My² Gene❇︎マイジーン ~URAZMARY~

泥色の卵

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第1章 医療の星 [医星]

第8話 強奪の真実 

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【登場人物】


[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
 Gene of Thunderbolt
 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
 遺伝子能力養成学校中等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。


▼ヴィスタ診療所

[ヴィスタ]
 医星で医者をしている若い女性。

[バリス・スピア]
 医星で医者をしている青年。
 目つきがとても悪い。


 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡




「バリス、なんで来たの。」
不穏な空気をまとうヴィスタ。
陽が落ちて薄暗くなった廃ビルが余計にそう思わせる。
いつもの柔らかい雰囲気など皆無だった。


「ヴィスタ……お前………?」

「ねぇ、見てよバリス。私に遺伝子能力が芽生えたの。」
彼女の掌からはいばらが生成され、恍惚こうこつの表情でその荊を眺めている。


「バリス……私のやっていることは間違ってる?」

「利権や私利私欲にまみれた人たちから医薬品を奪って貧困街区の人に無償で配る。」

「正義だと思わない?」
 伸びる荊を掌の中に収めると、拳を握りしめバリスを睨むように見据えた。

「正義………」


「私はずっと言っていたよね。力があれば戦うって。」
 ヴィスタの言う通り、彼女が“死”から目を背け始めたころから、頻繁に口にするようになった言葉だった。

「あれはあなたに向けた言葉だった。力を持つバリスに戦ってほしかった。」

「バリスは力があったのに……強かったのに、弱者のために動かなかった。」


「だから……やっと力を手に入れた私が……」
 ヴィスタはおもむろに自身の掌をバリスへと向ける。

「この医星を救う!!」

発せられた荊はまるで生物のようにうねりながらバリス達へと迫っていく。

「バリス!任せろ!」
バリスの前へと躍り出たプラズマが、荊に向け電撃を放ち相殺させた。


「甘い!」

荊の先端付近は電撃で焼き尽くしたものの、焼き尽くしたところから更に荊が伸び、プラズマ達に襲い掛かる。

「ぐあぁ!」
プラズマの右腕を荊がかすめる。


「ヴィスタ……お前、この力……」


「驚いたでしょ?遺伝子能力を発現させる薬品と、それを強化する薬品を服用したの。」



「そして……私は進化した!!」


「お前……まさか……!!」




「無能力だったのに、能力が覚醒するなんてあり得ねぇ……!ヴィスタ……その薬はやべぇぞ……!」

ヴィスタが両手を前へと掲げると、一本の荊が伸び、更にその荊から何本もの荊が伸びていく。

波のようになった荊がプラズマ達を襲う。

「プラズマ!俺達のところだけ燃やすぞ!!炎唱えんしょう!!」

「おう!!」

