不死者転生 -救いのない物語- 転生した不死者は生きる為に侵略し美しい眷属を従える

ボロン

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宗教国家オセの悲劇

不死者転生55 エリオットの悲運

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多くの隣人が異端の咎で消えていった。
王都では静寂の中で助かった人々が目立たぬよう生活している。明日は我が身、その言葉がこれ程に実感を持つ事があったろうか?

ノエル教を国教とする聖王国内で教義自体に異論を唱える者はいない。だが、この数ヶ月の変化は、、それも恐怖を助長する変化は違和感を伴わないはずがなかった。誰かが声をあげるべきなのだ。

良くも悪くも人は環境の生き物だと言われている。人々は災厄が自らに降りかからない事を願って息を潜め過ごす。過度なストレスは逆に環境の中に適応する助けになっているが、人々の心に徐々に染み渡る怖れは濁流となって信頼を流し去ってしまった。

これが、人類の生存を志向したノエル教の在り方なのだろうか?

帝国の調査員であるエリオットはノエル教の変化の裏に何があるのかを探るべくノエル教の総本山があるオセに潜入している。ノエル教は基本的に開放的なことで知られており、一般人でも本堂内に立ち入ることが許されている。もちろん、制限区域はあり、封印されているエリアへ入るのは容易ではない。なぜなら、聖王国の内乱で初めて登場した聖騎士隊により厳重に守られている。

聖騎士隊は煌びやかなその上辺とは逆に、何か異質さを漂わしている。エリオットは平民であり、通常は国家機関に所属など出来ない身分だ。彼が研究員として働くきっかけは帝国でも名高い魔人及び瘴気の研究者フィル上級研究員に見出されての事だ。

 瘴気に過敏な体質であった彼は、瘴気由来の現象を調査に来ていたフィルを案内した際に瘴気の痕跡を敏感に感じ取り目当ての場所まで迷う事なく誘導してみせた。その事がきっかけとなり、彼の調査に同行する回数が増え、なし崩し的に研究員として雇われ今に至る。

 フィル上級研究員は、一連の異端騒動に違和感を感じ魔人若しくは、、魔神の暗躍まで視野に調査に乗り出した。なぜなら、彼の研究成果を否定するような瘴気対策をノエル教が指示し拡めているからだ。帝国内に侵入していた宣教師や異端審問官を捕縛し尋問。彼らの行為が異端とは無関係に瘴気を撒き散らしかねない事実を暴いて見せた。帝国内ではこの事実を持ってノエル教を禁止、異端審問官や宣教師などの入国を厳しく制限した最初の国となっている。

 ノエル教は瘴気に対抗したノエルという研究者を聖人と祭り上げ、瘴気対策以外に様々な戒律を定めた人が人を崇める宗教だ。戒律には瘴気を発生させない知恵が散りばめられているが、帝国人からすれば実用的な知識体系を学問として学ぶべきもので、崇拝するものではない。この根底に流れる意識がノエル教の侵食を阻んだと言っていいだろう。ただ、教会が秘匿するの生産方法が知りたくて容認しているにすぎない。

エリオットはフィル上級研究員に指示され調査の為にオセに入ったが、近づく程に瘴気が濃くなり、教会に至っては吐き気がる程に瘴気で満たされている。常人にはわからない程度の濃さだが、、彼にとっては明確なものだ。これは、自然発生したものではない。そして、この出所は聖騎士隊が守る聖域から流れてきている。

エリオットは意を決して聖騎士の元へ歩を進める。

「聖騎士様。我々の聖地を守る聖騎士様に感謝を伝えたく参りました。」

彼はただの研究員で諜報ではない。ノエル教徒が普通にする聖騎士への労いでさえ、心臓が飛び出しそうな程の緊張が伴う。

聖騎士は一瞥することもなく微動だにしない。それはまるで置物のように、、自然な揺れさえない。

手を伸ばせば触れられる程近づいだ事で彼はある事実に気付く。聖騎士、、そのものから瘴気が発生しているのではないか?つまり、彼らは、、、人ではない。

その考えがよぎった瞬間から、より一層激しく鼓動がなるのがわかる。これ以上この場にいたらパニックになりそうだ。

努めて平静を装い深くお辞儀をした後、彼は一歩後退りその場をさろうとしたその時、

「どうかされましたか?」

心地よい女性の澄んだ声が彼を呼び止める。振り向いた先には、薄らと青い銀髪に陶器のように白い肌の女性が少し首を傾げこちらを見ていた。その赤い瞳と目があった瞬間彼は悟った。!!

その美しい魔人は朗らかに微笑む。

死ぬ、、いや、殺される!エリオットは今まで感じたことのない恐怖で腰が抜けその場に力なく膝をつく。

「あら?残念ながら今はあなたを虜にするがないのよ。」

そう言いながら魔人はエリオットの頬を撫でる。伝わってくるのは人の温もりではない。腐乱した死体に撫でられたような、、生理的に受け付けないそのおぞましい感覚に触れ彼の意識は暗転した。

「酷いわね、、。」

その魔人は傷付いたとでも言うようにそう口にしてが、その表情は無邪気な幼子のように笑っていた。
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