My² Gene❇︎マイジーン ~URAZMARY~

泥色の卵

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第4章 百獣の王の星 [森星]

第6話 鉄蜘蛛の巣

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【登場人物】


 ▼何でも屋

 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]
 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
 遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。

 [バリス・スピア]
 元軍医で、毒の能力を持つ医者。
 薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
 どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。

 [水王スオウ 涙流華ルルカ
 元名家・水王スオウ家の侍で、水の遺伝子能力者。
 プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。

 [ラルト・ローズ]
 白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。
 口が悪く、目つきももれなく悪い炎の遺伝子能力者。
 政府軍内の裏切りにより、軍を退官してプラズマ達と旅に出ることを決心する。


 ▼森星しんせい
 [ドルニク・バリスタ]
 森星の王。黄金のたてがみを生やしている上裸の大男。

 [ザルダム・バリスタ]
 ドルニク・バリスタの父で、宇宙船の代わりとなる宇宙亀を販売している。
 元政府直轄治安維持機関の一員。

 [ジョン・ロレンツ]
 森星王しんせいおう選挙で現星王のバリスタと争った政治家。
 今は反星王派に属している。


 ▼Mastersマスターズ
 [Master MOONLIGHT]
 本名はロイ・カレセフューレ。
 元大元帥で、現Mastersの一人。
 実業家としても成功を収めており人望もある。
 森星での人攫い調査のため派遣された。

 [Master THUNDER FLAME]
 本名はガウディオ・ジア。
 元四帝で、現Mastersの一人。
 ジア家の長男で、アリス、メルツィア達の兄。
 森星での人攫い調査のため派遣された。

 ▼その他

 [セリナ]
 プラズマの幼馴染の女の子。
 勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。

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【お知らせ】
 ちなみに今他サイトで第2部やってます。

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 星王が足を踏み入れた瞬間にトランシーバーホログラムが鳴った。
『撃て!』

 命令から約1秒後、星王の左わき腹を銃弾がかすめ、銃弾が背後の地面に撃ち込まれた。

「外した!」

 すると星王はすぐ様弾道からスナイパーの位置を割り出し、その動線に光り輝く極小の光弾こうだんを放つ。

 極小の光弾は途轍もないスピードで山の方へ飛んでいくと、ほどなくして大爆発を引き起こした。

「そんな……!」
 狙撃手は確実に助からない。そのレベルの爆発だった。プラズマはその様子を目の当たりにして言葉を失っている。

「誰かは知らんが、ワシを狙撃して殺し損ねるとは、まだまだよな」
 すると、一発の銃声と共に星王の右わき腹を銃弾がかすめた。

「なにっ!?」
 驚きつつも星王はまた居場所を割り出し、大爆発をもってスナイパーを攻撃した。

 しかしその直後に続けて4発の銃声が響くと、星王の左肩、右肩、左太腿ふともも、右太腿ふとももを順に銃弾がかすめる。

「4発全てが違う場所からだと……?」

 星王は戸惑いながらも4か所全てを爆発させる。
 
 しかし…


 パァン


 表皮のみが切れた左頬から血が滴り落ちる。
 そして次は右の頬だった。


「一体何人のスナイパーを配置しているのだ……!しかもあえて掠らせることができるほどの腕前……!」
 銃に関しては全くの素人だった涙流華でも、その腕前の凄さは分かるほどだった。

 涙流華とは対照的に、プラズマはその技術の高さに気づいていなかった。
「なんだよ、全部外してんじゃんか!」

 その言葉にバリスが反応する。
「いや、あれはわざとだ」

「わざと?」

 カレセフューレは“はぁ”とため息をついた。
「全く、本当に言うことを聞きませんね。あの狙撃手スナイパーは」


「複数人による高度の狙撃技術……もしかして天才狙撃手って戦争中に名を馳せたスナイパー集団か……?」
 ラルトが言うように、複数個所からの正確な狙撃は戦争中に名を轟かせたスナイパー集団が得意とする狙撃技術だった。

「戦争後は投獄されてたはずじゃ……?」

 ラルトの問いにガウディオが答える。
「投獄されているが、狙撃の腕を買われて政府軍と刑務官帯同で、よく任務に駆り出されているんだ。逃げられたり攻撃されないように細工をしてな」

 ガウディオの言う通り、政府軍では必要であれば厳重な監視体制のもと囚人を運用することもあった。
 このスナイパーもその一例だった。

「だが、どうやら星王で遊んでいるようだ」

 カレセフューレ達はこのスナイパー集団に星王をここで行動不能にすることを期待していた。
 さすがにMastersの指揮下でも射殺するのはまずいため、急所以外を撃ち抜き行動不能にすることを求めていた。そのためスナイパーはゴム弾を使用していたのだ。

 しかしスナイパーは自分達の仲間がやられていると言うのにそれでも星王の体を順々に掠らせていった。
 まるで射撃ゲームを楽しむかのように、一向に体には直撃させない。

「これ以上進むと、跳弾で森を出て人家に当たる可能性も出てきます」
 ガウディオがホログラムを示しながらカレセフューレに報告している。

「スナイパーによる狙撃はここまでか……政府軍に金を出して借りたというのに全く仕事をしなかったな」

 カレセフューレは “所詮は囚人か”と呟くと、椅子から立ち上がった。

「さて、ではIMICの諸君。頼んだよ。私は拠点に戻る」

「どうする? プラズマ」
 バリスがプラズマに問うと、ラルトもプラズマに目を向け、涙流華も薄目でプラズマを見た。軍経験のあるバリスやラルト、軍団長を務めていた涙流華が指揮を執った方が勝率は確実に上がるだろう。
 しかしそれでも彼らはプラズマに指揮を委ねた。
「俺とルルカがとりあえず星王にぶつかるから、お前らは適当にサポートしてくれ!」

 3人は頷いた。

「行くぜルルカ!!」
 プラズマがそう答えると星王の元へ向かって走り出した。

「指図するな馬鹿電気!」
 そう言いながら涙流華は左手を左腰の刀に当ててプラズマを追いかける。

「即決だったな」
 ラルトの言葉にバリスは薄ら笑いを浮かべた。
「“センス”…なんだろうな」

「あの星王の能力は爆発。遠距離を主とする俺たちとは相性が悪い。けど近接主体でスピードのあるあいつらなら接近戦に持ち込める」

「あっちはあいつらに任せるとして……」
 バリスは鋭い目つきでプラズマ達と反対の方向へと歩き始めた。
「俺達は“サポート”か?」

「あぁ。あいつの言うサポートとは違うけどな」
 ラルトは近くの壁にかけていたジャケットを手に取り羽織ると、バリスに並んだ。




 反星王拠点のある郊外に程近いジャングルの端。100メートルもすれば森の出口…郊外に続く荒野へと出る。

「星王!! 待ってくれ!」
 ジャングルを抜けていく星王にプラズマが荒野側から声をかけ近づいていく。

「なんだお前らは?」
 目の前から走って近づいて来る金髪の青年と、女性のサムライに星王は警戒心を強めた。

「俺は何でも屋のプラズマで、こっちがルルカだ!」
 警戒心と殺気を放つ星王をものともせず、プラズマが呑気に自己紹介を始めた。

「何でも屋だぁ?」

 喧嘩腰で聞き直す星王に涙流華が応えた。
「我々はIMIC惑星間遊撃捜査隊だ」
 
「イミック……四帝の直轄機関か。四帝まで動いているとは暇なことだ」
 プラズマ達の話を聞き入れる様子はなく、星王は手の平から光を発して光弾を放とうとしている。
「ちょっと待てって! 俺達は反星王勢力への爆撃をやめてほしいだけなんだって!!」

「なぜお前らにそんなことを言われなければならない? お前達他星民だろう?」

「そんなの自星民だろうが他星民だろうが止めるだろ!」

 声を荒げるプラズマに星王は光弾を放つ。

「ルルカ!」
 プラズマの掛け声とともに、並んで立っていたプラズマと涙流華はそれぞれ横に飛んだ。躱した光の弾は背後の木にぶつかると小さな爆発を起こした。

「退け。退かなければ次はお前達がああなるぞ。今のは警告だ」

 涙流華は星王に対し不敵に笑った。
「お前が私達に当てることができたらな」

「言っても聞く相手じゃねぇ! いくぞルルカ!」
「ついてきてみせろ! プラズマ!」

 涙流華は新調した刀を抜くと、切っ先を星王に向けた。
水王すおう一式・水牢すいろう!」
 刀の切っ先から直径1メートル程の水の球が放たれると一直線に星王へと向かう。

 星王は迎撃するように光弾を放った。
 しかし涙流華の発した水球は光弾と衝突することなく高度を上げていく。
「ルルカ! 相手の弾来てるってこっち!」
「避ければいいだろう!」

 涙流華に言われるがままプラズマは横っ飛びして再度光弾を避ける。

 そして水球は星王の頭上へと上がるとそこで制止した。
「水王三式・滝垂りゅうすい!」

 涙流華が刀を両手で天に掲げると、水の球から水が流れ落ちた。
 勢いは緩やかで、まるで水の柱の上に水球がついているかのようだった。
「なんだこれは? シャワーでも浴びせてくれてるのか?」
 星王は不意を突かれはしたものの、ダメージ性のない攻撃を受け、濡れた髪をかき上げながら嘲笑している。 

 涙流華はプラズマに声をかける。

「あれだけ大きければいいだろう、プラズマ」

「分かってるっつうの!」

 プラズマは水の球に向かって電撃を放つ。電撃は水の球を伝って星王を感電させた。電光が星王を包む。

「息の根を止めたか?」
「物騒なこと言うなよ! ちょっと感電させるくらいに決まってんだろ!?」
 涙流華の物騒な言葉にプラズマが反応した。

 星王の体から蒸気が立ちこめる。

「なるほど……いかにも頭の悪そうな奴らだと思ったが、そういうこともできるのか」
 星王は気絶することなく、ゆっくりとプラズマ達の方に歩いていく。

「あくまで儂を戦闘不能にさせようというわけか。そっちの坊主はな」
 星王は首をコキコキと鳴らすと、プラズマに目を向けた。
「そっちのサムライはそうじゃないようだが」


「ルルカ、息の根止めるくらいが丁度いいかもな」
「最初からそのつもりで撃っていれば、気絶させることができていたかもしれんのに」
 涙流華はプラズマに近づくと、“それみたことか”と右足で彼を軽く蹴った。

「っんとにルルカはうっせぇなあ」
 プラズマは左拳で涙流華の右肩を軽く押し返す。

「まぁいいや。いくぜルルカ。俺速いからしっかりついてこいよ」

「お前こそ遅れを取るなよ」


To be continued.....





【EXTRA STORY】

~数日前・森星~


「これが医星から仕入れた物ですか? 貴方の配下が政府軍によって指名手配されたそうですが、足はつかないでしょうね?」

「知ったことか。お前は黙ってサンダー・パーマー=ウラズマリーを捕らえればいい。その前払いとしてこれを用意したんだ」

「捕らえると言っても、そのウラズマリーとかいうのが来るかどうかもわかっていないのでしょう?」

「あらゆる準備をしておくに越したことはない」

「奴らは宇宙亀を買いに行くはずだ。今は央星にいる。その次はここだ」

「奴らそこそこには手強いようだ。それでどうやって捕らえるつもりだ? 適当な計画ならこれは渡さない。客は他にもいるからな」

「この月は星王パレードがあります。そこで声を掛け反星王側につけます」

「バリスタ星王と奴らをぶつけるつもりか?」

「えぇ。バリスタ星王は必ず殺さずに捕らえます」

「なるほど。まぁいいだろう」

「それで、なぜそのウラズマリーという青年が必要なのですか?」

「お前は知らなくていいことだ」


 To be continued to next EXTRA STORY.....?
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