていたエウラシア。助けを求められるが仲裁するつもりもないようだ。
「やだ。めんどくさい」
「そんな! コガネちゃんたちの教育にもよくありませんよ!」
ツツミの眷属のコガネとシロガネが今後成長することもないだろう。しかし見た目は完全に5,6歳くらいの子供である。やさぐれてしまったら悲しいではないか。
「……えー」
ものすごくめんどくさい、といった様子でツツミとレカエルをエウラシアは眺めた。そして、うるんだ目で助力を求めるタンチョウに向き直る。
「報酬の。もふもふ。上乗せ。する?」
「えっ?」
「炉の。作り方。教えた。報酬。まだ。もらって。ない」
「……あっ」
そういえばそんな条件で生贄にされていたタンチョウだった。なにやら怪しいエウラシアの視線にぐっ、と詰まりながらも答える。
「う、上乗せします! しますから!」
「もふもふに。加えて。むにゅむにゅとか。ぺろぺろとか。つくけど」
「む、むにゅ? ぺろ? わ、わかりました、むにゅむにゅとぺろぺろもお付けします! あとぽよぽよも!!」
ものすごく頭の悪い会話をしているようで訳が分からくなってきたタンチョウ。自分でもなにを対価としてしまったのか理解していない。
しかしどうやらエウラシアのお気にはめしたようで、ゆっくりとツツミとレカエルを引き離した。
「レカエルなんて! 花の蜜でも吸って満足してればいいよ!」
「ツツミこそ、サトウキビの根でもかじっていればいいのです!」
「ふたり。とも。そこまで」
割って入られてもにらみ合うのをやめない二人。エウラシアは静かに言った。
「実際に。やって。みればいいい」
「はい?」
「……第二回」
エウラシアは宣言する。
「最も。グルメな。神使は。誰だ。選手権。……開催」
この世界に来た折、食べ物をそれぞれ出して優劣を競ったことがあった。もう一度この選手権を開催しようというのである。
「……そうですね。口では何とでも言えます。決着は!」
「うん! キッチンでつけよう!」
こうして第二回最もグルメな神使は誰だ選手権の開催が決定した。静観していたミノタリアがぽつりと言う。
「この場は収まったが……。結果としては火に油をそそいだだけなのではないか、主どの」
……エウラシアは答えなかった。
『おいしいー! 甘いね、コガネ!』
『うん! わたしたちの形のもあるよ! あ、こっちはツツミ様だ!』
おおはしゃぎの泉の精二人である。タンチョウは少しほっとしたようにコガネとシロガネを見て微笑んだ。
「喜んでもらえて良かった。まだまだたくさんあるからね」
『わーい! タンチョウおねえちゃん、ありがとう! 大好き!』
『僕も! もっと食ーべよ!』
ニコニコしながらカゴに手をやるシロガネ。そんな中、そばでレカエルとイヴが何やら言い争いをしていた。
「い、イヴ。私の型の飴を! あの二人にも食べてもらうのです、早く出しなさい!」
「そんな! こ、これはわたくしの物です! ぜんぶぜーんぶわたくしの物なのです!!」
自分の飴も二人にあげたいレカエルと、すべて独占したいイヴ。二人の攻防はしばらくの間続いたのであった。
『あー、おいし! こんなものを作れるなんてタンチョウおねえちゃんはすごいんだね!』
『わたしたちと同じでツツミ様に創られた人だもんね! さすがだね!』
手放しでほめる二人。タンチョウは少し照れたように答えた。
「そ、そんな大したものじゃないよ? 水に溶かして煮詰めて固めるだけだから……。お菓子のなかでもすごく簡単なものだよ」
『そうなの? じゃあ、もっとおいしいおかしも作れるの?』
「う、うーん。まだまだ材料が足りないけど、頑張ってみるね」
現状あるのは砂糖代わりのマナと、いくつかの植物くらいである。充実したスイーツライフを送るには、まだまだ必要なものがたくさんある。
『楽しみにしてるね!』
『僕たちも、できることがあったらおてつだいするからね!』
「まかせておくのですよー!!」
答えたのはタンチョウではなくレカエルだった。二人を撫でまわしながら宣言する。
「レカエルおねえちゃんがおいしいお菓子をいっぱい作ってあげますからねー。ケーキを焼きましょうかねー。クッキーですかねー。ほっぺたが落っこちちゃうかもしれませんよー。ふふ。おっこちちゃったらほっぺ、私にくださいねー。日がな一日むにむにしますねー。うふ、うふふふふ」
