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2章・性逆復讐篇

8話・1人目のターゲット(Act3)

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黒夜が何かを思いついたようだが、ゼクロはそれの意味が分からずにいた。

「親父嫌いを理由する? どういう意味だそりゃ?」
「言葉通りだよ。あいつは親父が憎くて堪らないんだ」
「じゃあ、親父に娘の嫌がらせを頼むっていうのか?」
「娘が可愛くて堪らない親父がそんな提案乗るか? アンタにしては頭が鈍いな」

ゼクロは内心ではイラっときた。
だが、確かに黒夜の言うことも一理ある。あくまで商品としての見方かもしれないが父親は娘を溺愛している。
仮に娘を悪者に仕立てたとしても弁護士としてどんな手を使っても守ろうとする。それでは復讐は成立しない。

「おうクロボウヤよ。おっさんはギブアップだ。お前の答えを教えてくれ」
「素直じゃねえか。まずは親父を今の地位から失墜させる。それに娘を利用する」
「おいおい、お前の復讐はいじめの取り巻きの一人の娘の方だろ。なんで親父なんかを?」
「最終的には陽菜も地獄に落とすさ。だが、その前にあの親父が障壁になる。それに娘はプライドが高いから親父に助けは求めない。そこを逆に利用する」
「話が見えないな。それじゃあ娘の喜ぶ為にお前が動くだけ……あっ!」
「そう。あの女を喜ばせて地獄に突き落とす。そこでおっさんに何個か頼みたいことがある」
「ああん? お前、さっきの魔法の使い方教えてくださいと言うんじゃねえだろうな。言っておくが、あれは闇の精霊である俺だから使えるんだ。お前ごときが扱えるものではない」
「そんなこと言うのは最初から分かってるよ」
「じゃあ、なんだよ」

黒夜はほくそ笑むとゼクロに耳打ちをした。

「ほお、お前にしては面白い復讐の提案じゃねえか。仕方ねえな、今回は初ミッションってことで手伝ってやるよ」
「さすがぼったくり精霊」
「誰がぼったくりだ」


■倉田陽菜視点

結局、昨日は遼の家に泊まった。
次の日は朝、陽菜は家に帰った。

「あら、思ったより早かったんじゃない?」

家には陽菜の母親がいた。父親は既に仕事に出ていないようだった。

「別に。慌てて飛び出して制服も何も持って行かなかったから、着替えたら遅れても行くし」
「何、その言い方? まるで私が悪いみたいじゃない」

パン!

陽菜の頬を母親は平手打ちする。
陽菜はその場に倒れこむ。

「アンタ自分の立場分かってるの。あんたは私とお父さんの七光りで有名私学に入れてるのよ。それなのに学年半分以下の学力ってどういうつもり、何のために有名な予備校に行かせていると思ってるのよ」
「じゃあ、退学にでも何でもすれば? 私はアンタやあんなクズ親父の力を借りてまで生きたいとは思わない」
「口答えする気、東大出身のお父さんと明大出身の私の子とは思えないは、恥だからあんまり出歩かないでくれる。JKモデルだってちやほやされているのもアンタの力じゃない。私の昔のコネでやってるだけだから」
「それお父さんを誘惑して今の地位を得た訳だ。やっぱり、二人はお似合いだわ……」

バタン!

そういうと陽菜怒ってリビングを飛び出していった。
母親はため息をつく。

そんな光景をベランダの窓越しに話を聞く人影がある。

「これはいい情報を入手した」

男はそう言い残して、その場を立ち去った。
そしてオシャレなカフェの屋外テラスにやってきた。
そこには黒夜とゼクロの姿があった。


■カフェ

「お~。こっちだよ。善ちゃん」
「小宮山さんご無沙汰しております」
「どうなんか収穫あった?」
「ええ、サラブレッドの裏事情が取れました。本当なら俺の手柄にしたいくらいっすよ」
「すみません。スキャンダルを横取りするような感じになってしまって」

黒夜が誤っている善と呼ばれる男はとある雑誌編集部のスキャンダル部門を担当している。
熊谷善(くまがいぜん)という男だった。
ゼクロは小宮山貴一という名前で接しており、スキャンダルのネタ提供をしてもらっていた。

