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その5
侍女の悲劇
しおりを挟むさて、ナロー姫たちが城に戻って来たその夜の事です。
ナロー姫の血の繋がらない兄であるカクヨーミ王子の自室に宮殿で働く侍女の一人が呼び出されていました。
悪趣味な内装の施された広い間取りの部屋に置かれた豪奢なベッド。
ベッドの端にはガウン姿の王子が座りその前に呼び出された侍女が不安げな様子で立っていました。
ベッドの端に座るカクヨーミ王子は下卑た笑いを浮かべて侍女の顔を見上げています。
そして彼女に言いました。
「カトリーナ。何で俺の部屋に呼び出されたかはもちろんわかっているだろうな?」
「はい、王子様」
カクヨーミはニタリと好色そうな表情を浮かべます。
「それじゃ、例のものを出してもらおうか」
「はい・・・」
カトリーナは蚊の鳴くような声で返事をするとメイド服のポケットから布っぽい何かを取り出して王子にそれを手渡しました。
カクヨーミ王子はその小さな布の様なものを受け取ると両手で大事そうに持ちそれを自分の顔のすぐ前で広げます。
「これが侍女の中でナンバー1のシルキーちゃんのおパンツか!グヘヘへッ!!予想通り芳しき香りがするわいっ!」
カトリーナは王子のその言葉を聞くと両手で顔を覆い泣き出してしまいました。
「も、もう許して下さい!王子様!同僚の下着を盗むなんてこれ以上は出来ませんっ!!わ、わたしの下着で良ければいくらでも差し上げますからっ!」
しかしカクヨーミ王子はカトリーナのその言葉をばっさりと否定します。
「黙れっ!!ババアのパンツなんかいらねーよっ!!」
ショックを受けたカトリーナが涙目で王子に叫びます。
「ひ、ひどいっ!!わたしはまだ23歳ですっ!!」
「フンッ!!匂いが違うんだよっ!匂いがっ!!お前には充分な礼金を渡してあるだろうがーっ!金に目が眩んだくせに善人ぶるんじゃねぇっ!!そうだーっ」
カトリーナを追い詰める様にカクヨーミ王子は彼女に対してさらに邪悪な提案をしてきました。
「確か今、ナローが戻って来ているはずだな。おいカトリーナ!お前あの女が風呂に入ってるところを見計らってあいつのおパンツを盗んで来いっ!」
王子の言葉にさらに衝撃を受けるカトリーナ。
とうとう彼女は顔を両手で覆いシクシク泣きながら床にうずくまってしまいました。
「いくら血が繋がってないとは言え妹君までーっ。獣っ!あなたは獣ですっ!!どうしてっ?!昔はあんなに可愛い王子様だったのにっ!!」
さすがにやり過ぎたと思ったのかカクヨーミ王子はベッドの端に座ったままの状態で腕を伸ばし床に座り込んだカトリーナの肩に手を置きます。
そして薄ら笑いを浮かべ猫なで声で彼女に話しかけました。
「今度だけ、これで終わりにしてやるから。礼金も上積みしてやる。だから、な、いいだろう?」
「ううっ」
顔を両手で覆いながら涙を流し呻き声を上げるカトリーナ。
そんな彼女の耳にカクヨーミ王子はさらに甘い言葉を囁きます。
「本当にこれっきりにするからさ。弟を大学に行かせる為に金がいるんだろ?だから、な・・・」
もちろん彼はこれで終わりにするつもりなどありませんでした。
[続く]
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