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第2章 サムライの星 [戦星]
第9話 水王家の未来
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【登場人物】
▼何でも屋(IMIC)
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
[バリス・スピア]
元軍医で、毒の能力を持つ医者。
薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。
▼水王家
[水王 千里華]
深い青色のショートカットの少女。元名家の水王家の忍び。
戦星の荒野で襲われているところをプラズマ達に助けられた。
水王家軍団長のルルカは実の姉。
[水王 涙流華]
深い青色のポニーテールをした水王家軍団長を務める女サムライ。
非常に戦闘力が高く、冷静沈着。チリカの姉。
[水王 木勝]
水王家十代目当主で、ルルカ、チリカの父親。
▼その他
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
~水王家・墓地~
「正統後継者となってここの存在を知り、初めて足を踏み入れたときのことを思い出しますよ、父上。」
――九代目異端之墓・行不地――
「異端後継者でありながら、貴方は大元帥までに上り詰めた。」
「父上、私は貴方のように水王家を強くできるのだろうか……」
そう呟く侍はその左隣に立つ墓石に顔を向けた。
――九代目正統之墓・衛菜――
「衛菜様、【銀河】の称号を得た貴女なら……水王家を愛した貴女なら今の状況を簡単に覆すのでしょうね……」
そして2つ右に立つ墓石の前に移動すると、その侍は胡坐をかいてその場に座った。
「やはり私には荷が重かったのかもしれぬ。」
「双子は先に生まれた方が実は下の子、という説があるそうだ。実はお前が姉だったのかもしれぬな。」
「馬鹿妹はどこかに行くし、私でこの水王家を守れるだろうか。」
「いや、守らねばなるまいな。お前の……私の娘がいるのだから。」
「なぁ、咲……」
――十代目異端之墓・咲――
そこから墓石一つ分右に立つ墓石。
彼は悲愴に満ちた眼差しで、墓石に刻まれた名を見ている。
――十一代目正統之墓・厘華――
「厘華、お前の分まで涙流華と千里華が一生懸命、水王家の十一代目を背負おうとしてくれているよ。」
「涙流華がここを見たら、なんと言うだろうな。」
「受け入れてくれるだろうか。」
「いや、涙流華はそんな肩書などに興味はないか。」
「ここで私が倒れる訳にはいかん。十代目正統後継者として娘達に教えてやらねばならんことがある。」
「いつか私も正統後継者として歴代の水王家と並び、ここに入るのだ。」
「娘達にとって誇り高き父であれるよう、再度風を起こし、水王家は変わらねば。」
「それに……水王家の歴史で大きな功績を残すのはいつも異端後継者だからな。」
「きっと………」
~水王家・道場~
「姉上、すみませんでした……迷惑をかけて……」
稽古を終え、涙流華に打ちのめされた千里華が足を崩して座っていた。
「鍛錬が足らんのだ。それにその迷惑とは今処置をしていることか?それとも如月に捕まったことか?」
そう言いつける厳しい姉は、ペタッと床に座る妹の腕に冷却剤を貼り付けると、剝がれないように患部に押し付けた。
「イテテっ……」
「そんなことでは将来、軍団長を任せることはできんぞ。」
涙流華は立ち上がると千里に背を向ける。
「私が当主になったとき、お前には軍団長の座についてもらわねばならん。」
「軍団長……?私が……?」
「当たり前だろう。私達2人は水王家の十一代目だ。」
「でも私は異端後継者だし……」
正統後継者と異端後継者。
水王家では2人の子供を授かることが慣習とされ、先に生まれた者が水王家の“正統後継者”となり、後から生まれた者は“異端後継者”として兄姉の影に生きる存在だった。
異端後継者が周囲に認められることはおろか、責任ある役職に就くことなど極めて稀だった。
正統後継者が死亡した場合のみ、異端後継者が繰り上がって正統後継者となることもあったが、殆どの異端者が陽のあたらない存在として生きてきたことには変わりなかった。
「正統も異端も関係ない。それに父上もそんな慣習は良く思っていない。だからこそお前を忍び長にしようとしておられたのだ。」
――忍びはどうだ――
千里は父の言葉を思い出していた。
涙流華は木刀を木刀掛けに戻すと、千里を背に道場を後にしようとする。
「姉上、なぜ突然私に稽古を……?」
涙流華は歩みを止め、振り向くことなく答えた。
「おそらく……水王家の誰かがあの者達と共に旅に出る。」
「旅に……?」
「以前父上が奴らと共に行く条件を聞いていた。」
「流石に当主である父上が行くとは考えづらい。年齢差もある。」
「あの電撃の馬鹿が千里華を推していた。奴らとお前は同い年らしい。」
「プラズマが……?」
「千里華とはしばらく会えなくなるかもしれぬからな。最後に叩きのめしてやっただけだ。」
「姉上……」
涙流華は振り返って神前に礼をすると、静かに道場を後にした。
~水王家客間~
コンコンッ
「失礼します。お二方とも起きて下さい。食事の準備ができました。」
ザァッ
「グーーーーーーー、ガーーーーーーー」
「…………心を鬼にするのよ、八千代……!」
~大広間~
プラズマ達が大広間に入ると、色とりどりの御膳の前に強面の侍達が座していた。
しかし中央奥にいるはずの当主がいない。
「プラズマ、バリス、こっちこっち。」
千里華がひょいひょいと手招きして、彼女の隣に座るよう促した。
「あれ、お殿様は?」
プラズマの問いに答えたのは、千里華を挟んで上座に座っている涙流華だった。
「殿は如月家の残党の処遇について重鎮と検討中だ。」
「お前は?軍団長なんだろ?」
「軍団長は侍をまとめるだけの役割だ。うちの侍の処遇を決める立場にあっても、他家の処遇を決める立場はない。」
プラズマよりもさらに下座にいるバリスが顔をのぞかせた。
「キサラギ家の者たちはどうなる?」
「謀反を起こしたのだ。打ち首になるだろうな。」
千里華は姉の話の邪魔にならないように、あたふたしながら前に後ろに身体を動かしている。
「父上は分からんが、重鎮達は打ち首だと言うだろう。」
「流石の父上も、重鎮達を押さえて意見を通す権力はない。」
「謀反を起こしたのだから仕方のないことだ。我々にはどうすることもできん。」
「そうか………」
プラズマは如月鉄の最後の表情を思い出していた。
「もう話はいいだろう。前を向け。皆お前待ちだ。」
涙流華にそう言われ辺りを見回すと、侍達が“腹減った”と殺気に満ちた雰囲気を漂わせていた。
「強面の皆さん……お待たせしました……いただきますか……」
To be continued.....
【EXTRA STORY】
~水王家・地下備品貯蔵庫~
「ごめんね、プラズマ、バリス。手伝ってもらっちゃって。」
「いや、いいって!俺たち泊めてもらってる恩もあるしな!」
「そういう千里華様こそありがとうございます………この八千代、そのお心遣いに感激しております……!」
「八千代は本当に大袈裟なんだから!むしろいっつもは全部給仕係に任せてごめんね?」
「いえ、それが我々の仕事ですから。忍びである千里華様にお手伝いいただく方が申し訳ありません!!」
「……にしても、武器やら食糧以外にも、案外化粧品とかも多く輸入してんだな。」
「しかも新製品って謳い文句の物ばかり。」
「なんか武家っていうと、そういう肌の手入れとか気にしてないと思ってたぜ。」
「数年前までは“そんな浮ついた物!”って重鎮達から禁止されてたんだけど、あるきっかけがあって輸入が許可されることになったの。」
「あるきっかけ?」
「ある人が“女性陣のために化粧品輸入しろ”って大暴れして………」
「ある人?」
「あの………いつもすごい長風呂して男性陣から文句言われてる強いお侍さん……」
「あっ……」
To be continued to next EXTRA STORY.....?
