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おっぱい刑事(デカ)奮戦す
その1
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こうして、徐々に職場に慣れていった乙白さんであったが、しばらくすると、いよいよ、それまでの様な事務作業だけではなく、本格的な刑事の職務にも少しずつ従事するようになっていった。
最初に任されたのは、ある詐欺事件の犯人の男に対する、取り調べの仕事だった。
取り調べ室に置かれた机に、犯人の男と差し向かいとなって座った乙白さんは、最初は丁寧な口調で聴取を始めた。
彼女が座る机の側には、俺と山さんも陣取っており、背後から彼女の仕事振りを見守っていた。
乙白さんは、机を挟んで自分と対峙する、目の前に座る詐欺犯の男を、その澄んだ瞳で見やると、おもむろに彼に話しかけた。
「Aさん、あなたは、お年寄りに対する、オレオレ詐欺の容疑で逮捕されました。あなたは、ここ三か月の間に一人暮らしのお年寄りを狙って、何度も詐欺目的の電話をかけましたね。そして親族の名をかたって、多額のお金を、自分の銀行口座に振り込ませた。間違いありませんか」
一方、詐欺犯の男はといえば、ふてぶてしい表情で机の反対側に座っており、パイプ椅子に載せた腰から伸びる脚を、だらしなく床に這わせていた。
どうやら彼には、机を挟んで向かい側に座る乙白さんの話を、まともに聞く気は無い様だった。
乙白さんは、その男の態度にめげる事無く、彼に積極的に話しかける。
「ちゃんと、こちらを向いて下さい。あなたは、自分の罪ときちんと向き合い、反省すべきです」
すると、乙白さんと机を挟んで向かい合って椅子に座る、その詐欺犯の男は、面倒くさそうに彼女の方をチラ見した。
するとー。
男の表情は一変し、今度は食いつく様な表情で、乙白さんの方を凝視した。
そう、彼女の巨大な胸をー。
男は、机越しに下卑た笑顔を浮かべながら、乙白さんに向けて、初めて声を放った。
「ぐへへへ、姉ちゃん。すげえ胸してるな。こんなの見た事無いぜ」
その言葉を聞いた、乙白さんの顔が朱色に染まる。
乙白さんの初々しい反応に気を良くしたか、男は更に好色そうな視線を彼女に向けた。
乙白さんの顔が、更に紅潮する。
「本当にたまんないぜ。おい、もっと良く見せろよ。そうすりゃ、取り調べにも、ちょっとは協力してやるぜ」
調子に乗って、下卑た発言を乙白さんに対して繰り返す、詐欺犯の男。
「ーっ!!!」
その瞬間だった。
乙白さんの怒りが、ついに爆発した。
ダンッ!!!!!
乙白さんは、男と自分がそれを挟んで座る机の上に、まるでハンマーの様に己が拳を叩きつけた。
そして、机の向こう側に座る男に対して、涙ながらに叫んだのだった。
「何してるのっ!?あなたはっ!!お母さんは、あなたをっ!そんな子に育てた覚えはありませんっ!!!」
机を挟んで乙白さんと向かい合って座る詐欺師の男は、乙白さんの物凄い剣幕に驚き、思わず彼女の顔を真正面から見つめる。
そして、呆然とした声で言った。
「お、お母さん・・・」
乙白さんは、椅子から腰を浮かせながら、机の向こう側にいる男に対して、涙交じりの声で次々と怒声を浴びせる。
「あなたはっ!どうしてそんなに堕落してしまったの!?お年寄りを騙して、なけなしのお金をくすねるなんてっ!お母さんは悲しい!!キラキラした夢を持っていた、あなたは、一体どこに行ってしまったの!?」
自分に対して真剣に怒る、その態度と表情が、本当に母の面影と重なって見えたのであろうか。
乙白さんと机を挟んで向かい合う男は、先ほどとは打って変わって、神妙な様子で視線を下に落とす。
「でも、まともに働いても、大した金は手に入らないしさ。こんな社会で成功するには、少しは悪い事だってしないと・・・。所詮は世の中、うまい事やった者の勝ちなんだし」
「馬鹿ーっ!!!」
ダンッダッダダンッ!!!!!