「また、店に遊びに来てよ」
「ええ、またブラックハートで。じゃあ、俺は仕事に戻りますのでこれレコーダーと写真です」

物を渡して彼は去っていった。
黒夜が早速、音声データを確認する。

「なるほどね。あの女がグレる理由はこれか」
「父親には性的虐待、母親からは教育の強要と暴力による虐待か」
「子供は親を見て育つとは言うが、どちらもロクでもないな」
「でも、お前の計画には驚いたぜ。想像してた通りにことが進んでやがる。それに俺が人脈が広いっていうのもどうして気付いた?」
「おっさん、うちの店に頻繁に出入りして明さんみたいな知り合いは俺と同じ境遇で理解できるけど、萌花さんみた
いなキャストも少なからずはアンタのことを知っている。ということは日常の人間としても接点がある。だが、この間見たいな能力は変態のアンタが女の子たちに使わない訳がない。そしておっさんは比較的に日中よりも夜の方が出現率は高い。だから、朝は何らかの理由で苦手にしている」
「ほう。それが人脈があるにどう繋がる」

黒夜はすっとぼける様に言う。ゼクロにまるで推理を疲労するように話す。

「アンタは闇の案内人や闇の精霊って名前を使う。だから夜の方が動き的に得意なんだろ? ただ、吸血鬼や幽霊とは違い消失するのであれば朝の世界のこれほど多くの情報は手に入らない。つまり、存在はあるからあの魔法は夜にしか使えなくて朝は別の手段を取ってるって仮説を立てただけさ」
「証拠不十分だが、いい線を言っている。その通り、この前の絡繰りは夜にしかできない。俺の住む界隈にも掟というものがあってな、人間の世界への介入するのも必要以上な行為は禁止されている。お前の言う通り、俺のこの精霊としての力は夜にしか使えないことが多い。まあ、すべてを疲労したわけではないがな」

2人は珍しく談笑しながら、お茶を楽しんだ。

「おっと、うっかり渡すの忘れてたぜ。ほらよ。頼まれてたもの一式用意してやったぜ。」
「おお。でも、いいのか?」
「先方が雇いたいと言ったんだ。それに設定は色々融通が利くのがゼクロ様の活用法よ」
「じゃあ、ありがたく受け取るぜ」

黒夜はIDパスのようなものを受け取った。
そして、とある建物に入って行った。
その場所は「北礼予備校」と呼ばれる難関大学受験を目指す高校生の為の予備校だ。
そこには倉田陽菜の存在もあった。

■陽菜の視点

(はあ~。家にも帰りたくないけど、勉強怠い。あのクソババア、事務所に仕事を減らせなんてクレームを出しやがって、遼も他の男も頭が足りないかひょろいかでいい男といっそのこと結婚したい」

ガラガラガラ

教室に予備校の講師が入る。
今日は学長も一緒だ。

「え~皆さんの担当:小林先生ですが、急遽系列の予備校に異動となりました。代わりに新しい講師の先生を紹介します」
「高鳥黒夜です。臨時ではありますが暫くの間、みなさんの数学と英語の担当講師をさせていただくことになりましたのでよろしくお願いいたします」
「高鳥先生は今年19歳になられるのですが、アメリカの有名高校主席で卒業されております。本来であれば大学進学も決まっていたとのことですが、家庭のご事情を考慮したために日本に帰国されておりました。指導力については私も含めてお墨付きですのでみなさんしっかり授業を聞く様によろしくお願い致します」
「皆さんとは年も近いので気軽にどんどん聞いてください。よろしくお願いいたします」

周囲の女子高生たちが黒夜をキラキラした目で見る。
(イケメン過ぎない)
(しかも、浪人生だけど東大目指して合格率高いらしいよ)
(家庭の事情も両親が離婚されてお母さんと妹さんたちの面倒を見る為みたいよ)
(ええ~何それ心もイケメン。優しすぎる)

そんなハイスペック講師の評判の黒夜に陽菜も見とれていた。
講義の空き時間、ボーっと考えながら歩いていると誰かとぶつかった。

「いった~い」
「大丈夫かい?」

目の前にいたのは黒夜だった。
陽菜は息を飲み、心臓をバクバクさせながら差し伸べた手に触れた。
そして黒夜は彼女をひっぱり起こした。

「けがはない?」
「は、はい。すいません考え事してぼーっとしてました」
「こちらこそ。もっと気をつけていればよけれたのに気を遣えなくてごめんね」
「いえ、あの先生」
「後で相談に乗ってもらえますか?」

黒夜は笑顔でうなづく。
陽菜は軽く会釈をしてその場を立ち去った。
後姿を見て、彼の眼は氷の眼差しに変わった。
復讐の始まりだ。


(予告)

次回、復讐の歯車が動き出す。黒夜の思い描く倉田家の破滅とは?
いよいよ1人目のターゲット篇の後半戦に突入

(作者より)

だらだら感がありすいません。
仕事後の執筆なので文字数と切れの良いところで切っております。
長編で連載を心待ちにしていただける方に見ていただけると幸いです。
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