御庭番衆くの一、千代女の忠義

司条西

文字の大きさ
6 / 8

拷問蔵の中、酒を飲む二階堂と侍たちの笑い声が響く。
その中で木馬の乗せられた千代女は、頭を右肩に預け、股間への苦痛にじっと耐えていた。

「はぁ、はぁ、ううっ」

整った顔立ちが歪み、苦悶の声が漏れる。
息をするだけでも、股間の痛みはどんどん増してくる。

「くぅっ」

何とか木馬から逃れようと、身体を揺すって無駄な努力を試みる。
だがそれは、股間の痛みを激しくするだけに終わった。
汗が顎先から落ち、忍び装束から露出する胸の谷間へ流れ込む。
そんな千代女が必死に足掻く様を、二階堂たちは酒を飲みながら楽しそうに眺めている。

(あの男たちは、私への拷問を楽しんでいる)

目前の男たちを害虫でも見るように睨みつける千代女。
女に痛みや苦しみを与えることを愛好する人間がいることは、知っていた。
だがまさか藩主ともあろう者が加虐趣味を持ち、あまつさえ拷問を娯楽としているとは想像もしなかった。

(あんな下衆どもを楽しませる道具として、私は死ぬのか)

千代女の目から涙が溢れる。
加虐趣味者の見世物として生を終えるのは、あまりに無念で惨めすぎた。



(だがこれも私の失態が招いたことだ、受け入れねばならぬ。何があっても最期まで耐え続けねば)

木馬の上で悲壮な決意をする千代女。
そんな苦悶する顔を見て、二階堂はようなく千代女に声をかけた。

「そろそろ素直になったらどうじゃ、幕府のくの一よ」

その声で侍たちも盃を置くと、千代女の周りへと進む。
そして木馬を両手で掴み、前後に揺さぶりをかけた。

「う、うあぁぁぁ!」

股間から発した激痛が、千代女の全身を貫く。
クワッと目を見開き、けたたましい悲鳴をあげた。

「ほら吐け、吐かぬか」

二階堂が口元を吊り上げて言うと、侍たちは力の限り木馬を揺さぶった。

「ああっ! きゃぁぁぁぁぁっ!」

拷問蔵に木馬の軋む音と、千代女の悲鳴が響く。
長い髪が振り乱され、宙を舞った。

「やめてぇ! もぅ、やめてぇ!」

「だったら白状せい、そうすれば楽になるぞ」

「いやっ、い、いやぁぁ!」

「よい覚悟じゃ」

二階堂は愛用の笞を手にすると座敷から降りてきた。
そして渾身の力を込めて千代女の太腿を打つ。

「ひッ!」

笞の痛みと木馬の痛みが、同時に千代女を襲う。
二階堂は容赦せず、千代女の体を打ち続けた。

「ひいっ! あうっ! きゃぁっ! ああっ!」

背を、腕を、太股を、そして胸をも笞打たれた。
笞が肌を叩くたびに汗粒が飛び散る。
首を仰け反らせて、千代女は童のように泣き叫んだ。

「やめてぇ! おろしてぇ!」

千代女の哀願を無視して侍たちは木馬を揺さぶった。
二階堂もさらに力を込めて、笞を振るう。
もはや尋問さえも行われない。
上肢は笞で、下肢は木馬で責められ、千代女は絶叫した。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

獣のような声を上げた後、千代女は頭を垂れた。

「どうした、そろそろ終いか?」

二階堂の嘲るような声が、まるで遠くから聞こえるようになる。
千代女の意識が少しずつ遠のいてゆく。
最後の笞が背中を打つと同時に、千代女は気を失った。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【時代小説】 黄昏夫婦

蔵屋
歴史・時代
 江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。  そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。  秋田藩での仕事は勘定方である。  仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。 ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。   そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。  娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。  さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。    「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。  今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。  この風習は広く日本で行われている。  「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。  「たそかれ」という言葉は『万葉集』に 誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」 — 『万葉集』第10巻2240番 と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。  「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に 「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」 — 『源氏物語』「夕顔」光源氏 と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。  なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。  またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。 漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。  「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。  この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。  それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。  読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。  作家 蔵屋日唱    

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末

松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰 第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。 本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。 2025年11月28書籍刊行。 なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。 酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。