甘え切った男の言葉に腹が立ったのか、乙白さんは再び机をその拳で叩いた。
「あなたから、そんなを言葉を聞きたくない!!いいっ、お母さんはね、あなたが真面目に働いて、幸せになってくれればそれでいいの!!悪い事をしてまで、お金持ちになって欲しいなんて、これっぽっちも思ってない!何故それが、解らないのっ!?」
すると、詐欺犯の男は、うなだれた姿勢のまま、パイプ椅子の上に座りながら、顔を俯かせると、なんと膝の上にポロポロと涙をこぼし始めた。
「ううーっ、お、俺はーっ。何て情けない人間に、なってしまったんだ。こんな筈じゃなかったのに。これじゃ、本当にお袋に合わせる顔がないー」
その男と机を挟んだ向かい側にいる乙白さんは、浮かせた腰を再びパイプ椅子の上に下ろすと、フゥッと息をついて今度は穏やかな声で彼に話しかけた。
「さぁ、それじゃ知ってる事や、今まであった事を順番に話しなさい。一つ残らず話すのよ。大丈夫、ちゃんと最後まで聞いてあげるからー」
「はい、わかりました・・・」
先ほどとは打って変わって、神妙な素直に罪状を話し始める詐欺師の男。
乙白さんは、机の向かい側に座るその男の話を、一生懸命に聞いており、手元のメモ用紙に内容を熱心に書き取っている。
一方、俺は隣に立っている山さんと共に、そんな風に同じ机を挟んで座る両者の様子を、少し離れた場所から見守っていた。
男は、すっかり改心した様子で、机の反対側に座る乙白さんに向かって、堰を切ったみたいに喋りかけており、乙白さんは、そんな男の言葉を熱心に聞き取り、記録に残している。
俺は、同じ机を挟んで座るそんな両者の様子を、少し離れた場所から、隣にいる山さんと共に、注意深く見つめていたが、ようやく取り調べが順調に進み始めたのを目の当たりにして、心からホッとしていた。
そして、すぐ隣に立つ山さんの方に顔を向けると、ちょっぴりニヤつきながら言った。
「どうやら、乙白さんの熱意ある言葉が、犯人の頑なな心を解きほぐしたみたいですね、山さん。もしかしたら、俺たちではこうも上手くは行かなかったかも知れません。これぞまさに怪我の功名。いや、おっぱいの功名と言うやつでしょうか」
けれど、山さんは俺のそんな浮ついた言葉には反応せず、視線を前に向けたまま、静かな口調でポツリとつぶやいた。
「やはり、そうか・・・。あいつは、俺と同じだな。俺と同じタイプの人間だ」
その言葉は、乙白さんの事を指しているのだろうか。
俺が視線を元に戻すと、乙白さんは相変わらず机を挟んで犯人と向かい合って座り、熱心に調書を取っている。
隣を見ると、山さんもやはり、乙白さんのそんな姿を、怜悧な視線でじっと凝視している。
そして、彼の隣に立つ俺は、詐欺師の男と真剣に対峙して、取り調べを続ける乙白さんの様子を、まるで保護者みたいな心情でハラハラしながら見守りつつも、そのベテラン刑事の奇妙な発言が何だか少し気になり、首を斜めに捻った。
[続く]
最初に任されたのは、ある詐欺事件の犯人の男に対する、取り調べの仕事だった。
取り調べ室に置かれた机に、犯人の男と差し向かいとなって座った乙白さんは、最初は丁寧な口調で聴取を始めた。
彼女が座る机の側には、俺と山さんも陣取っており、背後から彼女の仕事振りを見守っていた。
乙白さんは、机を挟んで自分と対峙する、目の前に座る詐欺犯の男を、その澄んだ瞳で見やると、おもむろに彼に話しかけた。
「Aさん、あなたは、お年寄りに対する、オレオレ詐欺の容疑で逮捕されました。あなたは、ここ三か月の間に一人暮らしのお年寄りを狙って、何度も詐欺目的の電話をかけましたね。そして親族の名をかたって、多額のお金を、自分の銀行口座に振り込ませた。間違いありませんか」
一方、詐欺犯の男はといえば、ふてぶてしい表情で机の反対側に座っており、パイプ椅子に載せた腰から伸びる脚を、だらしなく床に這わせていた。
どうやら彼には、机を挟んで向かい側に座る乙白さんの話を、まともに聞く気は無い様だった。
乙白さんは、その男の態度にめげる事無く、彼に積極的に話しかける。
「ちゃんと、こちらを向いて下さい。あなたは、自分の罪ときちんと向き合い、反省すべきです」
すると、乙白さんと机を挟んで向かい合って椅子に座る、その詐欺犯の男は、面倒くさそうに彼女の方をチラ見した。
するとー。
男の表情は一変し、今度は食いつく様な表情で、乙白さんの方を凝視した。
そう、彼女の巨大な胸をー。
男は、机越しに下卑た笑顔を浮かべながら、乙白さんに向けて、初めて声を放った。
「ぐへへへ、姉ちゃん。すげえ胸してるな。こんなの見た事無いぜ」
その言葉を聞いた、乙白さんの顔が朱色に染まる。
乙白さんの初々しい反応に気を良くしたか、男は更に好色そうな視線を彼女に向けた。
乙白さんの顔が、更に紅潮する。
「本当にたまんないぜ。おい、もっと良く見せろよ。そうすりゃ、取り調べにも、ちょっとは協力してやるぜ」
調子に乗って、下卑た発言を乙白さんに対して繰り返す、詐欺犯の男。
「ーっ!!!」
その瞬間だった。
乙白さんの怒りが、ついに爆発した。
ダンッ!!!!!