「レカエル、気持ち悪いよ。っていうかお菓子なんて作れるの? 創造するんじゃなくて自分で料理して」
ややあきれた様子のツツミ。レカエルの言葉のニュアンスを鑑みるに、創るのではなく作るという感じだった。
「ふふ。レカエルおねえちゃんは乙女の嗜みとしてお菓子作りもできちゃいますよー……、こほん。もとい、できますよ」
途中までコガネたちに話しかける口調だったレカエルが咳払いをして言い直す。
「タンチョウより上手とは言えないかもしれませんが、その辺の技術は少なくともあなたよりは上です」
「……ほほう。言うじゃんレカエル」
レカエルの言葉に神経を逆なでされたツツミ。静かな闘志が燃えてきた。
「私もお菓子にはけっこううるさいよ……? 数多の人間界の食べ物を食してきたツツミ様の経験値、甘く見ないほうがいいんじゃない?」
「ふっ。所詮は与えられたモノを食べてきたというお客さんとしての経験値でしょう? 作り手としてそれが生かせるとでも? あなたこそ、考えがマナよりも甘いのではありませんか?」
二人の間で視線がバチバチと火花を散らす。
『わあ! レカエルおねえちゃんもおかし作れるの!?』
『ツツミ様も!?』
純真無垢であるが故、二人の間に流れる不穏な空気を察することができないコガネとシロガネ。結果として煽られる形となったレカエルが見下すように言う。
「もちろんですよ二人とも。このような主に仕えていては、本当の甘味というものを味わうこともできないでしょう。ツツミはせいぜい地面のマナを舐めまわしているのがお似合いです!」
「レカエルこそ! 木から出る樹液でも啜ってればいいよ、カブトムシみたいにね!」
「お、お二人とも落ち着いてください! 子供の前ですよ!」
タンチョウの制止にもツツミとレカエルは矛を収める様子がない。おろおろとどうしていいかわからないタンチョウである。
「え、エウラシア様! お二人を止めてください!」
「うー?」
我関せずとばかりにべっこう飴に舌鼓を打っていたエウラシア。助けを求められるが仲裁するつもりもないようだ。
「やだ。めんどくさい」
「そんな! コガネちゃんたちの教育にもよくありませんよ!」
ツツミの眷属のコガネとシロガネが今後成長することもないだろう。しかし見た目は完全に5,6歳くらいの子供である。やさぐれてしまったら悲しいではないか。
「……えー」
ものすごくめんどくさい、といった様子でツツミとレカエルをエウラシアは眺めた。そして、うるんだ目で助力を求めるタンチョウに向き直る。
「報酬の。もふもふ。上乗せ。する?」
「えっ?」
「炉の。作り方。教えた。報酬。まだ。もらって。ない」
「……あっ」
そういえばそんな条件で生贄にされていたタンチョウだった。なにやら怪しいエウラシアの視線にぐっ、と詰まりながらも答える。
「う、上乗せします! しますから!」
「もふもふに。加えて。むにゅむにゅとか。ぺろぺろとか。つくけど」
「む、むにゅ? ぺろ? わ、わかりました、むにゅむにゅとぺろぺろもお付けします! あとぽよぽよも!!」
ものすごく頭の悪い会話をしているようで訳が分からくなってきたタンチョウ。自分でもなにを対価としてしまったのか理解していない。
しかしどうやらエウラシアのお気にはめしたようで、ゆっくりとツツミとレカエルを引き離した。
「レカエルなんて! 花の蜜でも吸って満足してればいいよ!」
「ツツミこそ、サトウキビの根でもかじっていればいいのです!」
「ふたり。とも。そこまで」
割って入られてもにらみ合うのをやめない二人。エウラシアは静かに言った。
「実際に。やって。みればいいい」
「はい?」
「……第二回」
エウラシアは宣言する。
「最も。グルメな。神使は。誰だ。選手権。……開催」
この世界に来た折、食べ物をそれぞれ出して優劣を競ったことがあった。もう一度この選手権を開催しようというのである。
「……そうですね。口では何とでも言えます。決着は!」
「うん! キッチンでつけよう!」
こうして第二回最もグルメな神使は誰だ選手権の開催が決定した。静観していたミノタリアがぽつりと言う。
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