62 / 67
宗教国家オセの悲劇
不死者転生55 エリオットの悲運
しおりを挟む
多くの隣人が異端の咎で消えていった。
王都では静寂の中で助かった人々が目立たぬよう生活している。明日は我が身、その言葉がこれ程に実感を持つ事があったろうか?
ノエル教を国教とする聖王国内で教義自体に異論を唱える者はいない。だが、この数ヶ月の変化は、、それも恐怖を助長する変化は違和感を伴わないはずがなかった。誰かが声をあげるべきなのだ。
良くも悪くも人は環境の生き物だと言われている。人々は災厄が自らに降りかからない事を願って息を潜め過ごす。過度なストレスは逆に環境の中に適応する助けになっているが、人々の心に徐々に染み渡る怖れは濁流となって信頼を流し去ってしまった。
これが、人類の生存を志向したノエル教の在り方なのだろうか?
帝国の調査員であるエリオットはノエル教の変化の裏に何があるのかを探るべくノエル教の総本山があるオセに潜入している。ノエル教は基本的に開放的なことで知られており、一般人でも本堂内に立ち入ることが許されている。もちろん、制限区域はあり、封印されているエリアへ入るのは容易ではない。なぜなら、聖王国の内乱で初めて登場した聖騎士隊により厳重に守られている。
聖騎士隊は煌びやかなその上辺とは逆に、何か異質さを漂わしている。エリオットは平民であり、通常は国家機関に所属など出来ない身分だ。彼が研究員として働くきっかけは帝国でも名高い魔人及び瘴気の研究者フィル上級研究員に見出されての事だ。
瘴気に過敏な体質であった彼は、瘴気由来の現象を調査に来ていたフィルを案内した際に瘴気の痕跡を敏感に感じ取り目当ての場所まで迷う事なく誘導してみせた。その事がきっかけとなり、彼の調査に同行する回数が増え、なし崩し的に研究員として雇われ今に至る。
フィル上級研究員は、一連の異端騒動に違和感を感じ魔人若しくは、、魔神の暗躍まで視野に調査に乗り出した。なぜなら、彼の研究成果を否定するような瘴気対策をノエル教が指示し拡めているからだ。帝国内に侵入していた宣教師や異端審問官を捕縛し尋問。彼らの行為が異端とは無関係に瘴気を撒き散らしかねない事実を暴いて見せた。帝国内ではこの事実を持ってノエル教を禁止、異端審問官や宣教師などの入国を厳しく制限した最初の国となっている。
ノエル教は瘴気に対抗したノエルという研究者を聖人と祭り上げ、瘴気対策以外に様々な戒律を定めた人が人を崇める宗教だ。戒律には瘴気を発生させない知恵が散りばめられているが、帝国人からすれば実用的な知識体系を学問として学ぶべきもので、崇拝するものではない。この根底に流れる意識がノエル教の侵食を阻んだと言っていいだろう。ただ、教会が秘匿する神の瞳の生産方法が知りたくて容認しているにすぎない。
エリオットはフィル上級研究員に指示され調査の為にオセに入ったが、近づく程に瘴気が濃くなり、教会に至っては吐き気がる程に瘴気で満たされている。常人にはわからない程度の濃さだが、、彼にとっては明確なものだ。これは、自然発生したものではない。そして、この出所は聖騎士隊が守る聖域から流れてきている。
エリオットは意を決して聖騎士の元へ歩を進める。
「聖騎士様。我々の聖地を守る聖騎士様に感謝を伝えたく参りました。」
彼はただの研究員で諜報ではない。ノエル教徒が普通にする聖騎士への労いでさえ、心臓が飛び出しそうな程の緊張が伴う。
聖騎士は一瞥することもなく微動だにしない。それはまるで置物のように、、自然な揺れさえない。
手を伸ばせば触れられる程近づいだ事で彼はある事実に気付く。聖騎士、、そのものから瘴気が発生しているのではないか?つまり、彼らは、、、人ではない。
その考えがよぎった瞬間から、より一層激しく鼓動がなるのがわかる。これ以上この場にいたらパニックになりそうだ。
努めて平静を装い深くお辞儀をした後、彼は一歩後退りその場をさろうとしたその時、
「どうかされましたか?」
心地よい女性の澄んだ声が彼を呼び止める。振り向いた先には、薄らと青い銀髪に陶器のように白い肌の女性が少し首を傾げこちらを見ていた。その赤い瞳と目があった瞬間彼は悟った。魔人!!
その美しい魔人は朗らかに微笑む。
死ぬ、、いや、殺される!エリオットは今まで感じたことのない恐怖で腰が抜けその場に力なく膝をつく。
「あら?残念ながら今はあなたを虜にする空きがないのよ。」
そう言いながら魔人はエリオットの頬を撫でる。伝わってくるのは人の温もりではない。腐乱した死体に撫でられたような、、生理的に受け付けないそのおぞましい感覚に触れ彼の意識は暗転した。
「酷いわね、、。」
その魔人は傷付いたとでも言うようにそう口にしてが、その表情は無邪気な幼子のように笑っていた。
王都では静寂の中で助かった人々が目立たぬよう生活している。明日は我が身、その言葉がこれ程に実感を持つ事があったろうか?
