がんばれキモオタ異世界道中~ボクが救世主になったワケ~アルファポリス版

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北の村復興編

53. 暗雲

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 豊とマリーゴールドが倒したはずの大猿が、
未だ消えぬ炎を身に纏いながら、両国砦内を通過してきた。

 激しい炎を振りかざし、人の波を掻き分ける。
度重なる連戦により、兵達に余力は残されていない。

 大猿は、ギャリオンが倒したバラバラの片割れに目をやると
猛突進して死体まで駆け寄り

【貪り始めた】

ガツ、ガツ、バリッ、バリッ
モシャモシャ、グジュ、ミチュッ

 荒々しい咀嚼音が辺り一面に響き渡る。
不気味さと不快さを漂わせ、一心不乱に同族を貪り喰らう大猿。

おぞましい情景を目の当たりにし、
皆が呆気に取られている中、一足早く我に返った豊が声をあげる。
「ギャリオン! マリー! いけるか⁉」

「やるしかありません!」
「死に損ないが……! さっさとぶっ殺してやるぜ!」

一斉に大猿へ飛びかかる三人

次の瞬間。

【バシュウゥゥゥゥゥゥ‼】

 轟音が響き渡り、それと同時に大猿の身体から高熱の蒸気が噴き出した。
三人は蒸気の勢いと熱量に為す術もなく吹き飛ばされる。

「アッ‼ ツゥイ‼」
「くっ! コレでは……奴に近寄れません!」
「魔力を秘めた防壁蒸気か……! あれに魔術は効かん……。ユタカ! ニギリメシを私とギャリオンに渡せ! 魔力と体力が足りん! 先に食った私達がなんとか時間を稼ぐ、その間に魔力を溜めてデカイのを落とせ!」

「わかった!」
すぐに【過剰なる糧】で【戦闘おにぎり】を出し、二人に渡す。

【戦闘おにぎり】――――――――
魔力で体現させた強化版のおにぎり。
この改良版は従来とは異なり、腹いっぱいでも食べられる。
急いで食べても腹に溜まらず喉にも詰まらない。
水薬の様な即効性があり、魔力と体力の補給を助ける。
味も美味くて力が漲る。
――――――――――――――――

「ムグッ! アグッ! ギャリオン、私の拘束魔術は大して長くは持たん! 全開で倒しに行け! ムグッムグッ!」

「バグッ! 分かりました! モグモグモグ! ゴクン!」

 蒸気は次第に納まり、【食事】は同時に終わった様だ。
急いで豊とロシィも戦闘おにぎりにかぶりつき、お茶で流し込む。
豊は続けて、カツ丼とコーラを追加した。

 大猿の身体が変化してゆく、
骨格、筋肉、体毛がみるみるうちに膨れ上がり、ふた回りも大きく変化した。

 膨張した筋肉繊維に押し出され、焼けた落ちた大猿の皮膚と体毛が再生する。
歩を進める度に大地は抉れ、異様な闘気はまるで陽炎のように、空間が歪むような錯覚に陥る。

【ニコォッ……‼】

 笑っている……! 圧倒的強者の余裕。大猿は自身の勝利を確信している。
どんな生物よりも、自分が強い事を信じて疑っていない。
 その瞳はこの場の誰よりも強く光り、
生命体としての格の差を示している様も見られる。

 魔獣は体内に蓄積している魔力量が多く、何らかの形で摂取することにより
強固な肉体へと成長と遂げる。本来なら他種族を捕食することによって
成長を促進させることがあるが、今回は、同等の魔力を秘めた同族の捕食だ。
それは化学反応の様に、強い力を発揮させる事となる。

「大地よ我が命に従い、かの者を束縛せよ【デュアル・レストバインド】!」

大地から硬化した土が突き出し、大猿の動きを封じる。
それと同時にギャリオンが爆発的な突進からの一撃
「全力全開! 全てを貫く、渾身の疾風ヴァヌア・スヴィンド

ズグッ……!!

 体重と勢いの乗った刺突だった。
剣牙獣にトドメを刺した、渾身の一撃だった。
弱点となりえる箇所が集中している急所、顔を的確に狙い
これ以上ないタイミングで繰り出されたギャリオン全力の一撃を
なんと大猿は【歯で受け止めた】

「なっ……! ぐわぁぁぁぁっ!」
大猿に剣ごと振り回されたギャリオンは吹き飛ばされ
外壁に激突した後、そのまま崩れ落ちた。

「「ギャリオン‼」」

「ユタカ! 拘束が解ける! 早く撃て!」
「収束せよ! 第五の術ぅぅぅ‼」

豊が大猿に向かい飛び出す。
必要な工程を完了し、後は魔術を放つのみであった。

「【怒りの鉄槌】!!」
 
具象された鉄の巨人が鉄槌を振り下ろす。
威力と速度は最高値に達し、この上ない完成度だ。
この術は豊の怒りに比例し、飛躍的に破壊力が上がる。

「喰らえぇぇぇぇ‼」

【バギィィィン‼】

刹那

 炸裂音と共に、マリーゴールドの拘束魔術は破られ
豊への強烈な打撃、これにより
【怒りの鉄槌】は軌道を変えられ、

【受け流された】

 怒りの鉄槌は空を切り、その絶大な攻撃力は不発となった。
受け流された力は離れた城壁を貫通し、崩壊させる。
それと同時に瞬くような速度で痛恨の一撃が目の前の豊を襲う。

 たった一撃で、纏っていた鎧は全壊し、
転がされた先で、骨と筋肉に看過しがたい衝撃が走る。

「ぐがぁぁぁぁっ! ぁぁぁぁぁ‼ ああああっっ‼」
鎧が全て砕けたおかげで攻撃の衝撃は分散した。それでも大猿の一撃は豊に致命的であった。肋骨が砕け内臓が潰れ、口からは大量の吐血が溢れた。

「(ドラミングのアドレナリンでクリア出来る痛みじゃない……! 分析しろ! 何処が破壊された⁉ 急いで直すんだ! 戦闘おにぎり……! ダメだ……この状態で飲み込めるわけがない……! 胃が、内臓がひっくり返っている……!)」

 大猿の一撃を喰らい、致命傷を負う豊はあまりの激痛に悲鳴をあげる。
一瞬で必殺技が二度も封殺され辺りは静まり返っていた。先ほど大猿を圧倒したはずのギャリオンが吹き飛ばされ、大技を放った豊が地に伏せている。

 その様子に、マリーの詠唱は止まり、呆然と立ち尽くしてしまう。
「なんて事だ……! こうも容易く、怒りの鉄槌が破られるとは!」

「ごしゅじんさまっ! 今、治すからっ!」
立ち尽くすマリーゴールドをよそに、反射で豊へと駆け出してしまうロシィ

「ダメだ! ロシィ! 今は動くな……‼」
大猿がロシィ目掛けて



【跳ぶ】



「「やめろぉぉぉぉぉ!」」



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感想 2

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みんなの感想(2件)

あれってなんだっけ

本当に面白い作品を続けてくださり感謝しております。
年末年始多忙な時期ですが、寒さ、風邪やインフルエンザなどの流行りにもお気をつけてお過ごしください。
是非とも最後まで追っていきたい作品として楽しみにしております。敬具

解除
あれってなんだっけ

町や村の復興支援というのは、現代日本の現実とも重なって「希望」に満ち溢れる良いものですねぇ

解除

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