乙白さんは、男と自分がそれを挟んで座る机の上に、まるでハンマーの様に己が拳を叩きつけた。
そして、机の向こう側に座る男に対して、涙ながらに叫んだのだった。
「何してるのっ!?あなたはっ!!お母さんは、あなたをっ!そんな子に育てた覚えはありませんっ!!!」
机を挟んで乙白さんと向かい合って座る詐欺師の男は、乙白さんの物凄い剣幕に驚き、思わず彼女の顔を真正面から見つめる。
そして、呆然とした声で言った。
「お、お母さん・・・」
乙白さんは、椅子から腰を浮かせながら、机の向こう側にいる男に対して、涙交じりの声で次々と怒声を浴びせる。
「あなたはっ!どうしてそんなに堕落してしまったの!?お年寄りを騙して、なけなしのお金をくすねるなんてっ!お母さんは悲しい!!キラキラした夢を持っていた、あなたは、一体どこに行ってしまったの!?」
自分に対して真剣に怒る、その態度と表情が、本当に母の面影と重なって見えたのであろうか。
乙白さんと机を挟んで向かい合う男は、先ほどとは打って変わって、神妙な様子で視線を下に落とす。
「でも、まともに働いても、大した金は手に入らないしさ。こんな社会で成功するには、少しは悪い事だってしないと・・・。所詮は世の中、うまい事やった者の勝ちなんだし」
「馬鹿ーっ!!!」
ダンッダッダダンッ!!!!!
甘え切った男の言葉に腹が立ったのか、乙白さんは再び机をその拳で叩いた。
「あなたから、そんなを言葉を聞きたくない!!いいっ、お母さんはね、あなたが真面目に働いて、幸せになってくれればそれでいいの!!悪い事をしてまで、お金持ちになって欲しいなんて、これっぽっちも思ってない!何故それが、解らないのっ!?」
すると、詐欺犯の男は、うなだれた姿勢のまま、パイプ椅子の上に座りながら、顔を俯かせると、なんと膝の上にポロポロと涙をこぼし始めた。
「ううーっ、お、俺はーっ。何て情けない人間に、なってしまったんだ。こんな筈じゃなかったのに。これじゃ、本当にお袋に合わせる顔がないー」
その男と机を挟んだ向かい側にいる乙白さんは、浮かせた腰を再びパイプ椅子の上に下ろすと、フゥッと息をついて今度は穏やかな声で彼に話しかけた。
「さぁ、それじゃ知ってる事や、今まであった事を順番に話しなさい。一つ残らず話すのよ。大丈夫、ちゃんと最後まで聞いてあげるからー」
「はい、わかりました・・・」
先ほどとは打って変わって、神妙な素直に罪状を話し始める詐欺師の男。
乙白さんは、机の向かい側に座るその男の話を、一生懸命に聞いており、手元のメモ用紙に内容を熱心に書き取っている。
一方、俺は隣に立っている山さんと共に、そんな風に同じ机を挟んで座る両者の様子を、少し離れた場所から見守っていた。
男は、すっかり改心した様子で、机の反対側に座る乙白さんに向かって、堰を切ったみたいに喋りかけており、乙白さんは、そんな男の言葉を熱心に聞き取り、記録に残している。
俺は、同じ机を挟んで座るそんな両者の様子を、少し離れた場所から、隣にいる山さんと共に、注意深く見つめていたが、ようやく取り調べが順調に進み始めたのを目の当たりにして、心からホッとしていた。
そして、すぐ隣に立つ山さんの方に顔を向けると、ちょっぴりニヤつきながら言った。
「どうやら、乙白さんの熱意ある言葉が、犯人の頑なな心を解きほぐしたみたいですね、山さん。もしかしたら、俺たちではこうも上手くは行かなかったかも知れません。これぞまさに怪我の功名。いや、おっぱいの功名と言うやつでしょうか」
けれど、山さんは俺のそんな浮ついた言葉には反応せず、視線を前に向けたまま、静かな口調でポツリとつぶやいた。
「やはり、そうか・・・。あいつは、俺と同じだな。俺と同じタイプの人間だ」
その言葉は、乙白さんの事を指しているのだろうか。
俺が視線を元に戻すと、乙白さんは相変わらず机を挟んで犯人と向かい合って座り、熱心に調書を取っている。
隣を見ると、山さんもやはり、乙白さんのそんな姿を、怜悧な視線でじっと凝視している。
そして、彼の隣に立つ俺は、詐欺師の男と真剣に対峙して、取り調べを続ける乙白さんの様子を、まるで保護者みたいな心情でハラハラしながら見守りつつも、そのベテラン刑事の奇妙な発言が何だか少し気になり、首を斜めに捻った。
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