ナロー姫の大冒険

きーぼー

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その12

鬼岩城攻略戦Ⅱ

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さて「鬼岩城攻略作戦」の準備が着々と進んでいたその頃ナロー姫のいるベカンの港町付近の野営地で勇者アルファポリス率いる各国の連合国の指揮官たちによる作戦会議が行われました。
そしてそこには我らがナロー姫とシールズの姿もありました。
彼らは今回の作戦の立案者として特別にこの会議に参加する事になったのです。
広い野営地には数多くの兵士用のテントが立ち並び各国の旗もあちこちに立っています。
そして野営地の中央付近に置かれた野外用の長いテーブルの周りに各国の指揮官たちが集まっていました。
兵士達が走り回り喧騒とした雰囲気の中、テーブルの上座に立つ勇者アルファポリスは良く通る声で同じテーブルを囲む各国の指揮官たちに語りかけます。

「諸君、ついにあの鬼岩城を攻略する時が来た。この戦いは危険な賭けだが勝利する以外に我々に生き残る道は無い。みんな心してこの決戦に挑んで欲しい」

各指揮官から賛同の声が上がります。

「おおっ!この日を待っていましたぞ!!」

「先鋒は我らホワイトカラー天馬騎士団にお任せ下さい!」

「グハハハッ!!魔族の爪や牙など恐れるに足らぬわっ!」

「バナナはおやつに入りますか?」

アルファポリスは諸将の士気の高さに満足して頷くと彼らに作戦の進行状況とこれからの行動について説明します。

「すでにハーケン国とフリーター国の共同軍が陽動の為に鬼岩城正門に向かっている。間もなく戦闘が開始されるだろう。我々は奇襲用の船団の準備が整い次第、ザワザワ川の流れに乗って鬼岩城の背後に回り込み裏門側から城を攻撃する」

勇者アルファポリスは話し続けます。

「すでに丸太の道を使って多くの軍船をザワザワ川の上流まで送り込む事に成功した。選び抜かれた精鋭の兵士達が乗り込んで指揮官である我らの到着を待っている。各将は準備が整い次第すぐに移動して欲しい」

オーッ!!!

オーッ!!!

オーッ!!!

指揮官たちが一斉に呼応します。
そしてアルファポリスは彼らの興奮が冷めやらぬうちに片手を上げテーブルの隅でおとなしく立っているナロー姫とシールズを指し示します。

「諸君に我らの力強い味方を紹介したい。はるか南方のヒキニート王国から馳せ参じてくれた王国の第1王女ナロー・ショー・セツカニ殿とその忠実なる騎士シールズ・ガウェイン卿である」

テーブルの周りに立つ指揮官たちの目が一斉にナロー姫とシールズに集まります。
ナロー姫はいきなり諸将に注目されて戸惑いましたが緊張しながらもスカートの裾を軽く持ち上げみんなに挨拶をしました。
隣にいるシールズも頭を深く下げて礼を示し主人の後に続きます。
諸将から彼らに向けて一斉に賞賛の声が上がります。

「お若いのに大したものだ!」

「どうかお見知りおきを」

「バナナは好きですか?」

アルファポリスはナロー姫達に注目が集まったところでさらに言いました。

「ナロー姫は今回の作戦の立案者であり、かの高名な大魔術師マーリン殿の一番弟子である。勇名の知られた騎士シールズと共に我らの危機に駆けつけてくれた。彼らはまさしく天からの御使でありこのお二人がいれば我ら人類の勝利は間違いない」

諸将からさらに賞賛の声が上がります。

「おおっ!あの業炎のマーリンの!!」

「これは力強いっ!!」

「そんなバナナっ!!」

いきなり持ち上げられて困惑するナロー姫。
彼女は隣に立つシールズにコソッと耳打ちして言いました。

「ちょっと褒め過ぎではないですか?」

シールズも小さな声で答えます。

「こうやって多少なりとも士気を高めてるんでしょう。この戦は一か八かの賭けですからね。本当はみんなとても不安なんですよ。勝利の根拠となる何かが欲しいんです。勇者様はそれを知ってるんでしょう」

ナロー姫はちょっと肩をすくめ溜め息をつき言いました。

「シンボルとして利用されてるわけですわね。まぁ仕方ないですけど・・・」

シールズがコクリと頷きます。
そしてしみじみと言いました。

「政治は難しいですからね」


[続く]
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