プラズマは電撃で、バリスは炎唱えんしょうで自分達に襲い掛かる荊の部分を燃やして、なんとかヴィスタの攻撃をやり過ごした。

プラズマ達の両脇を滑走しながら荊が通り過ぎていく。

「バリス!どうすんだよ!」

「あの短期間で能力の開花は脅威だが、その力自体はそこまでの脅威じゃない。」

「プラズマ、ヴィスタが出した荊をかいくぐってアイツのところまで行けるか?」

「任せろ!」

「よし。プラズマ、耳を貸せ。」
バリスが耳打ちを終えると、プラズマは体に電撃を発生させた。

「俺は毒の壁やら煉術れんじゅつで防ぎながら援護する。」


「いくぞっ!」
バリスの声と共にプラズマが電撃を纏ってヴィスタへと突撃する。

「近づかせない!」
目にも止まらぬプラズマの突進に向けヴィスタから荊が伸びた。

高速で動く一縷いちるの電撃は、荊の直前で直角に向きを変えて避けながらヴィスタへと迫っていく。

「速いっ……!」
プラズマの高速移動は目で追うのでも精一杯だった。

「プラズマ君の速さで翻弄して私の注意をそっちに向けている間に………」
ヴィスタは迫りくるプラズマを荊で迎撃しながら、その後ろに控えるバリスに目を向けていた。

よもぎ色と紫色が交じり合った禍々しい球状の液体。
バリスの頭上でどんどんとそのかさを増していく。

「短期間で生成してるってことは致命的な毒ではないでしょう。」

「私に無害な……おそらく痺れ作用を持った毒をぶつけようとしているんでしょうけど……」

「ただ麻痺は厄介ね………なら……!」

ヴィスタは自身の身体から大量の荊を出すと、その荊が彼女を囲いトーチカを作り出した。

すると、その球状の防御壁から一本の荊が勢いよく飛び出した。
その荊はプラズマの横を素通りすると、バリスの頭上にある毒の水泡へと向かっていく。

「バリスの毒に!!」



――プラズマ、耳を貸せ――

――高速でヴィスタを翻弄してくれ――

――その間に俺が毒を生成する――



ヴィスタはバリスの作戦を読み、巨大な毒球を荊で何重にも包み込んだ。
荊は毒を吸収し、毒球の浮力を奪いバリスの頭上に落下し始める。


「危ねぇ!」

プラズマが間一髪のところでバリスに突撃して、球状の荊の直撃を免れる。

「やっぱ作戦読んできてるな……!」
バリスは口から流れる血を手で拭った。

「どうする……?」


「プラズマ、今から電撃出すな。」

電撃の高速移動ですら追いつかれるギリギリなのに、遺伝子能力を使わずに荊を躱すなど、どう考えても無謀だった。
「はぁ!?お前それでどうやって荊をかいくぐれって……」

「あれを見ろ。ここは薄暗いし、もう陽も落ちてる。“電撃を出すな”って意味わかるだろ。煉術れんじゅつも同じだ。」

「あれは……!」

「ヴィスタに気づかせず時間を稼いでくれ、頼んだ……!」


中々立ち上がらない2人に痺れを切らしたヴィスタが叫ぶ。
「何を内緒話しているの!?」

その瞬間、2人は立ち上がった。
「プラズマ!」

「任せろ!!」
プラズマは迫りくる荊に向かって駆け出す。

電撃を纏わずに荊を避けたプラズマを見てヴィスタは嘲笑した。
「手で止めようっていうの?大怪我じゃ済まないわよ?」
彼女の言う通り、放たれた荊は丸太のように太く、棘は千枚通しがついているようだった。
直撃すればひとたまりもないのは言うまでもない。

「俺だってそこまで頭すっからかんじゃないぜ!風唱ふうしょう!」

声高らかに発動させたプラズマの煉術れんじゅつは卒業試験のときから全く成長しておらず、やはり少し風が発生するだけで、彼女の荊を吹き飛ばすには程遠かった。

しかし、それは真正面から風唱を放ったときの話。

プラズマは荊を横に避けてから風唱を放っていたのだ。
横から風に押された荊は、ほんの数度だけ進行方向が傾いた。

「そんな少し動かしたくらいで………!?」

「ちょっとのズレでも、進めば進むほど大きくなるだろ?」

バリスへと向かって一直線にはしっていた荊は風にあおられ、バリスから大きく外れたところを過ぎ去った。

「やるじゃない……プラズマ君。」


「これならどう!?」

ヴィスタは胸の前で両手をクロスさせると、彼女の前に横一列で数十本の荊が並んだ。

「これなら風で一本横にずらしたって、絶対にどれかは当たる!」

彼女がクロスした両手を大きく振って広げると、並んだ荊が一斉に射出される。

「なら!!」
プラズマはバリスへと向かう荊の動線上に立った。

土唱どしょう!!」
土唱も他の煉術に漏れず、煉術が使える一般人から言わせれば、彼のはセンスの欠片もないものだ。
数十センチメートル地面が盛り上がる程度。

しかし、勢いのある荊に対して、その“数十センチ地面が盛り上がる程度”は有効だった。

「なにっ!?」

押し上げられた荊はバリスの頭上を飛び越え、緩やかな放物線を描いて遥か後方に轟音を立てて着地した。

「やるじゃねぇか……!」
嬉しい誤算。
まさか、いかにも頭の悪そうなプラズマが、ここまで切れるとは思っていなかったからだ。

「(いや、あいつは考えてやってねぇか。さっきの土唱どしょうのときは初動が速かった。)」

「一度だけじゃなく、2度も…………中々やるようね、プラズマ君。」


「よし、いいぞ!プラズマ!!退け!!」

バリスの掛け声とともに、プラズマが大きく後退した。
そしてプラズマの目線から、ヴィスタの頭上、そして遥か後方にに気が付く。

「なっ……!」
ヴィスタが後ろを振り向くと、彼女の遥か後ろを起点として、波のように毒が彼女を上から包み込もうとしていた。

「電撃を……光を発しなかったのはそういうこと……!!」

彼女は咄嗟とっさに荊で自身を囲み防壁を作るが、その防壁もろとも毒の波が呑み込んだ。
そして毒の波はバリスの操作によって、渦巻くようにヴィスタを覆う。

「これで………!」

毒の波が消えると毒にまみれた荊が徐々にほどけ、中心に倒れるヴィスタの身体に戻っていく。



「やっぱり麻痺………甘いのねバリス。」

ヴィスタは毒に身体を侵され、四肢が動かない程度の軽い麻痺状態になっていた。


「このままいけそうだな!」

勝利は目前に迫っているようだったが、バリスの表情は曇ったままだった。

「あぁ、このままならな……!」

「だが、ヴィスタのあの落ち着きようは………」

彼女が遺伝子能力と同調している可能性。
バリスはそれを危惧していた。
「頼むからこのままで終わってくれよ……!」

ヴィスタは大の字に倒れたまま、言葉を発する。

「バリスは言ってたよね?“AGISエイジスの修得が明暗を分ける”。」
かつてヴィスタから遺伝子能力について興味津々に尋ねられたとき、彼女に教えたことがあった。

――AGISエイジスとは遺伝子能力との同調――

世間的に強者と言われる名の知れた能力者でこのAGISエイジスを使えない者はほとんどいなかった。

しかしながら、軍人や傭兵の中で使用できる者はそう多くない。
そのため、戦闘とは無縁の一般人からすれば羨望の眼差しを向けられる能力の同調。

世間一般の認識として、AGISエイジスは決して易々と使えるものではなかった。


そして……



「“強者の条件”は………」

「ヴィスタ……お前まさか……!


AGISエイジス!!荊の領域ドーンズ・ドメイン!」

そうしたヴィスタの両掌から荊が螺旋構造を形作りながら彼女の腕に巻き付いていく。

AGISエイジスってあの遺伝子が同調とかなんとか………」
学校卒業前に学校長のイヴ・パラムが言っていた言葉がよみがえる。


ヴィスタが両手を横に広げると掌から荊が伸びると、空中に喰いこむようにその荊が消えていく。

「遺伝子能力が発現してすぐにあれだけ使えるってだけでもあり得ねぇのに、AGISエイジスまでだと!?」

「ヴィスタ!お前一体何をした!!?」


そして空間から現れた禍々しい色の荊が、ヴィスタの四肢に巻き付いた。
荊は麻痺する彼女の身体を傀儡のように動かしている。

いつもの穏やかな彼女ではなく、禍々しい荊を操る明確なだった。


「すぐにわかるわ……バリス・スピア!!」



To be continued.....




【EXTRA STORY】

~医星・研生会第5区画第24ビル~


「来たか。」

「言われたとおり眠らせてる。」

「いつまで足止めをしておけばいいの?」

「こちらが指示するまでだ。」

「もう長くはもたないわよ?バリスが明らかに不審がってる。信頼してる私相手っていうのと、彼のキャラクターに助けられて踏み込んだことは聞いてこないけど。」

「もう少し堪えろ。そうすれば追加の医薬品と血清をくれてやる。」

「もう医薬品や血清は要らない。」

「その代わり、私は力がほしい。」

「研生会には遺伝子能力を発現させる薬とそれを強化する薬があるんでしょ?」

「それを私にちょうだい。」

「………いいだろう。確実に足止めできるんだろうな?」

「自然に足止めできるのは私くらいでしょう?」

「それでお前は能力を手に入れて何をする?」

「……自分の力でなんとかするのよ……」

「なんと言った?」

「いや、なんでもない。」

「とにかく早く遺伝子能力の薬をちょうだい。話はそれからよ。」



To be continued to next EXTRA STROY.....?
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