ノエル教を国教とする聖王国内で教義自体に異論を唱える者はいない。だが、この数ヶ月の変化は、、それも恐怖を助長する変化は違和感を伴わないはずがなかった。誰かが声をあげるべきなのだ。
良くも悪くも人は環境の生き物だと言われている。人々は災厄が自らに降りかからない事を願って息を潜め過ごす。過度なストレスは逆に環境の中に適応する助けになっているが、人々の心に徐々に染み渡る怖れは濁流となって信頼を流し去ってしまった。
これが、人類の生存を志向したノエル教の在り方なのだろうか?
帝国の調査員であるエリオットはノエル教の変化の裏に何があるのかを探るべくノエル教の総本山があるオセに潜入している。ノエル教は基本的に開放的なことで知られており、一般人でも本堂内に立ち入ることが許されている。もちろん、制限区域はあり、封印されているエリアへ入るのは容易ではない。なぜなら、聖王国の内乱で初めて登場した聖騎士隊により厳重に守られている。
聖騎士隊は煌びやかなその上辺とは逆に、何か異質さを漂わしている。エリオットは平民であり、通常は国家機関に所属など出来ない身分だ。彼が研究員として働くきっかけは帝国でも名高い魔人及び瘴気の研究者フィル上級研究員に見出されての事だ。
瘴気に過敏な体質であった彼は、瘴気由来の現象を調査に来ていたフィルを案内した際に瘴気の痕跡を敏感に感じ取り目当ての場所まで迷う事なく誘導してみせた。その事がきっかけとなり、彼の調査に同行する回数が増え、なし崩し的に研究員として雇われ今に至る。
フィル上級研究員は、一連の異端騒動に違和感を感じ魔人若しくは、、魔神の暗躍まで視野に調査に乗り出した。なぜなら、彼の研究成果を否定するような瘴気対策をノエル教が指示し拡めているからだ。帝国内に侵入していた宣教師や異端審問官を捕縛し尋問。彼らの行為が異端とは無関係に瘴気を撒き散らしかねない事実を暴いて見せた。帝国内ではこの事実を持ってノエル教を禁止、異端審問官や宣教師などの入国を厳しく制限した最初の国となっている。
ノエル教は瘴気に対抗したノエルという研究者を聖人と祭り上げ、瘴気対策以外に様々な戒律を定めた人が人を崇める宗教だ。戒律には瘴気を発生させない知恵が散りばめられているが、帝国人からすれば実用的な知識体系を学問として学ぶべきもので、崇拝するものではない。この根底に流れる意識がノエル教の侵食を阻んだと言っていいだろう。ただ、教会が秘匿する神の瞳の生産方法が知りたくて容認しているにすぎない。
エリオットはフィル上級研究員に指示され調査の為にオセに入ったが、近づく程に瘴気が濃くなり、教会に至っては吐き気がる程に瘴気で満たされている。常人にはわからない程度の濃さだが、、彼にとっては明確なものだ。これは、自然発生したものではない。そして、この出所は聖騎士隊が守る聖域から流れてきている。
エリオットは意を決して聖騎士の元へ歩を進める。
「聖騎士様。我々の聖地を守る聖騎士様に感謝を伝えたく参りました。」
彼はただの研究員で諜報ではない。ノエル教徒が普通にする聖騎士への労いでさえ、心臓が飛び出しそうな程の緊張が伴う。
聖騎士は一瞥することもなく微動だにしない。それはまるで置物のように、、自然な揺れさえない。
手を伸ばせば触れられる程近づいだ事で彼はある事実に気付く。聖騎士、、そのものから瘴気が発生しているのではないか?つまり、彼らは、、、人ではない。
その考えがよぎった瞬間から、より一層激しく鼓動がなるのがわかる。これ以上この場にいたらパニックになりそうだ。
努めて平静を装い深くお辞儀をした後、彼は一歩後退りその場をさろうとしたその時、
「どうかされましたか?」
心地よい女性の澄んだ声が彼を呼び止める。振り向いた先には、薄らと青い銀髪に陶器のように白い肌の女性が少し首を傾げこちらを見ていた。その赤い瞳と目があった瞬間彼は悟った。魔人!!
その美しい魔人は朗らかに微笑む。
死ぬ、、いや、殺される!エリオットは今まで感じたことのない恐怖で腰が抜けその場に力なく膝をつく。
「あら?残念ながら今はあなたを虜にする空きがないのよ。」
そう言いながら魔人はエリオットの頬を撫でる。伝わってくるのは人の温もりではない。腐乱した死体に撫でられたような、、生理的に受け付けないそのおぞましい感覚に触れ彼の意識は暗転した。
「酷いわね、、。」
その魔人は傷付いたとでも言うようにそう口にしてが、その表情は無邪気な幼子のように笑っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる