70 / 79
邪神モーロックの都
その46
しおりを挟む
100個以上の小さな金属球は光の矢となって次々とシュナン少年を襲います。
今まで手に持つ杖でムスカル王の放った金属球を防いでいたシュナンでしたが一斉に死角から襲い来るその金属球の群れを全て杖で弾くのは彼の反射神経をもってしてもとても不可能な事でした。
ムスカル王は勝利を確信して一瞬後に全身穴だらけになったシュナン少年の亡骸を見るだろう事に少し感傷を覚えます。
しかし実際には一瞬後、彼の顔は驚愕の表情を浮かべていました。
シュナン少年を襲っていた100個以上の小さな金属球の群れはどうやったのか全てはね返され水晶宮の床の上に音を立ててバラバラに散らばったのです。
床に落ちた金属球たちは落ちた場所から放射状に床上をコロコロと転がって行きます。
「こ、これはどういう事だー」
驚愕したムスカルは急いでポケットから多数の金属球を鷲掴みにして取り出すとそれに磁力を帯びさせて再びシュナン少年に向かって発射します。
またしても流星群のように群れをなした数多くの金属球たちは楕円軌道を描きながらシュナン少年を一斉に襲いました。
しかしー。
バシュッという音と共にその多数の金属球はバラバラになって落ちて床に散らばります。
唖然として床に散らばった金属球たちを見つめるムスカル王。
けれど彼が顔を上げて足元にいくつもの金属球が散らばった水晶魔宮の床に立つシュナンの姿を見たときその眼は更なる驚きに大きく目開かれます。
「マ、マント・・・」
そう、今のシュナン少年は羽織っていたマントを脱ぎ捨てて師匠の杖を持つ手とは反対側の手でぶら下げるように持っていました。
彼はそれを使って自分を一斉に襲った鉄球群を払いのけ床に叩き落としていたのです。
鉄板さえ貫通する金属球の凄まじい威力も丈夫な繊維で作られた柔らかいマントに包み込まれその勢いを殺され無力化していました。
シュナンは手に持つそのマントを振り回して広範囲から迫り来る電磁球の群れを一挙にはたき落としていたのです。
これは人間の反射神経ではとても対応出来ないムスカル王の金属球による攻撃を防ぐためにシュナンが考えた苦肉の策でした。
シュナンの持つマントによって自分の攻撃を簡単に防がれたのを見たムスカル王は最初は呆然としていましたがやがて何故か腹を抱えて笑いだしました。
「ハーハッハッ!!マント・・・マントとはなっ!ま、まさかこんな単純な手で余の技が防がれるとはなっ!ウワハッハーッ!!!」
戰いも忘れたようにシュナン少年の前で腹を抱えて笑い続けるムスカル王。
「ワーハハッ!!見たか!?レプカール。これでは余に対抗するために何年も防御魔法の研究にいそしんでいたお前が馬鹿みたいではないか!?ハーハッハッハ!!」
腹を抱えて笑うムスカル王に話を振られた師匠の杖は自分を持っているシュナン少年に向かって不機嫌な声で言います。
「調子に乗るなよ、シュナン。たまたま発想が良かっただけだぞ」
手に持つ師匠の杖の言葉を聞いて目隠しをした顔に当惑の表情を浮かべるシュナン。
「ハァ・・・。わかりました、師匠」
シュナンはそう言うと今度はまだ自分の前で可笑しそうに笑っているムスカル王の方に顔を向けます。
そしてキッパリとした口調で彼に声を掛けました。
「あなたの手品もそろそろタネが尽きた様だね。ムスカル王。それじゃ、そろそろ決着をつけよう」
シュナンは手に持っていたマントをパサリと床に落とすと杖を構えたまま仁王立ちになり口元で奇妙な呪文を唱え始めました。
シュナンの身体の中の魔法エネルギーが急速に高まって行きます。
彼は強大な敵であるムスカルを倒すためにとうとう切り札である究極爆裂魔法バルスを使おうとしていたのです。
ムスカル王もシュナン少年の発する異様な闘気に気づいて笑うのをやめて改めて彼と向き合いました。
「滅びの呪文だとー。バルスを使うつもりか・・・少年」
そしてムスカル王もまたシュナンとまったく同じ呪文を小声で唱え始めます。
究極魔法に対抗できるのは究極魔法だけだからです。
ムスカル王の身体の中にも急速に魔法の力がみなぎって行きます。
水晶魔宮の青い床の上で少し距離をとって対峙する二人の魔法使い。
西の都から来た奇妙な杖を持つ盲目の魔法使いの少年シュナンと邪神モーロックの地上代行者にしてこの国の王である王笏を構える大魔術師ムスカル。
彼らはそれぞれ自身の魔力を究極にまで高めそれを相手に向かって放とうとしていました。
水晶魔宮の青い壁が二人の魔力に反応して信号のような明滅を繰り返しています。
やがて己の魔力が最大限になった事を感じた彼らは互いに相手に向かって片手を突き出します。
その突き出した手の指先からためにためた魔力を一挙に放出し相手に向かってぶつける為です。
水晶魔宮の青い床の上で対峙する両者の間の緊張感は極限に達し今まさに互い違いに突き出した両者の腕の先端から相手に向けて全魔力をこめた必殺の魔術光線が発射されようとしていたその時でした。
「それまでだ、少年。もう、やめよう」
なんとムスカル王がシュナンに向かって突き出していた手をおろしシュナン少年に対して戰いの中止を申し入れて来たのです。
