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「それで結局なんで漫才を始めたいの?」
モノマネは諦めたのか、元の落ち着いた抑揚に乏しい口調に戻っている。
「最初から言ってるでしょ、漫才やってるって聞いて私もやってみたいなって思うようになったって。だけど、紀貫之じゃないからね」
委員長は座ったままだがその場でスッと背筋を伸ばし、唐突に始めた。
「漫才がしたいなら私がファミレスの店員役やるからクレーマーやってみて」
「いきなりコント漫才!?しかも私なんでクレーマー!普通のお客さんでいいじゃん」
「お客様、申し訳ありません。当店はしゃべくり漫才専門店でコント漫才の取り扱いはございません」
「しゃべくり漫才専門ってどんなファミレス!コント漫才専門ファミレスなんてないんだから、どっちも扱ったらいいんじゃないの」
「コント漫才専門店は隣にございます」
「あるんだ、そんなニッチで何をするのかもわからない専門店。それでここはどんなファミレスなの?しゃべくり漫才専門ファミレスって」
「当店はご家族お友達としゃべくり漫才を楽しめるファミレスでございます」
「ああ、しゃべくり漫才見て笑いながら食事出来るってことね。そんなファミレスがあってもいいかも。楽しそうだよね」
「全然違います」
「バッサリだな。こっちは客だぞ。じゃあ、人気の漫才師が働いているファミレスとか?」
「それは向かいのファミレスです」
委員長は手のひらを広げて右手で窓の外を示す。片側二車線の道路の向こうには確かにファミレスがあった。
「本当にある!っていうか、ここファミレスだらけじゃん。潰れちゃうよ変なファミレスに囲まれてたら。しかも何するのかわからないファミレスばっかり集まっちゃって」
「当店はしゃべくり漫才体験型ファミレスとなっております」
「体験?じゃあ自分で漫才するってこと?見る限りステージもマイクもないけど。それなのに体験出来るの?大丈夫かな。それでどんなメニューがあるの?このしゃべくり漫才専門ファミレスには」
「天丼がございます」
よく通る明朗な声でゆっくりとそう言うと委員長は深々とお辞儀をする。顔を上げると無言で立ち上がり、空になったグラスを持ってドリンクバーへと向かっていった。
「落語みたいなオチつけやがって。それに全然天丼になってないし」
モノマネは諦めたのか、元の落ち着いた抑揚に乏しい口調に戻っている。
「最初から言ってるでしょ、漫才やってるって聞いて私もやってみたいなって思うようになったって。だけど、紀貫之じゃないからね」
委員長は座ったままだがその場でスッと背筋を伸ばし、唐突に始めた。
「漫才がしたいなら私がファミレスの店員役やるからクレーマーやってみて」
「いきなりコント漫才!?しかも私なんでクレーマー!普通のお客さんでいいじゃん」
「お客様、申し訳ありません。当店はしゃべくり漫才専門店でコント漫才の取り扱いはございません」
「しゃべくり漫才専門ってどんなファミレス!コント漫才専門ファミレスなんてないんだから、どっちも扱ったらいいんじゃないの」
「コント漫才専門店は隣にございます」
「あるんだ、そんなニッチで何をするのかもわからない専門店。それでここはどんなファミレスなの?しゃべくり漫才専門ファミレスって」
「当店はご家族お友達としゃべくり漫才を楽しめるファミレスでございます」
「ああ、しゃべくり漫才見て笑いながら食事出来るってことね。そんなファミレスがあってもいいかも。楽しそうだよね」
「全然違います」
「バッサリだな。こっちは客だぞ。じゃあ、人気の漫才師が働いているファミレスとか?」
「それは向かいのファミレスです」
委員長は手のひらを広げて右手で窓の外を示す。片側二車線の道路の向こうには確かにファミレスがあった。
「本当にある!っていうか、ここファミレスだらけじゃん。潰れちゃうよ変なファミレスに囲まれてたら。しかも何するのかわからないファミレスばっかり集まっちゃって」
「当店はしゃべくり漫才体験型ファミレスとなっております」
「体験?じゃあ自分で漫才するってこと?見る限りステージもマイクもないけど。それなのに体験出来るの?大丈夫かな。それでどんなメニューがあるの?このしゃべくり漫才専門ファミレスには」
「天丼がございます」
よく通る明朗な声でゆっくりとそう言うと委員長は深々とお辞儀をする。顔を上げると無言で立ち上がり、空になったグラスを持ってドリンクバーへと向かっていった。
「落語みたいなオチつけやがって。それに全然天丼になってないし」
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