【登場人物】
▼何でも屋(IMIC)
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
[バリス・スピア]
元軍医で、毒の能力を持つ医者。
薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。
▼水王家
[水王 千里華]
深い青色のショートカットの少女。元名家の水王家の忍び。
戦星の荒野で襲われているところをプラズマ達に助けられた。
水王家軍団長のルルカは実の姉。
[水王 涙流華]
深い青色のポニーテールをした水王家軍団長を務める女サムライ。
非常に戦闘力が高く、冷静沈着。チリカの姉。
[水王 木勝]
水王家十代目当主で、ルルカ、チリカの父親。
▼その他
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
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~水王家・墓地~
「正統後継者となってここの存在を知り、初めて足を踏み入れたときのことを思い出しますよ、父上。」
――九代目異端之墓・行不地――
「異端後継者でありながら、貴方は大元帥までに上り詰めた。」
「父上、私は貴方のように水王家を強くできるのだろうか……」
そう呟く侍はその左隣に立つ墓石に顔を向けた。
――九代目正統之墓・衛菜――
「衛菜様、【銀河】の称号を得た貴女なら……水王家を愛した貴女なら今の状況を簡単に覆すのでしょうね……」
そして2つ右に立つ墓石の前に移動すると、その侍は胡坐をかいてその場に座った。
「やはり私には荷が重かったのかもしれぬ。」
「双子は先に生まれた方が実は下の子、という説があるそうだ。実はお前が姉だったのかもしれぬな。」
「馬鹿妹はどこかに行くし、私でこの水王家を守れるだろうか。」
「いや、守らねばなるまいな。お前の……私の娘がいるのだから。」
「なぁ、咲……」
――十代目異端之墓・咲――
そこから墓石一つ分右に立つ墓石。
彼は悲愴に満ちた眼差しで、墓石に刻まれた名を見ている。
――十一代目正統之墓・厘華――
「厘華、お前の分まで涙流華と千里華が一生懸命、水王家の十一代目を背負おうとしてくれているよ。」
「涙流華がここを見たら、なんと言うだろうな。」
「受け入れてくれるだろうか。」
「いや、涙流華はそんな肩書などに興味はないか。」
「ここで私が倒れる訳にはいかん。十代目正統後継者として娘達に教えてやらねばならんことがある。」
「いつか私も正統後継者として歴代の水王家と並び、ここに入るのだ。」
「娘達にとって誇り高き父であれるよう、再度風を起こし、水王家は変わらねば。」
「それに……水王家の歴史で大きな功績を残すのはいつも異端後継者だからな。」
「きっと………」
~水王家・道場~
「姉上、すみませんでした……迷惑をかけて……」
稽古を終え、涙流華に打ちのめされた千里華が足を崩して座っていた。
「鍛錬が足らんのだ。それにその迷惑とは今処置をしていることか?それとも如月に捕まったことか?」
そう言いつける厳しい姉は、ペタッと床に座る妹の腕に冷却剤を貼り付けると、剝がれないように患部に押し付けた。
「イテテっ……」
「そんなことでは将来、軍団長を任せることはできんぞ。」
涙流華は立ち上がると千里に背を向ける。
「私が当主になったとき、お前には軍団長の座についてもらわねばならん。」
「軍団長……?私が……?」
「当たり前だろう。私達2人は水王家の十一代目だ。」
「でも私は異端後継者だし……」
正統後継者と異端後継者。
水王家では2人の子供を授かることが慣習とされ、先に生まれた者が水王家の“正統後継者”となり、後から生まれた者は“異端後継者”として兄姉の影に生きる存在だった。
異端後継者が周囲に認められることはおろか、責任ある役職に就くことなど極めて稀だった。
正統後継者が死亡した場合のみ、異端後継者が繰り上がって正統後継者となることもあったが、殆どの異端者が陽のあたらない存在として生きてきたことには変わりなかった。
「正統も異端も関係ない。それに父上もそんな慣習は良く思っていない。だからこそお前を忍び長にしようとしておられたのだ。」
――忍びはどうだ――
千里は父の言葉を思い出していた。
涙流華は木刀を木刀掛けに戻すと、千里を背に道場を後にしようとする。
「姉上、なぜ突然私に稽古を……?」
涙流華は歩みを止め、振り向くことなく答えた。
「おそらく……水王家の誰かがあの者達と共に旅に出る。」
「旅に……?」
「以前父上が奴らと共に行く条件を聞いていた。」
「流石に当主である父上が行くとは考えづらい。年齢差もある。」
「あの電撃の馬鹿が千里華を推していた。奴らとお前は同い年らしい。」
「プラズマが……?」
「千里華とはしばらく会えなくなるかもしれぬからな。最後に叩きのめしてやっただけだ。」
「姉上……」
涙流華は振り返って神前に礼をすると、静かに道場を後にした。
~水王家客間~
コンコンッ
「失礼します。お二方とも起きて下さい。食事の準備ができました。」
ザァッ
「グーーーーーーー、ガーーーーーーー」
「…………心を鬼にするのよ、八千代……!」
~大広間~
プラズマ達が大広間に入ると、色とりどりの御膳の前に強面の侍達が座していた。
しかし中央奥にいるはずの当主がいない。
「プラズマ、バリス、こっちこっち。」
千里華がひょいひょいと手招きして、彼女の隣に座るよう促した。
「あれ、お殿様は?」
プラズマの問いに答えたのは、千里華を挟んで上座に座っている涙流華だった。
「殿は如月家の残党の処遇について重鎮と検討中だ。」
「お前は?軍団長なんだろ?」
「軍団長は侍をまとめるだけの役割だ。うちの侍の処遇を決める立場にあっても、他家の処遇を決める立場はない。」
プラズマよりもさらに下座にいるバリスが顔をのぞかせた。
「キサラギ家の者たちはどうなる?」
「謀反を起こしたのだ。打ち首になるだろうな。」
千里華は姉の話の邪魔にならないように、あたふたしながら前に後ろに身体を動かしている。
「父上は分からんが、重鎮達は打ち首だと言うだろう。」
「流石の父上も、重鎮達を押さえて意見を通す権力はない。」
「謀反を起こしたのだから仕方のないことだ。我々にはどうすることもできん。」
「そうか………」
プラズマは如月鉄の最後の表情を思い出していた。
「もう話はいいだろう。前を向け。皆お前待ちだ。」
涙流華にそう言われ辺りを見回すと、侍達が“腹減った”と殺気に満ちた雰囲気を漂わせていた。
「強面の皆さん……お待たせしました……いただきますか……」
To be continued.....
【EXTRA STORY】
~水王家・地下備品貯蔵庫~
「ごめんね、プラズマ、バリス。手伝ってもらっちゃって。」
「いや、いいって!俺たち泊めてもらってる恩もあるしな!」
「そういう千里華様こそありがとうございます………この八千代、そのお心遣いに感激しております……!」
「八千代は本当に大袈裟なんだから!むしろいっつもは全部給仕係に任せてごめんね?」
「いえ、それが我々の仕事ですから。忍びである千里華様にお手伝いいただく方が申し訳ありません!!」
「……にしても、武器やら食糧以外にも、案外化粧品とかも多く輸入してんだな。」
「しかも新製品って謳い文句の物ばかり。」
「なんか武家っていうと、そういう肌の手入れとか気にしてないと思ってたぜ。」
「数年前までは“そんな浮ついた物!”って重鎮達から禁止されてたんだけど、あるきっかけがあって輸入が許可されることになったの。」
「あるきっかけ?」
「ある人が“女性陣のために化粧品輸入しろ”って大暴れして………」
「ある人?」
「あの………いつもすごい長風呂して男性陣から文句言われてる強いお侍さん……」
「あっ……」
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