ナロー姫の大冒険

きーぼー

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その18

大団円

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 さて、皆さんに長々とお付き合いいただいた、この「ナロー姫の大冒険」も本章を持ちまして、いよいよ最終話となり、無事、大団円を迎える運びと相成りました。
ですので今回はナロー姫のその後についてお話ししましょう。
お城に帰ってすぐに彼女には悲しい別れが待っていました。
ナロー姫の最も信頼する護衛騎士であるシールズ・ガウェインが彼女の護衛役を辞し修行の旅に出てしまったのです。
シールズの事を密かに愛していたナロー姫は自分も一緒に連れて行って欲しいと彼に頼みましたがもちろんそんな事が許される訳がありません。
フルアーマに包まれた身体を朝日に光らせて黒い軍馬に乗ってお城の城門から旅立つ彼の後ろ姿をナロー姫は涙を流しながら見送りました。
そして旅に出た彼がこのカスニート王国に帰ってくる事は二度となかったのでした。

勇者アルファポリス率いる人類の連合軍と魔王軍との激しい戦いはその後も長きにわたって続きました。
しかし「鬼岩城攻略戦」から約10年後に行われた一大決戦において勇者アルファポリスは自らの命と引き換えに魔王を倒しその荒ぶる魂を大地の奥深くへと封印しました。
その後、人間と魔族との間で休戦協定が結ばれ大陸には永く平和な時期が訪れたのでした。
きっと泉下のアルファポリスも喜んだ事でしょう。
彼は仲間たちとくつろいでいる時に酒杯を傾けながらよくナロー姫とシールズの話をしていたと言います。
自分もいつかはカスニート王国の様な平和な国に住みたいと。

その後しばらくしてナロー姫は父方の従兄弟であり義兄であるカクヨーミ王子と結婚しました。
反乱の鎮圧後もカスニート王国では次期王位継承者の擁立をめぐる各派閥間の対立は収まらずナロー姫は師である魔女マーリンの助言もあり色々と悩んだ末に結局はそうするのが一番いいと思ったのでした。
カクヨーミ王子は以前の様な変態行為は影を潜めナロー姫の良き夫としてまた次期国王として日々精進し充実した毎日を送っていました。
ナロー姫もそんな夫を深く信頼し二人は幸せに結婚生活を過ごしていたのですがカクヨーミ王子には一つだけ奇妙な癖がありました。
いつもでは無いのですが何故か食事をする際に皿を手で持ち上げて顎にぴったりとくっつける癖があったのです。
二人がいるカスニート王国では食事中に皿を持ち上げるのは大変無礼な行為とされていました。
彼は無意識にその行為をした事に気付くと慌てて皿を元に戻して困った様に目を泳がせます。
そしてナロー姫は夫のその癖を見るたびに何故か口に手を当ててクスクスと笑うのでした。


[完]
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