晩酌を前提にお付き合いして下さい!

日立かぐ市

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飲み足りなくて飲み会帰りにスーパーへ寄る

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「あれ?あれ?豊崎君?」

 薄っすらとした酔いが一気に覚めた、そんな気がした。まさかこんなところを見られるとは思わなかった。しかも、よりによって豊崎君。

 スーパーの酒売り場で買い物カゴに入っているのは酒、酒、酒。ビール6本パックに日本酒とワインが一本ずつ。なんということだ酒しか入ってないじゃないか!
 歪みそうなくらいカゴに酒を入れてもそれでも足らず物欲しそうに棚を見つめている、きっと彼の目には映っただろう。

 うん、だいたい合っている。重いのを我慢してもう一本、紹興酒を買うかどうか迷っていた。中華系のお惣菜に紹興酒、合うだろうなぁって想像していた。

 しかしこれじゃあまるでアル中だ。チームリーダーたる私の威厳が地の底まで落ちてしまうじゃないか。4月から頑張ってきたのに、化けの皮が剥がれるまで6ヶ月。思ったよりも早かった。

 あぁ、せめてお酒以外に食べるものを少し入れておけば。いや、でもサラミ、柿の種、スルメが入っているよりはましか。今度から、いつ見られてもいいようにマカロン入れておこ。マカロンなんてスーパーにないか。

 一方で豊崎君のカゴの中はエビ好きなんだろうな、エビばっかりだ。生のエビと冷凍のエビ。それにブロッコリー。

 筋トレする人はブロッコリーを食べるらしいから、それか?

「さっきのお店のエビ、自分で作ってみようと思って。居酒屋のメニューは食べるのも好きなんですけど、気に入ったのは自分で作ってみるのも好きで。それで明日作ってみます、オーロラソースの隠し味をいくつか試してみます」

 カゴにお酒しか入っていない私と違って豊崎君はしっかりしてるな。自分で料理を作るなんて。しかも食べた翌日、忘れないうちに復習するなんて立派だ。

 それにしても、あのエビ美味しかったよなぁ。すごく簡単そうなのに色が綺麗で見た目もおしゃれだし、普段コンビニやスーパーで食べる出来合いのものとは似て非なる味。

 あんなのを自分で作れるなんていいなぁ。家で食べるなら帰りを気にせずに酔えるし、お酒だって周りを気にしてビールじゃなくていい。

 いかん、いかん。思い出したらよだれが垂れてきそうだ。これだから酔っぱらいは。

「食べに来ませんか!俺、作ります」
「え!?いいの?」

 不意の申し出に即答だった。

 あぁ、何を言っているんだ私は。あのオーロラソースを纏ったエビをまた食べたいと頭の中がいっぱいになっていたせいだ。即答してしまった。
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