[続く]
今まで手に持つ杖でムスカル王の放った金属球を防いでいたシュナンでしたが一斉に死角から襲い来るその金属球の群れを全て杖で弾くのは彼の反射神経をもってしてもとても不可能な事でした。
ムスカル王は勝利を確信して一瞬後に全身穴だらけになったシュナン少年の亡骸を見るだろう事に少し感傷を覚えます。
しかし実際には一瞬後、彼の顔は驚愕の表情を浮かべていました。
シュナン少年を襲っていた100個以上の小さな金属球の群れはどうやったのか全てはね返され水晶宮の床の上に音を立ててバラバラに散らばったのです。
床に落ちた金属球たちは落ちた場所から放射状に床上をコロコロと転がって行きます。
「こ、これはどういう事だー」
驚愕したムスカルは急いでポケットから多数の金属球を鷲掴みにして取り出すとそれに磁力を帯びさせて再びシュナン少年に向かって発射します。
またしても流星群のように群れをなした数多くの金属球たちは楕円軌道を描きながらシュナン少年を一斉に襲いました。
しかしー。
バシュッという音と共にその多数の金属球はバラバラになって落ちて床に散らばります。
唖然として床に散らばった金属球たちを見つめるムスカル王。
けれど彼が顔を上げて足元にいくつもの金属球が散らばった水晶魔宮の床に立つシュナンの姿を見たときその眼は更なる驚きに大きく目開かれます。
「マ、マント・・・」
そう、今のシュナン少年は羽織っていたマントを脱ぎ捨てて師匠の杖を持つ手とは反対側の手でぶら下げるように持っていました。
彼はそれを使って自分を一斉に襲った鉄球群を払いのけ床に叩き落としていたのです。
鉄板さえ貫通する金属球の凄まじい威力も丈夫な繊維で作られた柔らかいマントに包み込まれその勢いを殺され無力化していました。
シュナンは手に持つそのマントを振り回して広範囲から迫り来る電磁球の群れを一挙にはたき落としていたのです。
これは人間の反射神経ではとても対応出来ないムスカル王の金属球による攻撃を防ぐためにシュナンが考えた苦肉の策でした。
シュナンの持つマントによって自分の攻撃を簡単に防がれたのを見たムスカル王は最初は呆然としていましたがやがて何故か腹を抱えて笑いだしました。
「ハーハッハッ!!マント・・・マントとはなっ!ま、まさかこんな単純な手で余の技が防がれるとはなっ!ウワハッハーッ!!!」
戰いも忘れたようにシュナン少年の前で腹を抱えて笑い続けるムスカル王。
「ワーハハッ!!見たか!?レプカール。これでは余に対抗するために何年も防御魔法の研究にいそしんでいたお前が馬鹿みたいではないか!?ハーハッハッハ!!」
腹を抱えて笑うムスカル王に話を振られた師匠の杖は自分を持っているシュナン少年に向かって不機嫌な声で言います。
「調子に乗るなよ、シュナン。たまたま発想が良かっただけだぞ」
手に持つ師匠の杖の言葉を聞いて目隠しをした顔に当惑の表情を浮かべるシュナン。
「ハァ・・・。わかりました、師匠」
シュナンはそう言うと今度はまだ自分の前で可笑しそうに笑っているムスカル王の方に顔を向けます。
そしてキッパリとした口調で彼に声を掛けました。
「あなたの手品もそろそろタネが尽きた様だね。ムスカル王。それじゃ、そろそろ決着をつけよう」
シュナンは手に持っていたマントをパサリと床に落とすと杖を構えたまま仁王立ちになり口元で奇妙な呪文を唱え始めました。
シュナンの身体の中の魔法エネルギーが急速に高まって行きます。
彼は強大な敵であるムスカルを倒すためにとうとう切り札である究極爆裂魔法バルスを使おうとしていたのです。
ムスカル王もシュナン少年の発する異様な闘気に気づいて笑うのをやめて改めて彼と向き合いました。
「滅びの呪文だとー。バルスを使うつもりか・・・少年」
そしてムスカル王もまたシュナンとまったく同じ呪文を小声で唱え始めます。
究極魔法に対抗できるのは究極魔法だけだからです。
ムスカル王の身体の中にも急速に魔法の力がみなぎって行きます。
水晶魔宮の青い床の上で少し距離をとって対峙する二人の魔法使い。
西の都から来た奇妙な杖を持つ盲目の魔法使いの少年シュナンと邪神モーロックの地上代行者にしてこの国の王である王笏を構える大魔術師ムスカル。
彼らはそれぞれ自身の魔力を究極にまで高めそれを相手に向かって放とうとしていました。
水晶魔宮の青い壁が二人の魔力に反応して信号のような明滅を繰り返しています。
やがて己の魔力が最大限になった事を感じた彼らは互いに相手に向かって片手を突き出します。
その突き出した手の指先からためにためた魔力を一挙に放出し相手に向かってぶつける為です。
水晶魔宮の青い床の上で対峙する両者の間の緊張感は極限に達し今まさに互い違いに突き出した両者の腕の先端から相手に向けて全魔力をこめた必殺の魔術光線が発射されようとしていたその時でした。
「それまでだ、少年。もう、やめよう」
なんとムスカル王がシュナンに向かって突き出していた手をおろしシュナン少年に対して戰いの中止を申し入れて来たのです。
[続く]
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる